TOKYO MXなどで放送中のTVアニメ「アークナイツ【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】」。同作の監督である渡邉祐記氏、アーミヤ役・黒沢ともよさん、チェン役・石上静香さんの鼎談インタビューをお届けする。

本作はスマートフォン向けゲーム「アークナイツ -明日方舟-」を原作とし、メインテーマ(メインストーリー)を軸に描いたTVアニメシリーズだ。現在放送中のシーズン3では、いよいよ物語がひとつの終着点へと向かっている。Gamerでは、このタイミングで今だからこそ話せる話題や、お互いの仕事ぶりまで幅広く伺った。

左から渡邉祐記氏、黒沢ともよさん、石上静香さん左から渡邉祐記氏、黒沢ともよさん、石上静香さん

――原作ゲーム自体も日本での展開は5.5周年を迎え、アニメもシーズン1の放送から約3年が経過しました。「アークナイツ」というコンテンツ全体を振り返ってみていかがでしょうか?

黒沢さん:私はゲーム収録からになりますが、収録ワードはとても短くて少ないのに、ものすごく時間がりました。

最初はアーミヤの立ち絵と、ちょっとしたプロフィールだけ頂いていました。どんなストーリーがあるのかも知らないし、どんな立ち位置の子なのかも分からないままで。ウサギの耳はついているけど髪の色も茶髪で、すごく普通の感じがしました。

TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん鼎談インタビュー:収録初期の思い出や坂本真綾さん演じるタルラへの想いまでの画像

――確かにアーミヤは奇抜な髪色でもなく、見た目が派手なキャラクターでもないですよね。

黒沢さん:それで最初は、少し低めの声を使ったんです。そうしたら「ゲームの看板キャラクターで可愛い感じだけど、あどけなさが残る。はっきり物申すタイプだけど、抜けているところもある」と説明をされて。30分くらいで終わるかなぁと思って行ったけど結局4時間くらいかかりました。

石上さん:私の「アークナイツ」もゲーム収録からですね。同じようにチェンのイラストとちょっとしたプロフィールだけいただいた状態で、結構可愛い感じの見た目だったので少し高めの声で1回テストしたんです。

でもアーミヤとは逆に「この子はいわば警察のトップのような人なので、もっと声は低くて、かっこいい系でお願いします」と言われて。「こんなツインテールみたいな可愛い髪型なのに?!」って当時は思いました。

黒沢さん: ステレオタイプに嵌めてしまうのは情けないのですが、囚われてしまいます…。

石上さん:他の作品では、その見た目っぽい声質を出せばOKをいただける機会が多かったんですよ。「アークナイツ」は真逆のディレクションをされました。

役者としては低く出して、やりすぎですって言われたら上げるみたいな。これくらい出ます、といったアプローチで投げかけるんですよ。収録した時期でいえば6~7年前の、今より若い私が頑張って出せる低い声を出したら「そのラインで喋ってください」と言われて収録しました。さすがに4時間はかからず、想定した時間内で収録できましたけど。

TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん鼎談インタビュー:収録初期の思い出や坂本真綾さん演じるタルラへの想いまでの画像

黒沢さん:この子はヒロインです、みたいな説明も全然なかったんですよ。初期にボイスのあるキャラクター一覧みたいなものがあって、そのうちの1人って感じで。その時は「可愛いし、普通の茶髪だし、そんなに強いキャラクターじゃないんだろうな」って。もうすごい偏見ですよ。私の偏見、よくないですね!

中国のHypergryphさんとリモートで繋げながら収録したこともあって、すごく時間をかけて丁寧に録ると思っていたんですけど、こんな壮大な作品の、この立場だったなら……そうだね、時間かかるよねって。TVアニメが始まって、後からそう思いました。

――アーミヤは物語の軸になるキャラクターですから、こだわりもすごかったんでしょうね。

渡邉氏:私は当時、別の会社にいましたが、Yostar Picturesが制作するゲームのプロモーション用のアニメPVに関わっていました。最初はライン生命の、サリアのもつ盾を修正していた記憶があります。

事情があって当初はTVアニメに携わるつもりもなく、元々はPVの職人としてやってくはずだったんですよ。なので始まりはPVですが、そこにまた色々な事情が重なってテレビシリーズにも関わることになりました。

黒沢さん:準備期間はどのくらいだったんですか?

