オダギリジョーが脚本・監督・編集・出演を務める『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』が、全国上映中。本作は2021年に「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」シーズン1、2022年にはシーズン2と、ドラマとしてスタートしたシリーズ。「東京ドラマアウォード2022」では単発ドラマ部門作品賞グランプリを受賞するなど、高い評価を受けており、映画版の製作という吉報は多くのファンを歓喜させた。
酒と煙草と女好きという、欲望にまみれた警察犬・オリバー(オダギリジョー)の奇抜な設定やチャーミングな登場人物たち、一筋縄ではいかない事件など、様々な要素が絡み合い見る者の心をくすぐる。映画版では、開けてはいけないドアの先に見たこともない不思議な世界が広がっているという、ダークファンタジー感たっぷりの物語が展開される。
オリバー好きにはもちろん、オリバー初見組にも楽しめる作りとなっている映画版について、オダギリ監督にこだわり&キャストのポイントなど、単独インタビューした。

『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』では、ドラマで活躍したスーパーボランティアのコニシさん(佐藤浩市)&フリーランスの記者・溝口(永瀬正敏)が特に目立っていました。脚本は、どのような経緯で執筆されていったんですか?
オダギリ:「オリバーな犬」は簡単に言うと、オリバーとハンドラーの青葉一平(池松壮亮)が事件を解決していく話になるので、まずはどんな事件が良いかを考えるんですね。その事件の対象は、新しい登場人物がいいのか、もしくは今までの愛着があるキャラクターのほうがいいのか、いろいろなパターンを考えていく中で、コニシさんが行方不明になり、そこに溝口が関わっていく…というイメージが膨らんでいきました。
コニシさんと溝口が適任と言いますか、引っ掻き回してくれるんじゃないかという?
オダギリ:今回、実は脚本を2パターン書いたんです。1パターン目をAとすると、Aは4時間ぐらいの大作になっちゃって。結局お金がかかりすぎるから、そっちはやめとこうか、と諦めたんです。それで、今の形の脚本(B)を書くことになったんです。

気になるAバージョンでは、現行の内容をもっと濃く広げていった形でしたか?まったく違うものでしたか?
オダギリ:まったく違うものでした。(B)に比べると真っ直ぐな、わかりやすい“エンタメ映画”にしていました。簡単に言うと、テレビシリーズに近い方程式のもので。一つの事件をみんなでいろいろ手分けして、ヒントを集めて解決していく…というような話でした。ただ、その分かりやすく、観やすい、どこにでもある『劇場版!』みたいな作風に、自分自身が飽きちゃったんですね。このまま作っても、なんか無難なものになりそうな気がしたんです。自分の本当に作りたいのはこういう作品じゃないんじゃないか、自分のフィルモグラフィーにそうした作品が残っても良いのか?と思うと、やっぱり許せなかったんですよね。安いプライドなのかも知れませんが…。
要は、テレビドラマと映画は全く違う競技なのに、同じ戦い方をするのは大きな間違いなんです。テレビにはテレビの面白さがあり、映画には映画の美学があるんです。挑戦の仕方もそれぞれ違うんです。それを踏まえず、テレビの延長として映画を作っても良いものができるはずがありません。その結果、新たに(B)を書くことにし、今作になりました。内容は真逆…と言うとあれですけど(笑)。
前衛的と言いますか、映画ファンやFilmarksユーザーが実に好きそうな系統という印象を持ちました。
オダギリ:そうですか、それはよかった。映画でできる体験として、やはり重要なのは劇場で観ることなんですよね。外の音が完全に遮断され、大きなスクリーンで作品の世界にどっぷり浸れるじゃないですか。現実を忘れることのできる時間です。やっぱりテレビとはまったく違うものなので、そこははっきりと差別化しておいたほうが良いと思ったんです。逆に言うと、この映画は、テレビとか配信で観ないほうがいいですよ。編集も、音響も、全て劇場で観てもらうために設定してあるので、劇場で観る価値を突き詰めた作品だと思っています。

映画版でも様々な登場人物が楽しませてくれます。それぞれの演出などは、どのようにされていたんですか?
オダギリ:まず、自分が俳優なので、同業者である俳優の良し悪しがわかるじゃないですか。もちろん悪しの方には、そもそも声を掛けないですけど。
良しの方のみ、という。
オダギリ:そうですね。良しの中でも、本当に自分が信頼できて、尊敬できる俳優にしかお声掛けはしないようにしています。やはり自分の大切な作品ですし、キャスティングからその作品のセンスが感じられるものじゃないですか。
オダギリさんがご一緒したいと思う俳優に共通していることは、言葉にするならどのようなことですか?
オダギリ:難しいですね……いろいろなポイントがありますから。例えば、野球選手だとしても、良さはいろいろとあるじゃないですか。ただ、タイミング的に今はうちのチームには必要ない、とかもありますもんね。一言では「こういう俳優」と言い表せないところがあって。ひとつ言えるとすれば、自分が結構こだわりが強いタイプなので、こだわりを感じられないタイプの俳優は好きではないですね。何でも事務所の言いなり、みたいな俳優は、結局その姿勢が芝居にも出ますから…、ちょっとうちのチームには必要ないかもですね。
老いも若きも関係なく、その方の臨む姿勢ということですよね。
オダギリ:そうですね。その人が俳優の道に何を求めているか…とか、何を目標にしているのか、みたいな価値観や美学なんかも気になりますね。
おそらく、Filmarksの会員さんだったら、大体俳優の良し悪しもわかるんじゃないですか(笑)? 読んでいただいてる方々には「このキャスティングだったら間違いないな」と思ってくれていると信じています。

