大友啓史監督の熱量が最大限に高まるのは、「撮りたい」を超えて「撮らなければならない」作品に出会った時だと思います。
『宝島』は主演の妻夫木聡さんの熱量も共鳴して、社会的使命を背負った圧倒的熱量の“命”の映画になりました。

7月28日NHK放送「妻夫木聡がゆく もっと知りたい沖縄 戦後80年特別企画」。
26歳の時に映画『涙そうそう』(2006年)に主演して、沖縄が大好きになった妻夫木聡さんの“第2のふるさと”。公私ともに20年以上毎年沖縄に通っているそうです。

宜野湾市の佐喜眞美術館で「どうしても見たかった」という、80年前に島の各地で起こった悲劇を描いた14枚の連作「沖縄戦の図」を鑑賞。
アメリカ軍の上陸を恐れて、住民達が集団自決に追い込まれる様子が生々しく描かれた絵の前で、カメラの前でも涙を堪らえようとしない妻夫木聡さんの姿が胸に迫りました。

戦後80年、戦争をテーマにした映画の公開が続きます。
『木の上の軍隊』『長崎 閃光の影で』『この世界の片隅に(再上映)』『雪風 YUKIKAZE』『太陽の子(特別版)』『遠い山なみの光』『宝島』、『ペリリュー 楽園のゲルニカ』『あの星が降る丘で、また君と出会いたい。』…

『宝島』は構想から6年、コロナ禍で撮影が2度頓挫して公開が2年遅れ、戦後80年の映画となりました。
山崎貴監督が『三丁目の夕日』シリーズ3部作で描いた高度経済成長期の東京と、『宝島』の米軍統治下の沖縄が同じ時代だと気付いて愕然としています。

大友啓史監督がNHKから独立後のFacebookに投稿した、NHK大河ドラマ『龍馬伝』(2010年)の企画書。
この企画趣旨は『ハゲタカ』(2007年NHKドラマ/2009年映画化)にも、『るろうに剣心』(2012年〜2021年実写映画シリーズ5部作)にも通じる、と振り返られていました。

企画書を全文引用できないことが残念ですが、大友啓史監督の企画の社会的使命は、15年後の『宝島』の圧倒的熱量へと確かに受け継がれています。
妻夫木聡さん、広瀬すずさん、窪田正孝さん、永山瑛太さん。4人全員が過去共演者という関係性が、熱演の余韻を残していました。

✎____________

P.S.
昨年は映画賞の作品賞の行方が気になった年でしたが、今年は主演と助演の男優賞を誰が取るのか注目しています。

日本の映画賞レースは、10月の「TAMA映画賞」を皮切りに、日本三大映画賞の「ブルーリボン賞」「キネマ旬報ベスト・テン」「日本アカデミー賞」、そして翌年4月の「日本映画批評家大賞」が大トリ。

2024年公開作品では、吉沢亮さんが主演映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』で、「TAMA映画賞」と「日本映画批評家大賞」の主演男優賞と作品賞を受賞したことが、2025年の兆しのように思えました。

※2025年、私の個人的なノミネートは…
『ファーストキス』『秒速5センチメートル』
松村北斗さん
『国宝』吉沢亮さん、横浜流星さん、渡辺謙さん、田中泯さん、黒川想矢くん
『宝島』妻夫木聡さん、窪田正孝さん、永山瑛太さん

✎____________

9月9日試写会で鑑賞
9月9日★★★★★評価
9月9日レビュー投稿
9月11日レビューP.S.追記

Write A Comment

Pin
Exit mobile version