9月30日、日本テレビ火曜プラチナイト枠で『217円の絵』が放送される。本作は、日本テレビが18年ぶりに開催した2023年度日テレシナリオライターコンテストの神谷克麻による大賞受賞作の映像化だ。NHKの創作テレビドラマ大賞、フジテレビのヤングシナリオ大賞、テレビ朝日のテレビ朝日新人シナリオ大賞の受賞作の映像化に続き、日テレ主催コンテストの映像化。この動きからは、各局が新人脚本家発掘に余念がないことが伝わってくる。

この動きの象徴といえるのが、生方美久の発掘だろう。2021年に『踊り場にて』(フジテレビ系)でヤングシナリオ大賞を受賞した生方は、審査員のひとりだったプロデューサー・村瀬健とともに、2022年『silent』(フジテレビ系)を制作。以降、彼女の作家性が存分に生かされた2作のオリジナルドラマが生み出された。優れた作家の発掘は、そのまま各局の企画力に直結する。生方の存在はその好例であり、各局がシナリオコンテストを開催する意欲に繋がったのではないかと予想できる。
生方美久が脚本を手がけた連続ドラマ『silent』(フジテレビ系)と『いちばんすきな花』(フジテレビ系)が、TVerで無料配信さ…
生方の活躍と軌を一にしたように、各局が新人脚本家の起用に積極的になっていった。2022年『ケの日のケケケ』(NHK総合)でNHK創作テレビドラマ大賞を受賞した森野マッシュは、よるドラ『VRおじさんの初恋』(NHK総合)や映画『この夏の星を見る』、『未成年〜未熟な俺たちは不器用に進行中〜』(読売テレビ)を執筆。『未成年〜未熟な俺たちは不器用に進行中〜』を森野とともに執筆した松下沙彩も、2023年に『スプリング!』(テレビ朝日系)でテレビ朝日新人シナリオ大賞を受賞した気鋭の脚本家だ。森野と松下が担当した作品は、原作ありの作品だったとはいえ、どの作品も一定の評価を受けており、新人ながら高い脚本技術力がうかがえる。
民放のゴールデンプライム帯でも、この傾向は強くなってきた。10月クールでは、TBS NEXT WRITERS CHALLENGE2023の大賞作である園村三の『フェイクマミー』(TBS系)や、日テレシナリオライターコンテストで審査員特別賞を受賞した松本優紀の『ぼくたちん家』(日本テレビ系)が放送予定だ。また、TBS NEXT WRITERS CHALLENGE2023で優秀賞を受賞した澤田航太は、夏クールの『初恋DOGs』のスピンオフドラマ『初恋アンダーDOGs ~負け犬と初恋~』(TBS系)を担当している。どれもオリジナルドラマだから、驚きだ。
TBSと日本テレビは、シナリオコンテストの受賞者を集めて、ライターズルームを運営しており、その中で脚本家とプロデューサーによる企画開発も行われているようだ。新人脚本家を育成をしてオリジナル企画を生み出すためだろう。新人脚本家からすればテレビ局側に育成してもらうことで技術の向上が見込め、テレビ局としてはオリジナル企画を生む金の卵を抱えることができる。各局ごとのライターズルームの運営は、脚本家とテレビ局の双方にメリットのあるシステムといえるだろう。秋クールにTBSと日本テレビでそれぞれ放送される『フェイクマミー』と『ぼくたちん家』を比較することで、それぞれのテレビ局がライターズルームを通してどのようなエンターテインメントを目指したのかが見えてくるかもしれない。

