9月26日から9月28日までの全国映画動員ランキングが発表。先週、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(公開中)の“V10”に待ったをかけ、初登場No.1を飾った『チェンソーマン レゼ篇』(公開中)が今週も首位をキープ。その詳細は後述するが、まずは先週の当記事で見落としてしまっていた重要な点を取り上げていきたい。
■邦画タイトル絶好調の一方、洋画は“閑散期”に突入?2週連続No.1の『チェンソーマン レゼ篇』はまもなく動員200万人に到達する / [c] 2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト [c]藤本タツキ/集英社
それは、先週のランキングの1位から10位までを日本映画が独占したということ。一瞬「またか」と思ったが、あらためて調べてみると2023年4月以来2年5か月ぶりと、意外にも久しぶりの事態(その前は2022年の10月最終週だった)。昨年の2024年は著しい“洋画不況”といわれていたが、それでもトップ10の圏内から洋画が一本もいなくなることは一度もなかったのである。
2025年は初頭からアニメも実写も比較的順調な成績を収め、『ウィキッド ふたりの魔女』や『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』、『リロ&スティッチ』、『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(公開中)などヒット作も連発。しかし夏の大作が落ち着き、そもそも少なかった秋シーズンの洋画作品が伸び悩んだこと、そして『鬼滅』や『国宝』(公開中)などの邦画作品の強さが際立ったことが主な要因として考えられる。
かわぐちかいじの大ヒット漫画を実写化した「沈黙の艦隊」シリーズ。Amazonスタジオが日本映画を手掛けたことでも話題に / [c]2025 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved. [c]かわぐちかいじ/講談社
結果的に今週もめぼしい洋画のビッグタイトルの公開がなく、新たにランクインした新作タイトルも『沈黙の艦隊 北極海大海戦』(公開中)と『俺ではない炎上』(公開中)の邦画2本のみで、2週連続で邦画独占が継続。次週末以降、レオナルド・ディカプリオ主演の『ワン・バトル・アフター・アナザー』(10月3日公開)や『トロン:アレス』(10月10日公開)、『死霊館 最後の儀式』(10月17日公開)とトップ10入りは堅そうな作品が待機しているものの、“洋画閑散期”は少々長く続くかもしれない。
さて、ランキングの作品に話を戻そう。『チェンソーマン』『鬼滅』に次ぐ3位に初登場を果たしたのは、大沢たかお主演の『沈黙の艦隊 北極海大海戦』。初日から3日間の成績は観客動員が19万5000人、興行収入は2億8200万円。この成績は、2年前の同じ時期に公開され最終興収13億7000万円を記録した前作『沈黙の艦隊』(23)との対比で71%ほど。
【写真を見る】ドラマシリーズが大反響を獲得!『沈黙の艦隊』が挑む、映画→ドラマ→映画の戦略は吉と出るか / [c]2025 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved. [c]かわぐちかいじ/講談社
前作のあと、映画版の未公開シーンやその後のストーリーを追加したドラマシリーズ「沈黙の艦隊 シーズン1 〜東京湾大海戦〜」が製作され今作に至るという、少々珍しい展開のしかたをしている「沈黙の艦隊」シリーズ。同様のケースでは、映画から始まりテレビドラマを経て映画3作が作られた「海猿」シリーズ、映画とドラマシリーズを経て来春に映画第2弾が控える「ゴールデンカムイ」シリーズが代表的なところだろう。
その「海猿」の映画第1作は興収17億4000万円とまずまずのヒットだったが、映画第2作でいっきに興収71億円へとジャンプアップし、その後も軒並み大ヒットを記録。「沈黙の艦隊」と「ゴールデンカムイ」がこの例に続けるかどうかがポイントとなるが、前者のドラマ版はPrime Videoでの配信、後者のドラマ版はWOWOWでの有料放送と、それぞれ形式が異なっている。「沈黙の艦隊」のドラマ版は配信時の視聴者数も反響も非常に大きかっただけに、今回の映画版の成績は、映画とドラマを往来する作品展開の重要な指標となることだろう。
■『チェンソーマン』『鬼滅』『8番出口』が引き続き絶好調!
2週連続で首位を飾った『チェンソーマン レゼ篇』の週末3日間の成績は、動員52万3000人、興収7億9970万円と、前週比65%の動員と64%の興収を記録。公開から10日間の累計成績では動員196万人&興収29億8000万円を突破しており、まだまだ数字を伸ばしていく可能性は非常に高い。
北米で2週連続Vの快挙を成し遂げた『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。ついに興収350億円の大台に / [c]吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
一方、公開11週目も2位をキープした『劇場版『鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、この週末3日間で動員27万1000人、興収4億4700万円を記録。動員&興収どちらも前週比69%と、そろそろ落ち着きはじめてきたようにも見えるが、それでも先週末から1週間で動員64万人&興収10億円を上乗せしており、累計成績は動員2426万人&興収350億円を突破。
9月25日の公開28日目に累計興収40億円に到達した『8番出口』(公開中)は、週末3日間で動員16万8000人、興収2億3600万円を記録して4位にランクイン。公開31日間の累計成績は動員301万人&興収42億円となり、着実に興収50億円の大台に近づきつつある。
公開17週目も5位!『国宝』が興収154億円に到達 / [c]吉田修一/朝日新聞出版 [c]2025映画「国宝」製作委員会
また、公開17週目を迎えてもなおトップ5圏内を守りつづけている『国宝』は、累計成績で動員1092万人&興収154億円に到達。引き続き平日の動員では上位作品に負けない安定感を見せているようで、前週末からの上乗せも動員では42万人、興収では5億円以上と衰え知らず。日本の実写映画歴代No.1に君臨する『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(03)との差は、あと20億円を切っている。
阿部寛主演『俺ではない炎上』は8位スタートに / [c]2025「俺ではない炎上」製作委員会 [c]浅倉秋成/双葉社
以下は、1〜10位までのランキング(9月26日〜9月28日)
1位『チェンソーマン レゼ篇』
2位『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
3位『沈黙の艦隊 北極海大海戦』
4位『8番出口』
5位『国宝』
6位『ブラック・ショーマン』
7位『映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!』
8位『俺ではない炎上』
9位『宝島』
10位『ひゃくえむ。』
今週末はレオナルド・ディカプリオとポール・トーマス・アンダーソン監督がタッグを組んだ『ワン・バトル・アフター・アナザー』、水上恒司と山下美月、Snow Manの宮舘涼太の共演で同名ミステリ小説を映画化した『火喰鳥を、喰う』(10月3日公開)、村上春樹の短編集をベースにしたNHKドラマの劇場版『アフター・ザ・クエイク』(10月3日公開)などが控えている。
文/久保田 和馬