松平定信の肖像(写真:星野パルフェ/PIXTA)

 NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役を務める、江戸時代中期に吉原で生まれ育った蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)。その波瀾万丈な生涯が描かれて話題になっている。第36回は「鸚鵡(おうむ)のけりは鴨(かも)」。蔦重の出した黄表紙の皮肉に気づいた松平定信は激怒し、絶版を言い渡すことに。朋誠堂喜三二が断筆を決断する中、恋川春町は幕府から呼び出されて……。『なにかと人間くさい徳川将軍』など江戸時代の歴代将軍を解説した著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

文学を嗜み絵画も学んでいた松平定信

『べらぼう』の前回放送では、井上祐貴演じる松平定信が号泣するラストシーンが話題となった。

 てっきり江戸のクリエーターたちを弾圧する敵役として描かれると思いきや、本人も黄表紙のファンで愛読者ゆえに、その揶揄の矛先が己の政策に向けられて葛藤する。そんな人間味あふれる定信像が描かれることになった。

 実際の定信も文学好きで愛読書『源氏物語』を7回も書き写したり、自身で風刺小説を書いたりしている(過去記事参照/大河ドラマ『べらぼう』黄表紙オタクぶりがSNSでも話題の松平定信、だが根はドラマよりも過激な男だった)。

 隠居後に作成された目録によると、蔵書の中で約12%を占めるのは和歌の本で、自らも和歌に秀でていた。

 文学を嗜んだだけではない。絵画を集めるのも好きで、12歳頃から狩野派の絵画を学び、さらに田安家の家臣・山本又三郎(源鸞卿)に付いて、中国清代の画家・沈南蘋(しん なんびん)の画法を学んだという。

 寛政5(1793)年には、相模・伊豆の沿岸を巡視するに当たり、画家の谷文晁(たに ぶんちょう)を同行させ、各地の風景を描かせている。タイトルは「公余探勝」(こうよたんしょう)で、定信がつけたものだ。

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