1階のビジネス書の売れ筋を並べた面陳列棚に1段いっぱいに並べて展示する(三省堂書店有楽町店)

1階のビジネス書の売れ筋を並べた面陳列棚に1段いっぱいに並べて展示する(三省堂書店有楽町店)

本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。

今回は、2〜3カ月に一度訪れている準定点観測書店の三省堂書店有楽町店だ。最近はビジネス書ランキングに動きが出ているという。1〜4月頃に刊行された本が長く上位を占めていたが、そこに取って代わる新刊が出てきた。そんな中、書店員が注目するのは、大手コンサルティングファームでディレクターとして活躍する著者が、若手コンサルタント向けに成長の道筋を示した本だった。

著者はデロイトトーマツのディレクター

その本は望月安迪『コンサルタント3年目までの必修ビジネススキル』(SBクリエイティブ)。副題には「キャリアを踏破するためのサバイバルマップ」とある。望月氏は大手コンサル、デロイトトーマツコンサルティングのディレクター。入社13年目で、若手コンサル向けの研修講師や人材開発にも携わる実力派だ。

そんな著者が、入社1〜3年目のスタッフランクのコンサルタントに向けて、「キャリアの山と格闘している君たちへアドバイスを、そしてエールを送ろう」という気持ちで書いたのが本書だ。

冒頭に折り込まれたフルカラーイラストの「コンサルティング キャリア登山MAP」を見れば、本書のアウトラインは一目瞭然だ。コンサルタントとして一本立ちするまでには7つの難所があることが示される。

第1の難所は思考の「密林」。「道なき道を自ら考え切り拓くこと」とあり、頭の使い方の基本や全体像の捉え方、仮説のつくり方などこの難所を乗り越えるノウハウや心構えを解説する。

第2の難所は、コンサルワークの「急流」。ここは作業に流されるか、自ら流れをつくるかの分かれ道だ。第3の難所はマインドセットの「洞窟」。正しい自己認識に基づくセルフコントロール術を説く。

ここまでが「己を固める」と題する第1部で、残り4つの難所は「力をつなげる」と題する第2部で解説していく。チームでどう成果を出していくかが後半のポイントとなる。

一本立ちの要件は「自己完結性」

第4の難所はチーム連携の「裂け目」。チームビルディングから下位メンバーがついたときの心構えまで、この難所を越えるノウハウが伝授される。第5の難所は上司連携の「峠」で、上司の力を取り込む術やフィードバックの受け止め方、昇格へ向けた目線合わせなどが解説される。

第6の難所はクライアントフェイシングの「断崖」。クライアントとの向き合い方を、ミーティングに臨む心構えからプレゼンテーションの要所、論理だけでなく相手の情理をも理解して寄り添う方法にまで踏み込んで示していく。

第7の難所は自己完結性の「高台(プラトー)」。シニアコンサルタントやマネジャーという職位に上がる要件は、ここで言う「自己完結性」につきるのだという。すなわち「コンサルティングワークにおける一連の業務を最初から最後まで、自分自身で完結させられる力」だ。

ここでは成熟度モデルが第1段階のアナリストからコンサルタント、シニアコンサルタントと職位ごとに示され、自己成長のチェックシートとして活用できる。

コンサルタントとして一本立ちしたい人にとっては、何を身につけるべきかを明確にしてくれるガイドマップになるだろう。コンサル以外の若手ビジネスパーソンにとっても、プロとして生きる基準を知り、自己成長につなげる手がかりとして使えそうだ。

「この店を含めて都心の店ではよく売れている。スキル系の本では久しぶりの強い売れ筋になりそう」と、ビジネス書を担当する春田真吾さんは期待する。

『会社四季報業界地図』が例年以上の売れゆき

それでは、先週のベスト5を見ていこう。

(1)科学的に証明された すごい習慣大百科堀田秀吾著(SBクリエイティブ)(2)会社四季報業界地図 2026年版東洋経済新報社編(東洋経済新報社)(3)本を読む人はうまくいく長倉顕太著(すばる舎)(4)移動する人はうまくいく長倉顕太著(すばる舎)(5)道をひらく松下幸之助著(PHP研究所)

(三省堂書店有楽町店、2025年9月15~21日)

1位は本欄7月の記事〈「すごい習慣」で仕事や人生を変える 科学的根拠に基づく小さなメソッドの大百科〉で紹介した習慣化テクニックの本。定番の業界研究ムックの最新版が2位に入った。8月下旬に最新版が発売され、毎年この時期には上位に来るが、「今年は例年より1割くらい売れゆきがいい」という。

3位と4位は編集者の長倉氏の「うまくいく」シリーズの2冊。3位の方は、6月の本欄の記事〈本を読む人はうまくいく 「移動」の次に見つけた人生を成功に導く法則〉で紹介しており、2024年から売れ続ける4位の『移動する人はうまくいく』ともども息の長い売れ筋になってきた。5位は経営の神様によるロングセラー。書店が入居する交通会館60周年を記念した同店限定のオリジナルカバーが付く。紹介した『コンサルタント3年目までの必修ビジネススキル』はランク外だった。

(水柿武志)

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