moon dropの楽曲が、ついに映画館のスクリーンで鳴り響く。彼らが8月20日に配信リリースした新曲「ブルーフィッシュ」は、9月5日公開の映画『アオショー!』の主題歌として書き下ろした楽曲。浜口飛雄也(Vo/Gt)は、活動初期から映画の主題歌を手掛けることを目標の一つとして掲げ続けていて、その目標がついに叶う形となった。初の映画主題歌を務める上で、彼らは何を思いながら制作に臨んだのか。今回、浜口と坂知哉(Ba/Cho)の2人にインタビューを行い、同曲の制作過程について話を聞いた。(松本侃士)
尊敬するアーティストへの憧れから始まった“映画主題歌”という夢

ーー浜口さんは、以前から映画の主題歌をやりたいと公言していましたよね。
浜口飛雄也(以下、浜口):そうですね。本当に、バンド始めてすぐぐらいの時から、ドラマと映画の主題歌は絶対やりたいってずっと言っていて。僕が尊敬するアーティストがback numberさんなんですけど、僕が学生の時に映画館に行った時に劇場でback numberさんの曲が流れていて、自分もこういう人になりたいなってずっと思っていました。だから、映画主題歌を担当することはずっと目標としていましたね。
ーードラマの主題歌の経験はあったものの、映画の主題歌は今回が初となりました。今回、映画『アオショー!』サイドからは、どのようなことを期待されていたのでしょうか?
浜口:最初に山口(喬司)監督とお話しした時に、「あんまり映画のことは考えなくていい」「moon dropらしさ全開でお願いします」というようなことを言っていただけたのをすごい覚えています。
映画『アオショー!』本予告 [9.5 Fri]
ーーmoon dropのことを心から信じているからこそ言える言葉ですよね。
浜口:moon dropの音楽をそのまま求めてくださってることが伝わってきて……、すごく嬉しかったです。
坂知哉(以下、坂):でも飛雄也は、山口監督にそう言っていただいたものの、ちゃんと映画のシーンとリンクするような歌詞を考えていて。
浜口:最初は山口監督に言っていただいたとおり、映画の内容に引っ張られすぎずに書いてみようと思ってたんですけど、意外とそっちのほうがしっくりこなくて。で、いろいろ試行錯誤して、映画の主人公の(飯田)悉平君に寄り添った歌詞にしてみようって書いた時に、それがしっくりきて。というのも、悉平君の恋とか愛に対するひたむきさみたいなものが、10年以上ずっとラブソングだけを歌い続けてきたmoon dropというバンドのひたむきさとリンクするところがあると思って。だからこそ、映画には寄り添ってるけど、むしろ「寄り添うほうが自分たちらしい」と思いながら、今の歌詞を書き上げていきました。

浜口飛雄也
ーーこれまでのmoon dropの楽曲と比べて、とても真っ直ぐで、一切の衒いがなくて、それこそひたむきで、まさに王道のラブソングだと感じました。
浜口:ありがとうございます。『アオショー!』という映画をきっかけにしてmoon dropのことを初めて知る人が多いと思ったので、今まで以上にストレートに飛んでいく言葉というか、moon dropのことを知らない人が聴いてもちゃんとすっと入ってくるような言葉を、今回はすごい意識しました。
坂:歌詞に関しては、けっこう何回も変わったりしていて。
浜口:レコーディングが迫ってきてもなお、全部書き換えます、みたいなこともあって。今回は、メンバー間でも「こういう言い回しがいいんじゃない?」とか、みんなで話し合ったりもしましたね。

坂知哉
ーー浜口さんが作詞においてメンバーに意見を求めることは今まではあまりなかったと思うので、今の話は驚きでした。
浜口:今回は、今までmoon dropを知らなかった人、さらに言えば、いつもはあまりバンドを聴かない人にも聴いてもらえる曲になるだろうなと思っていたので、自分の概念に囚われないほうがいいなと思って。そういう部分も含めて、メンバーといろいろ話し合ったりしました。悩んでた時に、「ちょっとみんなの初恋の時の話聞かせて」ってひとりずつ聞いたこともあって。でも、誰も何も答えてくれず……僕も、「考えといて」って言って歌入れのブースに行って歌ったらもう満足しちゃって、自分から聞いたことも忘れてました(笑)。
ーーアレンジの方向性や楽曲全体のトーンについては、どのように決まっていったのでしょうか?
浜口:どこを切り取っても“瑞々しい青”が連想されるような曲っていうのは、メンバー全員、アレンジャーのSUNNYさんも含め、ちゃんと共通認識として持っていたので、みんなそこに向けて足並み揃えてやれたなって思います。
坂:SUNNYさんのアレンジによってすごく青春感がプラスされているんですけど、ただ単にずっとキラキラしているわけではなくて。2番のAメロやラストのサビ前のDメロなど、所々でフックになるようなパートがあって、でも最後はすごくキラキラして終わる、みたいな。そういうアレンジがすごいハマったなと思っています。
moon drop【ブルーフィッシュ】Music Video
ーー王道のJ-POPとしての風格を感じます。切実でエモーショナルで、何より楽曲の構成を含めてとてもドラマチックですよね。特に、ラストのサビに向かっていくDメロは、あまりにも鮮やかで。
浜口:嬉しいです、ありがとうございます。構成はデモの時からほとんど変わっていないんですけど、ラストのサビ前のブレイクはもともとなかったもので。あれはSUNNYさんのアイデアです。
ーーあのブレイク、ちょっとドキッとするぐらい長いですよね。予定調和を壊すというか、不意を突くというか。
浜口:今おっしゃっていただいたのがすべてなんですけど、聴いてくださる方にドキッとしてほしいって思って。SUNNYさんといろいろ話す中で、こういうアレンジの仕方もあるのかって学びました。

ーー今後のライブでこの曲がどのように響いていくのか、とても楽しみです。
浜口:ド頭のピアノのメロディが流れた瞬間に、ライブ会場に青い風が吹くようなイメージで作ったので。ライブでも、青春感、青を、存分に感じてもらいたいですね。
坂:それまでの曲を全部忘れるぐらい、すごいグッとなってほしい。それぐらいに空気を変える力がある曲だなって思うので、この曲がライブでやっていく中でどういうふうに育つか僕自身も楽しみです。
ーーセットリストの中で、すごく重要な位置を担う楽曲になっていく予感がします。
浜口:ありがとうございます。この曲って、たとえばオープニングや本編ラストをはじめ、セットリストのどの位置に入っても通用する曲と思ってるので、だからこそいろいろ試していきたいなっていうワクワク感がめっちゃありますね。