急成長中の人工知能(AI)企業、米アンソロピックは、数百万冊に及ぶ海賊版書籍のダウンロードを巡り起こされた著作権訴訟について、少なくとも15億ドル(約2230億円)を支払い和解する。AIと知的財産(IP)に関連する訴訟としては過去最大級の和解となる見通しだ。
12月に審理開始が予定されていたこの裁判を担当するサンフランシスコの連邦地裁判事に対し、和解案の仮承認を求める申し立てが5日に提出された。
今回の和解は、対話型AIのChatGPTを展開する米OpenAIやメタ・プラットフォームズ、ミッドジャーニーなどAI業界の主要企業を相手取った多数の著作権訴訟の中でも初期段階のもの。
いずれの訴訟も、原告側は著作権で保護されたオンラインコンテンツの不正利用を主張している。
アンソロピックはこれまでの訴訟手続きの中で、「過度の圧力」を感じており、最大1兆ドルに及ぶ損害賠償が請求されかねない事業継続に関わる深刻なリスクに直面し、和解に踏み切らざるを得ないと説明していた。
同社は最近、年間見込み売上高が50億ドルに到達し、1830億ドルの企業評価で130億ドルの資金調達を実施したばかり。ただし、AI開発にかかる多額の費用により、依然として黒字化には至っていない。
アンソロピックの広報担当者は、「能力を拡張し、科学的発見を促進し、複雑な課題を解決できるよう人々や組織を支援する安全なAIシステムの開発に引き続き取り組んでいく」と資料で表明した。
原告側の弁護士は今回の和解について、「これまでに確認されている著作権訴訟の和解金額をはるかに上回る」と指摘。
原告の代理人である法律事務所サスマン・ゴットフリーのジャスティン・ネルソン氏は「この和解は、AI企業とクリエーターの双方に、海賊版サイトから著作物を取得することが誤りであるという強いメッセージを送る」とするコメントを発表した。
訴訟は最大700万冊に上る書籍の著者を代表する集団訴訟として提起され、アンソロピックがこれらの書籍の海賊版を違法にダウンロードし、自社の大規模言語モデル(LLM)の学習に利用したと指摘。
だが、これらの書籍が実際にLLM学習に使用されたかどうかは、明確ではなかった。アンソロピックは仮に敗訴となれば、破産に追い込まれる可能性もあった。
和解条件によれば、アンソロピックは約50万冊分の書籍1冊当たり約3000ドルを支払う。請求件数が今後増えれば、支払総額も膨らむ。
また、同社は違法にダウンロードしたとされるデータを破棄することにも合意した。和解案に関する審理は8日に予定されている。
原題:Anthropic Reaches $1.5 Billion Author Copyright Settlement (2) (抜粋)