渡邉氏:普通に進めるよりも、準備時間は少なめの状態でしたね。どうにかしなきゃという一心でした。

黒沢さん:まるでアーミヤのような……(笑)。渡邉さんの手に降りてきた時には、もう何期でとか、ここまでやるとか、そういうのは決まっていたんですか?

渡邉氏:ある程度の想定はありました。ただ、その点も色々あって、例えば「全12話の全編オリジナルにして、ロドスの日常を描く」みたいなものは絶対無理だよねっていうのは全会一致でしたね。きちんと原作の流れを汲んで、作品の魅力をお届けしなければ意味がないというのは、当時のメインスタッフで共通の認識でした。

黒沢さん:Hypergryphさん側には、その先の展開とか、実はこうみたいなキャラクターのバックボーンとかがあるわけじゃないですか。それを吸い上げていく作業とかもあったんですか?

渡邉氏:一応、先の展開はチラチラと聞きつつ、でもほぼ何も分からない状態でした。

黒沢さん:でもこの演出、逆算しないと入らないでしょっていうシーンがたくさんあったじゃないですか。

渡邉氏:やりながら軌道修正しています。

黒沢さん:天才すぎる……!

渡邉氏:短編というか、パラリンピック関係で7分尺の1話×4本というシリーズもののような作品を手掛けたことはあったんです。でも30分枠のテレビ放送するアニメの監督経験は初めてで、アフレコ現場も「アークナイツ」が2回目なんですよ。現場のことは何も分からない状態からのスタートで、作法も何も分からなくて。

石上さん:他の作品だったらオーディションなどを通じて、自分たちでキャラクターとかのイメージも決められますけど、この作品はもう選べない状態でしたしね。「黒沢に石上かよ~~??」みたいな(笑)。

渡邉氏:そんなことは全然ありませんから!! むしろ、他の作品でも看板になるような方々しかいない中、私だけ素人みたいなもので。音響監督という肩書もありますが、技術的なことは何も分からないのに、横から口を出すだけでという……自分は一体、何をしているんだと思うこともありました。

石上さん:Hypergryphさんも、中国からパソコンでアフレコに参加してくださっていて。監督たちがいるブースって、私たちには姿は見えるんですけど音は聞こえないんですよ。休憩中にパッと振り返ると、そのパソコンに向かって仁王立ちしながら何かを喋っている監督がいて。

渡邉氏:私は雇われた監督という立場ですから、本来は黙って仕事をすべきなんでしょうね。でもやっぱり個人的に納得できていないと首を縦に振れないので、めちゃくちゃにうるさい人間になって……(笑)。

原作の方々が相手でも「何故そうなんですか?」と言ってしまいますね。まず大事なのはコンテンツであることは前提で、原作側にゲームのキャラクターとして大事にしたい部分があって、我々にもアニメの演出として大事にしたい部分がある。私がそれなら仕方ないと受け入れることもあれば、Hypergryphさんに飲み込んでいただくこともありました。

石上さん:サイドストーリーの「闇夜に生きる」が加わるっていうのは、どちらの提案だったんですか?

