多くの来場者が集まり、通信の混雑が課題となる大規模音楽フェス。人が集まれば、スマホが繋がりにくくなったり、デジタルチケットやキャッシュレス決済などを使えなくなったりする可能性が高まる。KDDIは、8月29日~31日、山梨県で開催された「SWEET LOVE SHOWER 2025」で、従来比で最大2倍のユーザーを収容できるという新技術搭載の移動基地局車を投入し、より快適な通信環境の構築に取り組んだ。

DB-MMUを投入、移動基地局車の位置も工夫

 今回のSWEET LOVE SHOWER 2025で、KDDIは2台の移動基地局車を用意。いずれも「Dual-Band Massive MIMO」(DB-MMU)に対応する機材を搭載し、3.7GHz帯と4.0GHz帯を束ねて通信速度を向上させる。帯域を2倍に広げながら、機器のサイズは2割ほど小さく、重量も4割程度削減できる。

右のポールの白い機材がDB-MMU

 DB-MMUは、2025年度のイベントから取り入れられた。直近では、東京都で開催された「コミックマーケット」でも活用。ユーザーからのネガティブな反応も軽減しており、その効果が確かめられている。

 移動基地局車は、他キャリアでも運用されているが、KDDIの会場の北側をカバーする移動基地局車は、他社と異なり、とある私有地に置かれていた。これは会場がスリバチ状になっているため。つまり、他社と同じ位置よりも高い効果を発揮できるのがこの位置だという。

 実際に会場でスピードテストをしてみたところ、下り速度は84.8Mbps。混雑時にも高速な通信ができる「au 5G Fast Lane」を契約した回線では、同じく222Mbpsであることが確認できた。KDDI コア技術統括本部 オペレーション本部 品質管理部 エリア品質DXグループリーダーの中西愛氏は「人が増えているなかでも、速度が出ているということは効果があるのではないかと判断している」とDB-MMUの効果について評価した。

左がau 5G Fast Lane回線の端末。右が通常の回線の端末

左からNTTドコモ、ソフトバンク、楽天モバイル

 通信サービスは、音楽フェスのさまざまな場面で活用される。スペースシャワーエンタテインメントプロデューシング プロデュース事業本部 アライアンス事業部 プロデュース1課の三並寛知氏は、ハッシュタグをつけて投稿など、SNSを使った施策が多く取り入れられているなか、電波状況が悪いと「(SNSに)投稿できずにノベルティがもらえないなどの機会損失がある」とも話す。

 入場チケットもスマートフォンの画面に表示する仕組みで、場内の飲食店も大多数がキャッシュレス決済に対応している。利用者も6~7割ほどがキャッシュレス決済で支払っているといい、通信はすでに音楽フェスにとっても欠かせないインフラになっている。

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