KizunaAIは9月20、21日、Zepp Shinjuku (TOKYO)にて音楽ライブ「KizunaAI Comeback Concert “Homecoming”」を開催する(チケットページ)。
バーチャルYouTuber(VTuber)業界の草分けである彼女は2025年2月、丸3年のスリープ状態(無期限活動休止)から復活して音楽アーティストとして活動を再開(ニュース記事)。その記念すべき大きな一歩として、2日間2公演のライブが実施されるわけだ。どんな心境でこのライブを迎えているのか。彼女にインタビューを敢行した。
「ただいま」「待っててくれてありがとう」
「これからもよろしくね」を伝えたい
──2025年2月26日に正式に活動が再開する運びとなりましたが、活動再開から数ヵ月、現在はどんな気持ちで活動をつづけていらっしゃいますか?
KizunaAI もっとたくさんの人とつながりたい! 目標はずっと変わりません。そのために今できる全力で活動しています。まだまだ理想とは程遠いですが、諦めずに常にアップデートしていきます!
──活動している現在、自身が憧れていたり参考にしているミュージシャンやシンガーはいますか?
KizunaAI ジャンルにとらわれずに幅広い音楽表現にチャレンジしたい気持ちがあるので、参考にしたり尊敬する方が多すぎて、特定のこのミュージシャンの方!というのが難しくて……。ただ活動再開後は海外でのフェスに出られている方々からは特に刺激をいただいてます!
──これまで多くのオリジナル楽曲を歌ってきたが、これまでの自身の楽曲で「最も歌いやすい曲」「歌うのが難しい曲」をあげるとするなら?
KizunaAI 一番歌いやすいのは「AIAIAI」ですかね。全力かわいい元気楽しい!で振り切れるのでどんなときでもいけちゃいます! 歌うのが難しいのは「ホワイトバランス」ですね。音域が広くて、2番の「何にでもなれるような 気がしているの ライクユーエンミー」の低音を歌うのは特に苦労します(笑)
──さまざまなライブイベントやフェスに出演していますが、思い出深いライブはありますか?
KizunaAI どのライブも思い出深いですが、2018年の「hello, world」は印象に残っています! 1stライブはやっぱり最初ってこともあってすっごく思い入れがあります。それと、やっぱりラストライブ(Kizuna AI The Last Live “hello, world 2022”)ですかね。たくさんのVTuberのみんながライブに駆けつけてくれて、たくさんのスタッフの方の協力のもと作られたステージなので。活動再開の時にも感じたことですが、いろんな人とのつながりを心の底から感じることのできた本当に大切なライブです。
ワンマンライブを除くと、2020年に出演させていただいたサマーソニックです! 初めてのリアルフェス! しかもサマソニ! オファーをいただいた時、それまでの音楽活動やわたしの存在が認められたようでとても嬉しかったと共に、国内外の名だたるアーティストが並ぶ中バーチャルは私だけ。完全にアウェイ!! 出番も最初の方だったので、楽しんでもらう自信はあったものの見に来てもらえるのかドキドキでした。
でもいざ始まると入場規制がかかるくらい見に来てくださって、私が呑まれそうなくらいその場にいる全員が全力で楽しんでくれているのを感じました。ステージだけでなくYouTubeさんからサマソニのアーティストインタビューもお任せいただけて、Alan WalkerさんやAIさんなど最高のアーティストの方々と直接お話しできた事も刺激になりました! 音楽で繋がっていける事を確信したし、音楽活動を始めてよかったって噛み締めた日です。
──ベースラインの揺れ動きが基調となったハウス・UKガラージ・リキッドファンクな3曲「ホワイトバランス」「かもね」「まざる」の3曲をリリースしました。オシャレながらも落ち着いたテイストになっている3曲ですが、アイさんのなかではどういったタイプの曲だと捉えていますか?
KizunaAI そうですね。活動休止前にリリースしてきたインターネットEDM的な音楽とはまた異なる、少し大人びたテイストで、オシャレな雰囲気が全面にでていると思うんですが、ポップさも大切にしているので気軽に親しみを持って聴いてもらえると嬉しいです!