渡邉氏:これは、原作の方々からやってほしいという要望があったわけではないですね。我々が3期はどうしようっていう話し合いの中で「これやらないと、分からないよね」と。話数自体は決まっていたんですが、副監督の西川将貴くんがうまく導いてくれました。ドクターやテレジアをはじめ、重要なキャラクターの話に繋がってきますし。

「闇夜に生きる」がやりたいから、やったというわけではなく。それぞれのキャラクターの大事なポイントをここで語っておかないと、その先につながってくれない。それをするためにも、やはりWの人格をちゃんと見せておかないといけないだろうと。

この話で一番やらなくてはいけなかったのは、直接手を下したのはアーミヤとチェンである。でもスカルシュレッダーとミーシャが死んだ原因を作った人が、何を考えていたのかをここで語っておかないと、キャラクターとしての落としどころが作れなくて。

あくまで、その後の話のキャラクターにとって必要な情報を積み込むためです。Wの回想というか、死んではいませんけど走馬灯のような雰囲気になっていますが、皆さんもおそらく自分の記憶を辿るとき、ものすごいスピードで巡ると思うんですよ。これはWの記憶にある、もうすべて終わった出来事なので、こうした雰囲気になっています。

ただ視点をWだけに絞れず、イネスとヘドリーが客観的に言う部分も取り入れないといけなくて。なので逆に入れ子構造にして、イネスとヘドリーから見たWであり、Wから見たドクターという、客観的な視点と主観視点がごちゃ混ぜになった記憶のような記録という形になっていました。

黒沢さん:泣ける。この話だけで泣けます。


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――シーズン3の見どころについても伺っていきたいのですが……ちなみに、これまでは監督から「世界観講座」が開かれていたそうですね。

黒沢さん:今回はイネスやヘドリー、タルラとか、あとドクターを演じる方々とは話をしていましたよね。

渡邉氏:そうですね。黒沢さん、石上さんに関しては、1クール目の頃は「アニメシリーズにおける、この2人のキャラクターは何ぞや」っていうのをすごくお話しさせてもらいましたが、今はもうキャラクターを作り上げていただいたのでお任せしています。お二方の場合は、キャラクター像がどうとかではなく、周りとの絡みとして、今は何を考えているのかといった点に終始していました。

――チェンでいえばタルラとの血縁関係や、過去の出来事も時系列がやや複雑ですし、アーミヤもタルラの置かれた状況への理解が必要だったように思います。

黒沢さん:そういう部分もありますけど、この作品って、聞いた時のリアクションで事の重大さをお客さんに伝えないといけないことが結構あるんですよね。

政治的な部分の中で、この国と国がどういがみ合ってきたのか、みたいな。歴史を知っておかないと、ため息一つつけないっていう。

渡邉氏:本人たちの与り知らないところでも、たくさんのことが起きている。本当に多くの命を背負っているわけです。

TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん鼎談インタビュー:収録初期の思い出や坂本真綾さん演じるタルラへの想いまでの画像

――ゲームをプレイしていると、その重さがより一層分かる気がします。

石上さん:それと監督は、1話分しか出ないキャラクターに対しても「この子はこうやって生きて、こういう退場の仕方をしちゃうんですけど……」みたいな感じで、他のキャラクターと変わらない熱量でものすごく丁寧に説明されてましたよね。

黒沢さん:名もなき兵士たちにも台詞がたくさんあるシリーズなので、そういう方々にも「この人は、誰々と一緒にいたっていうつもりで描いていて!」みたいな感じでしたよね。

石上さん:監督の中では、いわゆるモブキャラクターが誰もいないんですよね。名前がついてないキャラクターも1人ひとりちゃんと生きているし、人生があるっていう。

渡邉氏:そうですね。例えばレユニオンは仮面をつけて個を無くしているキャラクター性なのでまた違うんですが、ロドスに在籍するキャラクターたちは、本来は全員に名前つけて絵を描き分けてくらいのことがしたかったんです。物理的に無理なので諦めていますが……。

ただ、一緒に中枢区画へ突入するロドスのオペレーターは全員、社内スタッフに個体識別をしてもらっているので、ようやくちょっとだけ回収できたなという思いです。

TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん鼎談インタビュー:収録初期の思い出や坂本真綾さん演じるタルラへの想いまでの画像

