銀獅子賞を受賞した『ヒンド・ラジャブの声』は、ガザでイスラエル軍に殺害された5歳のパレスチナ人少女ヒンドの実話を基にした作品。ブラッド・ピットやホアキン・フェニックス、ルーニー・マーラ、アルフォンソ・キュアロン監督らが製作総指揮に名を連ね、プレミア上映後に20分超のスタンディングオベーションを受けた。ベン・ハニア監督はスピーチで、パレスチナ赤新月社とガザで救護活動を行う最前線の「英雄」たちに、この賞を捧げるとして、こう続けた。
「ヒンドは世界に対し、助けを求めて叫び声を上げましたが、誰からも反応を得られませんでした。責任が追及され、正義がなされるまで、彼女の声は響き続けるでしょう。映画は、彼女を生き返らせることも、彼女に向けられた残虐行為を消し去ることもできません。しかし、彼女の声が失われないよう守ることはできます」
なお、本年度の審査委員長を務めたアレクサンダー・ペインは、この受賞結果についてこう話している。「映画祭のフェアでないところは、本来優劣などない作品同士を比べ、評価しなくてはならないところです。審査員として、我々は両作品をそれぞれ異なる点で評価し、平等に大切に扱いました。それぞれが重要な意味を持つ作品として、長く残ってほしいと願います。そして、今夜我々が授与した賞が、それぞれの形で、両作品の助けとなることを願っています」
第82回ヴェネチア国際映画祭の主な受賞結果
金獅子賞 ジム・ジャームッシュ監督『Father Mother Sister Brother(原題)』
銀獅子賞(審査員大賞) カウテール・ベン・ハニア監督『ヒンド・ラジャブの声』
銀獅子賞(監督賞) ベニー・サフディ『The Smashing Machine(原題)』
男優賞 トニ・セルヴィッロ『La grazia(原題)』
女優賞 シン・ジーレイ『The Sun Rises on Us All(原題)』
Text: Tae Terai
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