2025年9月16日13時29分
カナダで5日から開催されていた第50回トロント国際映画祭が14日に閉幕し、「ノマドランド」(2020年)でアカデミー賞作品賞と監督賞に輝いたクロエ・ジャオ監督の新作「ハムネット」が、最高賞となる観客賞に輝きました。
「ノマドランド」も5年前に同映画祭で観客賞に選ばれており、早くも来年のアカデミー賞の最有力候補に躍り出たことになります。
同作は、マギー・オファーレル氏の同名小説が原作で、ウィリアム・シェークスピアと妻アグネスの愛を軸にした作品です。俳優ポール・メスカルと女優ジェシー・バックリーを主演に迎え、11歳の息子を亡くした後に名作「ハムレット」が生まれるまでの夫婦の物語を新たな視点で再解釈しています。
次点はギレルモ・デル・トロ監督の「フランケンシュタイン」で、3番手にはライアン・ジョンソン監督の「ナイヴス・アウト」シリーズ最新作「ウェイク・アップ・デッドマン」が選ばれました。また、アンダーグラウンドやカルト映画を対象としたミッドナイト・マッドネス部門の観客賞には、マット・ジョンソン監督の「Nirvana the Band the Show the Movie」が選ばれ、谷垣健治監督の「The Furious」が3番目の次点に名を連ねています。
ギレルモ・デル・トロ監督(18年2月撮影)
谷垣健治監督(2020年1月撮影)
今年から新設された国際観客賞には韓国のパク・チャヌク監督の「ノー・アザー・チョイス(仕方ない)」が輝き、2023年10月にイスラエルで起きたハマスによるテロ攻撃を題材にした「ザ・ロード・ビトゥイーン・アス: ザ・アルティメット・レスキュー」がドキュメンタリー部門の観客賞を受賞しました。人質の救出にあたったイスラエル軍の将校に密着した同作は、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃に対する抗議活動が強まる中、映像の著作権問題や安全性の懸念を理由に上映を1度取りやめたものの、その後ユダヤ系団体などから上映再会を求める声が高まり、上映が再決定したことでも話題を呼びました。
審査員による投票ではなく、一般ファンが最高賞を選ぶトロント国際映画祭は、アカデミー賞を占う上でも重要視されており、昨年は観客賞の次点となった「ANORA アノーラ」が作品賞、監督賞などアカデミー賞5冠に輝いています。また、近年では「ノマドランド」をはじめ、「グリーンブック」(2018年)や「英国王のスピーチ」(2010年)なども観客賞を受賞したあとオスカーを手にしており、これから本格化する賞レースの行方が注目されます。
【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)
このコラムにはバックナンバーがあります。