本作において、預けた以上に育っていったと思うキャラクター、思い入れのあるキャラクターはいますか?
オダギリ:皆さん、そうだとは思っています。最初の(ドラマシリーズ、シーズン1の)3つの話は撮影前に書いたものなので、当て書きではありますが、あくまで想像でしか書けないじゃないですか。撮っていく中でどんどん皆さんがキャラクターを生き物にしてくれたんです。それがあってのシーズン2だったので、皆さんが育ててくれたキャラクターをシーズン2の脚本に活かす事ができたと思っています。
思い入れのあるキャラクター。結局、全員自分が考えているので、全員好きなんですよね。一番最初に生まれたキャラクターは、実は麻生(久美子)さんのキャラクターだったんです。漆原冴子という人物設定を終えてから周りのキャラクターや関係性などを広げていきました。麻生さんからも「前髪を切ったんだけど、どう?」とメッセージをいただいたことで、「漆原は前髪を切りたくてしょうがない」というような性格を加えたり。麻生さんとのコラボレーションで、いいキャラクターが生まれたと思っています。そういう意味では一番思い入れがあるかもしれません。
今回演出されていて、特に楽しかったシーンはありましたか?
オダギリ:何かイベント的な撮影の日は、やはりみんなワクワクした空気感がありますね。例えばダンスシーンは、俳優からすると数ヶ月のダンスレッスンを経ての晴れの日だし、撮影的にもカットが細かいので絵コンテを作り進めていきます。ひとつひとつオッケーが出る度に拍手が起きたり(笑)。スタッフもニコニコと楽しんでいる雰囲気ではあります。ただ、そのダンスシーンもじっくりと撮影できる訳ではなく、1日半ほどで撮り切らなければならないので、正直バタバタなんです。カット割りは本当に成立しているのか? 絵コンテ通り、取りこぼしや忘れているものなどはないか? など、自分の気持ち的には正直楽しんでいる余裕はないんですよね…。ただ、キャストもスタッフも楽しそうにしている姿はとても癒されます。
楽しんでばかりもいられないんですね。
オダギリ:そうですね。コメディだから現場では和気あいあいと楽しく撮影しているように思われるかも知れませんが、笑いを作るのって実は難しくて、ちょっと間がずれたりすると、それだけで笑えなくなってしまうんです。そのあたりのテンポ、間も現場でかなり詰めてはいきます。想像以上にシビアで緊張感があると思いますよ。
自分の間の悪さで、そのシーンが笑えなくなると最悪じゃないですか。俳優は、演じながら「今、ちょっと成立してないな…」とか、繊細に感じているんです。だから僕が「もう1回いきますね」と言っても、「そりゃそうだよな」と納得してくれるというか。自分だけが厳しくジャッジしているわけではなく、あのレベルの人たちはわかってやってくれているので助かります。

「オリバー」には様々な魅力がありますが、映画版にもなり、どこがこれほどまでに皆さんから愛される、熱狂される要因とオダギリ監督は分析しますか?
オダギリ:どうなんでしょうね。あまり「熱狂的に愛されてるな」とは実感しませんが(笑)。それでも一定数きっと好んでくれている人はいて。それはおそらく自分と似たような、現状の邦画や洋画に満足できていない人たちなのかなとは思っています。僕は映画をエンタメとは捉えていません。アートであり、ファッションや音楽やカルチャー全体で作る総合芸術だと思っています。そこに共鳴してくれる方々には、刺さりやすいんだとは思います。むしろ映画をストーリーでしか観ない人たちには全然刺さらないでしょうね(笑)。たぶん、携帯で倍速で観ちゃう僕の親戚には刺さらないでしょう(笑)。
初めて聞く言葉でした(笑)。ちなみに、ドラマを観ていない方でも楽しめるような作りになっていると感じましたが、そのあたりも意識されて作りましたか?
オダギリ:そうであってほしいと思いながら作りました。特に海外の人たちは絶対にテレビシリーズを見ていないだろうから、そういう人たちにどう届くかということを考えました。映画は世界に届くものなので、観客は日本人だけではないと思っています。

ありがとうございました。最後に、最近見た映画で印象的だった作品を教えてください。
オダギリ:何か月か前に観た作品になるんですけど、『ドライブ・イン・マンハッタン』という映画は印象的でした。ショーン・ペンがタクシーの運転手なんですが、空港からニューヨークの自宅まで帰ろうとしているダコタ・ジョンソンとの、ほぼ2人芝居で見せる90分なんです。タクシーの中の会話だけで見せるのは、俳優としても力が試されるし、監督としても飽きさせない画作りをかなり考えないといけない、なかなか挑戦的な作品でした。俳優としても、監督としても、とてもいい刺激をいただきました。
(取材、文:赤山恭子、写真:iwa、スタイリスト:西村哲也、ヘアメイク:砂原由弥(UMiTOS))
『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』は、2025年9月26日(金)より全国公開中。
脚本・監督・編集・出演:オダギリジョー
出演:池松壮亮 麻生久美子 本田翼 岡山天音
黒木 華 鈴木慶一 嶋田久作 宇野祥平 香椎由宇
永瀬正敏
佐藤浩市
吉岡里帆 鹿賀丈史 森川 葵
髙嶋政宏 菊地姫奈 平井まさあき(男性ブランコ)
深津絵里
公式サイト:https://oliver-movie.jp/
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
Filmarks公式Instagramフォロワー限定 プレゼントキャンペーンを実施!

Instagram Filmarks公式アカウントのフォロワー限定で、指定の投稿へコメント&再投稿を行うと抽選で5名様に『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』映画オリジナルコインケースをプレゼント!
詳しい応募方法&注意事項はこちらをチェック。
(c) 2025「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」製作委員会
※2025年9月29日時点の情報です。