――それでは改めて、シーズン3の見どころや注目ポイントについてお聞かせください。

黒沢さん:私はやっぱりパトリオットかな。アーミヤにとっては立ちはだかる相手という以外、彼に何の非もない。素敵すぎる人に対して立ち向かうのが、非常に印象的でした。

あとTVアニメ「アークナイツ」って手書きのロマンみたいなのがあったじゃないですか。それがパトリオットで、急に3DCGになりましたよね。

渡邉氏:スタッフから「これは動かさないで!!無理!!」って言われたという作業的な問題でもあったんですが、IKIF+さんという3Dスタジオの方々に協力をいただいて、とても素晴らしい仕上がりになりました。

黒沢さん:動きの質感がちょっと違うのが、歴戦の猛者という空気が伝わりますよね。もちろん過去編になってくると、また手書きになっているんですよ。最新のシーンのところだけがCGで、完成を見たときに結構グッときちゃいました。

実際にはまた別の事情があったのかもしれないんですけど、最終的には結構そこで「食らっちゃったなー!」っていう感じでした。

渡邉氏:西川くんが意図的にやっているところもあると思います。

TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん鼎談インタビュー:収録初期の思い出や坂本真綾さん演じるタルラへの想いまでの画像

石上さん:私は、シーズン3で収録が楽しみだったのはホシグマと衝突するシーンですね。ゲームだと意外と短いというか、すぐ決着がついてホシグマが見送るみたいな感じなんですけどアニメはたっぷり尺を取っていただいて。

黒沢さん:そんなに早いんだ!

石上さん:チェンにとって、シーズン3の1話目って一番心境が変化するところじゃないですか。自分が感染者なのもバラしちゃいますし、タルラがお姉ちゃんだから自分が止めなきゃってなっていますし、ウェイの裏切りとか龍門の裏側も全部知ってしまって。

さながら暴走した家出少女じゃないですけど、飛び出して行った先で一番信頼している相棒のホシグマにも止められてしまう。チェンはチェンで、もうタルラを止めるの自分しかいないって思っていますから、ホシグマとも全力で対決する。演じていてすごく楽しかったです。

TVアニメだと、ボロボロに傷ついたホシグマが片手でチェンをぶん投げてて、ちゃんとホシグマの強さも描かれていました。多分、ホシグマが傷ついていなくて、純粋なフィジカルでえばチェンは負けていると思うんですよ。そこを映像でより分かりやすく演出していただいたので、一原作ファンとしてもすごく嬉しかったです。

渡邉氏:原作の方々が大事にしてるのは、本当はホシグマの方が強いというところなんですよ。じゃあ、どうしてやめたのかと。盾のカドと一緒に心も折れてしまって、チェンが出ていくことを受け入れている。原作にあるイラストとも合わせて、こうした展開にしています。

TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん鼎談インタビュー:収録初期の思い出や坂本真綾さん演じるタルラへの想いまでの画像

――シーズン3では、これまで別々の立場にあったアーミヤとチェンが共にタルラへ立ち向かうことになります。ここに至るまで、どのような感情の変化を感じられましたか?

石上さん:最初は、チェンはロドスに対して不信感を抱いていたというか、信用はしてなかったんですよね。でも段々、アーミヤの誠実さとかロドスの考えを知っていって。

チェンは、感染者も非感染者も仲良く住める場所を作るための道を探してたと思うので、これってロドスと同じ考えですよね。なのでシーズン3では自分の夢を託すような、自分の成し得なかった道をアーミヤがいつか築いてくれるんじゃないかっていう期待の目で見ているような気がします。

黒沢さん:シーズン3の時点では、もうお互いのことはかなり信頼していますよね。信頼の一言に尽きると思います。

シーズン2と3、アーミヤとチェンの物語の中での役割って逆転してますよね。チェンにとっては個人的な話になっていくのに対して、アーミヤはどんどん客観的になっていくし、そこをアーミヤとしては愛おしいとさえ思っているような気もしてて。そういうつもりで、背中に手を添えるみたいな気持ちで一緒にいることが多かったかなって思います。

