2025年、太平洋戦争が終わって80年。戦争を題材にしたさまざまな映画やTVドラマが制作されているが、映画『雪風 YUKIKAZE』は、尊い命を守るため、仲間全員を救おうと奮闘した駆逐艦「雪風」を題材にしており、人間ドラマの部分に強く惹かれる作品となっている。

 太平洋戦争中に実在した雪風は、海軍で“幸運艦”と呼ばれていた。それは、雪風は敵弾をかいくぐりながら駆逐艦としての任務を果たし、沈没することなく必ず生き抜いたからだ。そして、生き抜いた後は決まって戦場に留まり、沈没する僚艦から海に投げ出された仲間たちを救い上げ、共に帰還させた。さらに、戦後は復員輸送船としての航海を続け、外地に取り残された人々、約13,000名を日本に送り返したのだ。

 この史実を知った時、非常に驚いたし、戦って命を落とすことが立派とされていた当時の状況を描く作品とは、取り上げる題材が大きく異なる本作に心を奪われた。

 恥ずかしながら、本作に興味を持つまで、駆逐艦の任務についてよく分かっていなかったのだが、筆者と同じような人もいるかもしれないと思い、記しておきたい。駆逐艦は、一度は耳にしたことがあるであろう「大和」や「武蔵」といった戦艦に比べ、遥かに小型で軽量。高速で小回りが効くので、その機動性を活かし、先陣を切って魚雷で戦い、艦隊を護衛する。ほかにも、兵員や物資の輸送、上陸支援、沈没艦船の乗員救助などを行う“海の何でも屋”、“海軍一の働き手”として、数々の戦場で活躍した。

 その駆逐艦の中でも、“幸運艦”と呼ばれた雪風の活躍を描く本作で、今回が初共演となった竹野内豊と玉木宏が、それぞれ艦長の寺澤一利と先任伍長の早瀬幸平に扮し、1人の仲間も見捨てることなく救うために、あらゆる手を尽くす頼れるキャラクターを熱演している。

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