2025年9月12日

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鑑賞方法:映画館

真利子哲也監督、過去作については『ディストラクション・ベイビーズ(16)』『宮本から君へ(19)』についてのみ(配信にて)鑑賞済み。どちらもインパクトが強くて印象に残る作品ですが、ストレートに好みかと問われれば正直違うこともあり、今作も劇場鑑賞は少し悩みました。ですが、劇場で何度か観たトレーラーに過去作とはまた異なる印象に期待を寄せ、公開初日にTOHOシネマズシャンテにて鑑賞です。
ニューヨークに拠点を置いて生活をする日本人と台湾人の夫婦。幼い息子を抱えて決して楽ではありませんが、それでも協調性をもってお互いのキャリアを尊重し合い、日々を助け合って暮らしています。ところがある日、妻方の家業である日用品店に強盗が入ったことをきっかけに、徐々に危うい空気が流れ出して夫婦の歯車が狂い始めます。
まず本作、作品紹介におけるジャンルを確認すると多くに「ヒューマンサスペンス」とありますが、設定や雰囲気、或いは落としどころなどから見て「ノワール」と言う方がしっくりくると思います。いくつか起こる事件(or事故?)によって不安な状況が生まれ(それなりに)「ハラハラ(サスペンス)」要素はあります。そして、それらの件について刑事・ビクスビー(クリストファー・マン)による捜査(的)なことも行われますが、それらの設定や展開にあまりリアリティはなく、また「謎解き(ミステリー)」もメイン要素ではありません。その為(と言っては何ですが)、臭わせる事柄やバックグラウンドは中盤以降にようやく小出しに明かされるものの、語られることは空白だらけで意味するところは概ね鑑賞者の想像に委ねられることばかり。上映時間138分、、もっと絞り込めるような気がするのですが。。
と言うことで、このボンヤリとした作品について、ポイントとなるのはまず題名である「Dear Stranger」。そして、夫・賢治(西島秀俊)の研究テーマである「廃墟」。さらに妻・ジェーン(グイ・ルンメイ)が命を吹き込むペルソナとしての「人形」。
祖国ではない地で弱い立場でありつつも、明るい将来を見据えて前向きに生きようとしている二人。ところが本来はお互いの言語ではない「英語」でコミュニケーションし、本当の意味での「意思の疎通」は出来ていたのか?或いは、目を逸らしてきた暗部や隠し続けていた本心など、息子・カイ(エヴェレスト・タルデ)を大切に思えばこそ抑えていたものが、あることをきっかけにして一気に揺らぎ、そして崩れる「諸行無常」を画に描いたような人生。
と、一応私なりに解釈はしたものの、果たしてこれが自分好みの作品かと問われれば、やっぱり私には合わないかな。。ストーリーは「凡庸で退屈」だし、オチに起こることも想像通りの「クリシェ」であくびが止まらない。。せめてその内容に琴線に触れるような教示があればそれなりに見応えはあるのですが、廃墟については同じことを繰り返すだけで薄っぺらく(発表前から解り切っていたガヤに、涙浮かべながら反論するとかw)、また劇中劇も尺もあってか共感は得られず、メインキャラクターの「見た目のインパクト」が全てとしか感じない。
いくらノワールとは言ってもね。。今の政権のことを考えれば、例えニューヨークであってもストレンジャー達にとって更に生き辛い現状があると思われ、本作のようなアプローチはむしろネガティブイメージ(犯罪傾向等)も懸念したり。折角こういった背景を作品にまで昇華させるなら、せめてもう少しスパイスがあって欲しいかな。

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Dear Stranger ディア・ストレンジャー

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