
夏ドラマ(放送期間は7~9月)が中盤から後半に差し掛かった。現時点でのベスト5を決めてみたい。なぜ、良作なのか、理由も明らかにする。選考するのはテレビ界取材歴30年以上の放送コラムニスト・高堀冬彦氏。豊富な知識と公平な判断には定評があり、ドラマ賞や映画賞の審査員も経験している。
*本記事にはネタバレが含まれます。
(放送コラムニスト:高堀冬彦)
『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ)
5位は『明日はもっと、いい日になる』。神奈川県内にある児童相談所(児相)の慌ただしい日常を描いている。
主人公は神奈川県警から児相に出向してきた夏井翼(福原遥)。正義感が強く、恵まれない境遇にある子供たちのために奔走するが、張り切りすぎてしまうこともあるのが玉にキズ。児相の露骨な介入は親のプライドを傷つけてしまうからだ。翼は先輩職員の蔵田総介(林遣都)に叱られてばかり。

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それでも翼は「早く、あの子を助けないと」と言い、走ることをやめない。困っている人を見過ごせないのは警察時代からの長所であり、短所でもあるのだ。虐待やネグレクト(養育放棄)から子供を救うのはもちろん、清掃のできない母親のために汚部屋を片付けたり、シングルファザーの愚痴を聞いたり。休む間もない。
蔵田は一見クールだが、子供の幸せのためならいかなる苦労も惜しまない。親のことも考えており、第3回では3歳児の成長の遅れを心配し、育児相談にやってきた屋島美穂(富田望生)のちょっとした異変を見逃さなかった。「診断を受けてみませんか」。美穂こそ問題を抱えていた。育児ノイローゼだった。
第6回では日本人の夫と離婚した後、手続きをしなかったために配偶者ビザを失ったベトナム人女性のグエン・チ・リン(フォン・チー)と7歳の一人息子のために翼と蔵田は動く。翼たちは親子が離ればなれになるのではないかと気を揉むが、出入国在留管理庁はリンの在留資格の変更を認める。児相のリン親子へのケアが役立った。
世の中は少子化対策にばかり意識が向かっているが、このドラマを観ていると、親と子の生きづらさを解消するための議論や環境整備が十分には行われていないことに気づかされる。心温まるヒューマンドラマ色と社会派色のバランスがいい。
正真正銘の実力者である福原と林の演技が光っている。