──ロングトーンを使ったり、声を張り上げていくようなボーカルではなく、メロウながらも「言葉をひとつひとつ置いていく」ようなボーカルが印象的です。歌を収録する際に苦労した点などはありますか?
KizunaAI 歌声に乗せる感情表現のバランス感に苦労しました。あまり感情を露にしすぎるとトラックのダンサブルな印象を損なってしまうし、逆に平坦すぎると味気ない歌になってしまうので、ちょうどいい塩梅を探ることに試行錯誤を重ねました。
──復帰シングルとなった「かもね」もそうですが、刹那的で、曖昧な感覚を歌詞・言葉として表現しているのがとても印象的です。自身が作詞を一部手掛けたこの3曲のなかで、アイさんにとって好きな歌詞はありますか?教えていただけると嬉しいです。
KizunaAI やっぱり活動再開後 最初の「かもね」ですね。最後のフレーズ「季節をまたいで また会えたね」と「奇跡を待つよりずっと 嬉しいかもね」の部分が気に入っています。この活動再開と、みんなとの再会は奇跡を待つような受身の姿勢では実現できなかった。待っててくれたみなさんへの感謝と、活動再開を決意した私の決断をささやかに、だけど力強く祝福してくれているような一節になっていて心に残っています。「目覚めて」で始まるところも自分とリンクしていて、すごく大好きです!
──3年ぶりの活動再開になりましたが、活動休止してから再開の間にバーチャルシーンも大きく変化しました。アイさんのなかでVTuber~バーチャルタレントシーンのなかで印象深い出来事をあげるとすると、どんな出来事があがりますか?
KizunaAI 雑誌やCM、テレビ番組などへの露出が着実に増えている事です! 物にはよりますがそれに対して後向きな声も少ない。それだけバーチャルタレントシーンの認知が広がり、認められ盛り上がっているという事ですし、これはバーチャルな活動者、ファンや支えている方みんなで積み上げてきた成果だと思うので嬉しいです! 更に浸透して当たり前の世の中にしたいです!
──「KizunaAI Comeback Concert “Homecoming”」をZepp Shinjukuで9月20~21日に開催される予定です。久しぶりのワンマンライブになりますが、どのような気持ちで臨みますか?
KizunaAI 活動を再開してからもう本当にあっという間に半年が経っていて……。(活動再開から)これまでも何度かYouTubeやSNSの配信や、リアル会場でのライブ出演もあったけど、あらためて待っててくれた人たちに対して、私たちだけの空間で、直に向き合って「ただいま」「待っててくれてありがとう」「これからもよろしくね」の気持ちを伝えたいです。
私のことを待ってくれていたファンの方々はもちろん、新しく応援しはじめてくださった方々にも、できるだけ近くで、私の生の感情が伝わるといいなと思っています。会場で一体になるシーンをイメージしながら、演出も衣装も音楽も、場内展示も含めて一つ一つこだわって作っているので、ライブ全体でみんなとのつながりを感じ合えるライブにしたいと思っています!
──「VTuber」「バーチャルシンガー」といった存在が徐々に認知され、受け入れられている状況となっている。ご自身はここまでの活動を通してどのように捉えてますか?
KizunaAI シンプルにすっごく嬉しいです! 私が活動を始めたときと比べて「バーチャルな存在」がすっごく認知されていて、もうこれは1つの文化って言ってもいいんじゃないかって思ってます! 私もそんなみんなに負けたくないって気持ちはもちろんあるけど、みんなで盛り上げていけると嬉しいと思っているし、一緒に頑張りたいです!
──最後に、いまご自身にとって「音楽」「歌」はどういった存在になっているでしょう?
KizunaAI 私にとって音楽や歌は「言葉や言語の壁を超えて、つながれる大切な存在」です。言葉だけでは表しきれない思いも、届かない事も、音楽なら届くと信じています!だからこそ、これからも音楽を通じてたくさんの人とつながっていきたいし、そのためにも様々な音楽表現にもチャレンジしていきたいです。
(聞き手 by 草野虹)
●関連リンク
・KizunaAI Comeback Concert “Homecoming”公式サイト
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