――渡邉監督は、この3人の関係性をどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。

渡邉氏:アリーナにまつわる話で「自我との戦い」という言葉があるんです。この作品全体でもずっと描かれてきた主題なんですけど、アーミヤは最初、自分の感情を制御できてなかったんですよね。

アーミヤがミーシャを傷つけたくないと思ったから結果として救えず、犠牲が出てしまった。自分で受け止めきれないっていう状態に、チェンが「ちゃんとして!」って言う。でも、今度はチェンがタルラに会いたいし、タルラを止めたいし、自分がどうにかしなきゃいけないんだっていう半ば自暴自棄のような状態になってしまう。理解できなくはないところではあるんですけど、本当にそれでいいんですかと諭すのがアーミヤで、立場が逆転しているんですよね。どこかで道から外れてしまう瞬間は、誰しもあるんです。

アニメでは自分の立場と、個人的な感情の部分でバランスを取らなくてはいけないというのを描き続けています。この2人に限らず色々なキャラクターでもそうなんですが、とくに主軸になっているキャラクターはそうした描き方になっているかなと。リーダーという立場を担っているのはアーミヤもチェンもですし、タルラもですし、パトリオットにも、ドクターにもそういった部分がありますし。

TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん鼎談インタビュー:収録初期の思い出や坂本真綾さん演じるタルラへの想いまでの画像
TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん鼎談インタビュー:収録初期の思い出や坂本真綾さん演じるタルラへの想いまでの画像

ちょっと話は変わりますが、個人的に演出で気を付けていたのがリフレインさせたいということなんです。フラクタル構造というか、金太郎飴というか、どこを切り取ってもテーマに繋がるようにしたいんです。アーミヤとチェンという2人のキャラクターを切り取ってもそうなるし、この関係性がまた別のところにも現れるし、どこまで掘っても同じテーマがずっと出続ける。そうしないと見る意味がないって思っちゃうタイプなんです。原作でもそうした部分を描ける内容でもありましたし。

とくにシーズン1の8話で、この2人にフィーチャーして届けました。そこからのシーズン3で成長を経てチェンは一層、自分の個人的な感情に寄ってきている。

黒沢さん:アーミヤのこの変化が、成長でいいのかなっていうのは、いつか聞いてみたいと思っていました。ずっと、どういう気持ちで描いているのかなというのは気になっていて。

渡邉氏:その後の展開があるので私がどこまで把握できているのかという部分もありますし、原作の方々しか分からないと思いますが……最初はわずかながらも成長だったと思うんですよ。個人的な感情をコントロールするし、リーダーとしてちゃんと皆のこと導いていく。

ある種、大人になるみたいな話なんですけど……じゃあ大人になるって何かっていうと、個人的な感情から離れていくことなんですよ。ただ、それは捨ててはいけない。さっきもバランスという話をしましたが、成長を語ることは難しいですね。

個人的には物語では成長、変化を描かないといけないと思うんです。25話まで見ればより理解が深まると思うんですが、エンディング映像を見れば分かる通り、アーミヤが暗闇の中に1人でいるのは、彼女が光であるからなんですよ。一人ぼっちでもどうにかなることも、ある意味、成長なんです。でも成長って辛いよね、という。

――放送中のエピソードでは、いよいよタルラとの再会が迫ってきています。アーミヤやチェンを演じられるうえで、タルラという存在にどのように向き合ったのでしょうか。

石上さん:チェンからしたら、幼少期は「いいお姉ちゃん」としてのタルラを見ていたでしょうから、どうしてレユニオンのリーダーになったのかっていう部分は、たぶん分からないと思うんですよね。

タルラの回想を見ると本当は優しくて、多くの人を救いたい心優しいお姉ちゃんで。毎回チェンに対して手紙も書いてくれていたのに、それも全部チェンの手元には届いてなくて。本当に幼少期に別れたっきり、まったく姿を見ない間にタルラが本当におかしくなってしまった。だから、道を違えてしまった姉を正さないといけない。ウェイにしろ、色々な隠し事をしていた龍門にタルラを止めることはできないだろうから、もう自分しかいないという気持ちで単身突っ込んでいったのかなと思います。

