■映画「ベートーヴェン捏造」が全国公開

 上高井郡小布施町出身の映画監督、関和亮(かずあき)(49)の新作映画「ベートーヴェン捏造(ねつぞう)」(松竹配給)が12日から全国公開される。「楽聖」と仰がれた作曲家ベートーベンの崇高なイメージは、実は彼の秘書による「捏造」だった―とのスキャンダルを物語の中心に据えて映画化した。3人組ロックバンド「Mrs. GREEN APPLE(ミセス・グリーン・アップル)」のメンバーで長野市出身の藤澤涼架(りょうか)(32)も出演。ベートーベンの音楽と最新技術による映像も楽しめる作品に仕上がっている。(丸山祥子)

 原作は、かげはら史帆(しほ)の歴史ノンフィクション「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」(河出文庫)。19世紀のウィーンで、バイオリニストのシンドラー(山田裕貴)が憧れの音楽家ベートーヴェン(古田新太)に出会い、秘書となる。音楽以外の実生活でのベートーヴェンは「下品でかんしゃく持ちの小汚いおじさん」だったとの設定。その死後、シンドラーは実像が世に出ることを恐れて伝記を書き上げ、「偉大なる天才音楽家」に仕立て上げる―。

■脚本はバカリズム、独特のテンポ感

 関監督とは「地獄の花園」(2021年)でもタッグを組んだ、バカリズムが脚本を担当した。原作について関は「サスペンス映画を見ているように引き込まれ、ドキドキしながら読んだ」。その情報量と熱量を基に、バカリズムがシーンを抽出した。

 ベートーベンは晩年は耳が聞こえず、筆談で周囲と会話していた。映画でも、無言で「会話帳」への書き込みを見せるシンドラーに、思ったことを口に出すベートーヴェン、と独特のテンポ感によるバカリズムならではの会話の面白さが引き出されている。

 前半のヤマ場となるのは、交響曲第9番の初演場面。ベートーベンの衣装の色など文献を元に当時の様子を再現した。関はPerfume(パフューム)や星野源などのミュージックビデオを手がけ、音楽と親和性の高い映像制作に定評がある。「皆が知っている偉大な『第九』の合唱の部分を描けるということは、音楽の映像をやってきた人間としてプレッシャーでもあったが、すごく楽しく撮らせてもらった」。ぜひ劇場の大音響で見てほしい―と話す。

■ヨーロッパ人をどう演じる?

 19世紀のウィーンを映像で再現するため、横幅約27メートルのLEDディスプレーに当時の町並みの3DCGを表示し、その前で俳優が演技するという最先端技術を駆使した。関は「日本人キャストがヨーロッパの人々を演じるにあたり、例えば全員金髪にするなどのやり過ぎたヘアメークではなく、本人の地毛や髪の色を生かした扮装(ふんそう)にすることを意識した」と話す。

 映画のクライマックスでは伝記をめぐって真実を追究するジャーナリストのセイヤー(染谷将太)とシンドラーが対峙(たいじ)する。才能を持った人が自分を凌駕(りょうが)する天才に会ったときにどうなるのか、がシンドラーの大きなテーマとなっている。激情を内に秘めたかのように突き進む、その姿を山田が熱演。関は「山田さんは役作りの勤勉さと柔軟さを持ち合わせていて、互いにアイデアを出し合いながら撮影できた」と話す。

 「ベートーヴェンと、だんだんと狂気を帯びていくシンドラーのドラマ、それを取り巻く人々のおかしみのようなものに注目してみてほしい」

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■藤澤や監督ら、楽屋で歌った「信濃の国」

 劇中では、当時の芸術家が会するパーティーの場面も描かれ、ミセスの藤澤がショパン役として映画初出演を果たした。映像表現の場に出ることに憧れていた、という藤澤。映画ではシンドラーと会話する場面で登場する。

 関は、ミセスの配信シングル「ダーリン」のミュージックビデオなどを手がけてきた。撮影当日は声をかけられたときの表情や動きなどを関が藤澤にアドバイスし、「すごくカメラ映えして、撮っていてさすが人気バンドのキーボードという、人前に出る仕事の人だなと感じた」。楽屋では、関や藤澤ら長野県出身のスタッフたちが「信濃の国」を歌って盛り上がったという。

 長野、上田、松本、岡谷市、東筑摩郡山形村で上映。

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