Theater & Audio Design、ハイエンドまで幅広くカバーしながら音楽好きの若者に啓蒙を続ける沖縄の老舗

Theater & Audio Design、ハイエンドまで幅広くカバーしながら音楽好きの若者に啓蒙を続ける沖縄の老舗

わたしにとって沖縄のカスタムインストーラーといえば當山寛人氏。わたしが読者時代から誌面上でのお顔を記憶しており、実際、ホームシアター創生期から40年以上にわたり、1000件以上の視聴室を構築してきた職歴からみても、レジェンドのひとりといっていい。そんな當山氏が現在の新店舗Theater & Audio Design(シアター&オーディオ デザイン)を立ち上げて1年を経たいま足を運び、ホームシアター愛を伺った。

■実践&実感でファンを育てていくことが目標

Theater and Audio Design(以下、TAD)では、Hi-Fiオーディオとホームシアターの取り扱いがちょうど半々ぐらい。そんなこともあり、メインの視聴室の機材はイベントに応じて入れ換えている。訪問した日も、ビクターのプロジェクターとParadigm(パラダイム)のスピーカーをつかったシアターイベントに備えて、通常とは異なる配置だった。

TADではLINN「LP12」のようなアナログプレーヤーから最新のストリーミングオーディオ、ホームシアターでもビクターの8K対応プロジェクター「DLA-V800R」やデノンのAVアンプ「AVC-A1H」のようなハイエンドモデルが売れている。これは長年にわたり、ファンを當山氏が育てた成果だと思う。

とはいえ當山氏は、あまりハイエンドばかりに振りすぎないことも大切だと考えている。常にお客さんのことを考えて親切な提案を心がけているという。

「若い人たちにオーディオ・ビジュアルのよさを知ってもらうことからスタートしたいんです。たしかに高価なモデルは映像も音も高品位ですが、何でもかんでも高いものがいいというのではお客さまが乖離していってしまいます。まずはお客さまにある程度楽しみ方を教えてさしあげた上で、実践して楽しみを実感したユーザーさんを育てていくことを目標にしています」

■ものを売るのではなく楽しみ方をレクチャー

その点、最近とみに増えてきたジンバル方式のモバイルプロジェクターについては懐疑的だ。

「最近登場している便利なプロジェクターも、もちろんチェックしています。たしかに綺麗に映りますが、どこか深みがない。パリッとした鮮明な映像なので、初めてオーディオ・ビジュアルに触れる方にはわかりやすいかもしれませんが、結局は使わなくなり、長い目で見ればかえって無駄遣いになるのではないかと危惧しています」

中にはユーチューバーのアフィリエイト動画の内容をそのまま受け取り、150型を野外で投写するために7万円のプロジェクターをネット通販で購入したという人から「暗くて見えないがどうすればいいか」と電話で相談を受けるといったこともコロナ禍の頃にはよくあったという。そうなると残念だが、フォローのしようがない。

そうした経験を踏まえて、當山氏は「プロジェクターを売る」ということよりも「ホームシアターのよさを教えてあげよう」という意識を、これまで以上に持つことにしたという。

「地元の住宅新聞にコラム記事を書かせてもらう機会があり、それを活用してホームシアターの基本と楽しみ方を解説したのです。そうすることで『どれを買ったらいいのか』ではなく『どうやって楽しむのか』を知ろうとするお客さまが、店にもお越しになるようになりました」

■それぞれの好みに対して選択基準を提供する

そうして来店したホームシアター初心者に、當山氏はまずプロジェクターの映像を見せる。初めて映像を観る人には自分の中に基準がないから、まず最高画質を見てもらい、そこから予算や用途に応じて自分の身の丈に合ったものを選んでもらえるように、コントラストや4Kの意義を説明する。地道な啓蒙活動だ。

「最高画質にすごいねと言ってくださる方もおられますが、たいていは価格を聞いて唖然とします。でもそれがスタート地点。仮にほかのお店やネットで買って過去に満足できなかった方でも、自分はいったいどこに満足できなかったのか、なぜ高価なものはその価格になるのかが、すうっと理解できるようになるのです」

いまはお客さんが来るのを待つより、機会があったらこちらから積極的に出向いて行って、話を拡げる活動をしているという當山氏。沖縄の人たちには、日常的に音楽に親しむ文化が根付いている。こうした地道な啓蒙活動によって、ホームシアターとオーディオの文化が、すべからく若い人たちに継承されていく。

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