各界の読書家が「いま読むべき1冊」を紹介する書評コーナー『Hon Zuki !』。ノンフィクションを中心に「必読」の書を紹介します。

 いささか挑戦的というか、「どういう意味やねんそれは!」と言いたくなるタイトルだ。「眼、耳、鼻、舌、蝕」人間には五感が備わっているというのが古来の考えである。般若心経に「無眼耳鼻舌身意」とあるように、仏教ではこれに加えて「意」すなわち「心」を加えて六根とされるが、これでも六つでしかない。

 それが12もあるというのだ。それどころか33もあると主張する神経科学者までいるという。ホンマですか……。気をとりなおそう。決してフィクションではない。ノンフィクションなのだから。

 とりあえず電子版の広辞苑で「○○感覚」を後方一致で検索してみたら、20語がヒットした。「時代感覚」や「道徳感覚」など、生理的な感覚ではないものも含まれるが、「位置感覚」(身体の姿勢や身体各部位の相対的な位置に関する感覚)や平衡感覚など、明らかな生理的感覚も示されている。

 五感というのは、眼や耳といった目立つ感覚器によって知覚されるものだけなのに、なんとなく感覚の総称と思い込んでいただけなのだ。

私の中にあるかなり正確な「時間感覚」

 そう考えてみると、自分自身、非常に不思議に思える感覚がある。広辞苑には採録されていないが、時間感覚である。若いころから目覚まし時計に頼ったことがほとんどない。起きたい時間、あるいはそれよりやや早い時間に目が覚める。

 どう考えても、起きている際に時刻を当てるよりも正確だ。かなり正確な時計、とまでは言わないが、少なくともアラームが体内にあるようなものだ。特殊能力とちゃうやろか。

 よく知られているように、動物や植物はもちろん、シアノバクテリウムのような細菌の一種にも概日リズム(サーカディアンリズム)のあることが知られている。いまではその分子メカニズムもかなり解明されていて、2017年には米国の三人の研究者にノーベル生理学・医学賞が授与されている。ただ、「人間目覚まし時計」は、概日リズムだけでは説明できそうにない。

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