黒沢さん:アーミヤは、事あるごとにさらっと「あの頃のタルラに似てる」みたいな言われ方をしてきているんですが、アーミヤの知っているタルラはとんでもない強さの相手じゃないですか。だから「似てるって、どういうことだろう?」みたいに思っていたと思います。。「私はあんな風に見えているのかな……」みたいな。アーミヤって結構、周りからどう見えているか気にする子ですから。

今回のシーズン3でタルラと対峙していて思ったのは、すごく優しくて、すごく頑固な人なんだなと。まあ、似てはないなって思ったと思うんですけど、本人的に(笑)。私とは違うって思ったと思うんですけど、誰かに心を預けてもらえる人って、それだけ歩み寄る人でもあると思うので、アーミヤより優しい人なんじゃないかなっていうのはすごく感じましたね。

演じられている坂本真綾さんも、普段とても人間味あふれる先輩なんですよ。そんな方がそうした感情に蓋をしたタルラを演じるっていうのは、個人的な感覚でもグッとくるところがあって……抱きしめたいなぁって(笑)。

TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん鼎談インタビュー:収録初期の思い出や坂本真綾さん演じるタルラへの想いまでの画像

石上さん:タルラが普通の人間だったら、とっくに心が折れていたと思うんですよ。でも真綾さんの演じるタルラだったら、こうなるなっていう。この説得力を真綾さんが担保しているっていう感じが私はすごくあって。

渡邉氏:そこで踏みとどまるのがタルラですよね。単純に、いわゆる闇堕ちするとかではない。チェンとタルラは血縁関係があるので、坂本さんにはチラっとチェンの喋り方を意識しつつ、みたいなことを言った記憶がありますね。別にそんな、めちゃくちゃってわけじゃないですけど。チェンってこう、ちょっと口調が厳しいところがあるじゃないですか。

黒沢さん:そうなんですか!

渡邉氏:タルラって本当はアーミヤのようなリーダーになれるはずだったよね、みたいな部分はありますね。アーミヤとは立場が似ているとか、求めている理想が似ているというか。でもタルラは、さまざまな思惑のもとで飲み込まれてしまった。アーミヤとドクターの関係性というか、いわゆるニコイチのような形でアリーナがいてくれたら……という。

20話で「私には仲間がいます」みたい話をパトリオットに言っていたんですが、これも矛盾を抱えているんですよ。リーダーとして一人で頑張れるようになるのがある種の成長ではあるんですけど、でも仲間の協力も得ないといけないっていうアンビバレンスな状態にある。タルラは、リーダーとしてうまく立ち行かなくなってしまった側の人間が迎えた世界にいるんですよね。

黒沢さん:終盤のシーンでいえば、私もそういった部分を意識していました。そこまではヒステリックに思えるくらい喋っていたけど、あるセリフだけトーンを落としたんですね。それでリテイクがなかったから、すごくシンクロしていたんだと知れて、今すごく嬉しいです。

――「アークナイツ」にTVアニメから入った人はもちろん、結末を知っているゲームプレイヤーもシーズン3のクライマックスに向かう彼女たちの感情の機微をじっくり楽しめそうですね。本日はどうもありがとうございました。

TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん鼎談インタビュー:収録初期の思い出や坂本真綾さん演じるタルラへの想いまでの画像

渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん寄せ書きサイン色紙をGamer読者にプレゼント!
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賞品

TVアニメ「アークナイツ」渡邉祐記氏×黒沢ともよさん×石上静香さん寄せ書きサイン色紙

当選者数

2名様(抽選)

応募期間
2025年8月20日18:00~2025年9月1日23:59

応募方法
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※投稿次第追記いたします

注意事項
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