
ビジネス書の名著・古典は多数存在するが、あなたは何冊読んだことがあるだろうか。本連載では、ビジネス書の目利きである荒木博行氏が、名著の「ツボ」を毎回イラストを交え紹介する。
今回は、「幸せの条件」を解き明かしたハーバード大学の画期的な研究をまとめた『グッド・ライフ』(ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ著、児島修訳、&books辰巳出版)を紹介する。80年超にわたる追跡調査で分かったシンプルな結論とは?
ハーバード大の研究で証明された「幸せの条件」

まずあなたの親しい友人の顔を思い出してほしい。あなたにとって大切な誰かだ。そして、次にその友人に直に連絡を取ったのはいつなのかを思い返してみよう。1カ月前? 1年前? それとも…? もしそのタイミングを思い出せないのなら、あなたの幸福度は静かに損なわれている可能性がある。
今回ご紹介する『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ著、児島修訳、&books辰巳出版)という本は、私たちがおろそかにしがちな「人間関係」の価値について考察を深めた本だ。
多くの人は「そんな本を読まなくても、人間関係が大事なのは自明だ」と思うに違いない。しかし、本書の価値は、その「当たり前」を科学的に徹底的に検証し、人生の最重要因子として提示している点にある。
著者であるロバート・ウォールディンガーとマーク・シュルツは、ハーバード大学で1938年から続く「ハーバード成人発達研究」の責任者である。この研究は、724名の若者の人生を追跡することから始まり、80年以上かけ、3世代にわたる彼ら・彼女らの健康状態、仕事、結婚生活、人間関係、そして幸福感を調べ続けてきた。