世界初のフルCGアニメーションとして公開当時(1996年)度肝を抜かれた『トイ・ストーリー』が30周年を記念した吹替え版のリバイバルが1週間限定で上映中。
早速、グランドシネマサンシャイン池袋さんへ。
『トイ・ストーリー』(1996年/81分)
公開当時、本作を知ったのは日本テレビの深夜番組『11PM』の今野雄二氏の映画紹介コーナーでした。ゲームセンターでは3D格闘ゲーム『バーチャファイター』のポリゴン3Dキャラクターがまだまだぎこちなくカクカクしている中、ぬるぬる滑らかに動く本作の紹介映像に感嘆しました。
もちろん、30年も前の3DCG技術ですから、髪の毛の一本一本や肌の表現、人間の再現度は不十分で、リアルの一歩手前の「不気味の谷現象」に陥る技術段階です。
本作品の素晴らしいところは、未熟な技術力をきちんと理解し、当時の技術力で再現できる「おもちゃの世界」に焦点を当てた点です。もし無理に人間を主役にした制作が行われ、「不気味の谷」に陥っていたら、3DCGの発展ももっと遅れていたかもしれません。映画技術の歴史を語る上で、スティーブン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』(1993年)と本作は外すことができません。
本作の成功は革新的な技術のみならず、ジョン・ラセター監督の演出とアンドリュー・スタントンの脚本の良さも特記すべき点です。ウッディ、バズをはじめとするおもちゃたちの強さと弱さをあわせ持つ人間以上の人間臭さや、嫉妬や困難を乗り越えた上での友情の萌芽は、今観ても爽やかな感動を呼び起こします。
日本語吹き替えも、唐沢寿明氏をはじめ名古屋章氏、永井一郎氏、三ツ矢雄二氏、大塚周平氏、戸田恵子氏といった有名タレントやベテラン声優を起用しておりますが、特にバズ役の所ジョージ氏は出色です。
技術面のみならず、脚本、キャラクター、配役と映画の大事な要素すべてが非の打ち所がないですね。来年『トイ・ストーリー5』も公開が決定しておりますが、楽しみですね。