『新潮文庫の100冊 ぜんぶ読む』

本企画の失敗と再発防止策につきまして

 

2025年7月26日

株式会社バーグハンバーグバーグ

オモコロ編集部 御中

 

 

貴社におかれましては、多大なご心配とご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

この度、オモコロ特集を期日内に納品することができなかった事象につきまして、現状の調査・確認を実施し、今後の対応について検討いたしましたので下記の通りご報告申し上げます。

 

 

2021年7月9日 連絡用チャットツール上におきましてオモコロ編集部(以下「編集部」)に対し当特集を執筆しているオモコロライター・藤原(以下「ライター」)が「『新潮文庫の100冊 夏のうちに全部読めるのか』という企画をやりたい」ともちかけました(図1)。

 

図1 – 連絡用チャットツールを通じた記事提案

 

当初の工程見積では1日につき1~2冊程度の小説を読むことを想定しており、執筆期間を含めておよそ3か月ほどで納品が可能という提案をライターからいたしました。それに対して編集部からは「本当に読み切れるのであればとてもすごい。是非お願いします」という趣旨の返信があり、これをもって編集部とライターの間でオモコロ特集『新潮文庫の100冊を全部読んで俺のベスト5を決める』(以下「特集」)執筆の契約がなされました。

その後、2021年7月から2021年11月までの約4ヶ月で42冊の小説を読み、それ以降2025年7月現在に至るまで1冊も『新潮文庫の100冊』を読んでいないことがヒアリングの結果から明らかになっております。

 

ライターが企画に取り組み始めた当初はおおよそスケジュール通りに進んでおり、編集部に対しても定期的な連絡を行っておりました(図2)。

 

図2 – 編集部への定期的な連絡の様子

 

しかし、企画が進むにつれ徐々に進行に遅れが見え始めました。これの主要な原因としましては、ライターが企画を提案した段階ではただ小説を100冊読むことだけを想定して工数を見積もっていましたが、特集を書くための企画である以上、その小説がどのような内容であったか、その小説にどのような印象をもったかを適切に記録する必要があることが判明したためでした(図3)。

 

図3 – 感想文のテキストファイルの一覧(抜粋)

 

つまり記事を書くためには「100冊を読む」だけではなく「100冊の読書感想文を書く」必要がありました。読み終えた小説について感想を記録することは「読む」という受動的な作業とは違った能動的な作業であり「本を読む」という言葉に包括される一連のプロセスのなかで最も多くのリソースを必要とすることがあきらかになっていきました。短くても200ページほど、長編であれば1000ページを超える小説について読後の感想をまとめることは容易ではなく、長ければ一冊の小説の感想を書き終わるまでに1日以上かかることもありました。その負担の大きさから、感想を記録することを後回しにして先にほかの小説を読み進める行為が常態化し『読み終わったが感想を書いていない本』の数が日ごとに増えていきました。「読み終わった小説の感想を書く」という負担の大きいタスクがどんどん積み重なっていくことに対し効果的な対策の手を打つことはできず、最終的にはライターによる特集の執筆の放棄という事態に至ってしまいました。

構想段階で特集を執筆するにあたっての工数を適切に見積もることができなかったことが、本不適切事象が起きた一因となったことは疑いようがありません。

 

また 執筆当初は特集の進捗を編集部に確認された際に「何冊まで読んだ」や「すこし遅れている」という旨の状況報告を定期的に返しておりましたが、執筆が滞るうちに進捗の報告は減り、目標が達成不可能であるとライターが判断したタイミングからは編集部からの問い合わせについて一切連絡を返すことはありませんでした(図4)。

 

図4 – 編集部への応答の拒否

 

本来であれば特集の執筆が不可能であると判断した段階で編集部に相談をもちかけ、執筆可能な形での特集の再構築に向けて議論を重ねるべきでありました。しかしライターは編集部の役割について理解が十分ではなく、自身の失敗を隠したいという動機から連絡を絶つという行動に出てしまいました。

ライターは今回の特集が達成不可能であると判断したにもかかわらず編集部にそのことを報告せず、またほかの特集の執筆に取り組むこともなく、2021年11月29日から約3年間オモコロ特集をはじめとしたオモコロ上のコンテンツに寄稿することはありませんでした。

その姿勢は、ウェブライターとして真摯にオモロに向き合っていたとは到底言えるものではありません。

 

 

なぜなぜ分析の結果、本不適切行為が発生した主な原因は以下の3点であると判断いたしました。

 ① ライターの就職に伴う執筆時間の確保の難化
 ② 長期間にわたる企画へのモチベーションの維持
 ③ 特集記事の高品質化のプレッシャー

 

① 就職に伴う執筆時間の確保の難化

本特集を執筆し始めた当初ライターは特定の職に従事することなく多くの時間を特集の執筆に充てることができる状態にありました。しかし特集を執筆し始めてから3ヶ月ほど経過したタイミングで正社員として企業に入社し、小説を読むことや小説の感想を書く時間を捻出することがむずかしくなりました。しかし平日フルタイムで働いていたとしても週末を特集の執筆に充てることは可能であり、就職から約3年ほど経過しているにもかかわらず小説は1冊も読み進めていないことから、就職による生活環境の変化のみが特集執筆の妨げであったとは考えにくいものの、新しい職場環境に身を置く心理的なストレスが特集を執筆するにあたってネガティブな影響があった可能性が考えられます。

 

② 長期間にわたる企画へのモチベーションの維持

特集の執筆を開始した当初は、あたらしい企画にチャレンジすることやいままで読んだことのないジャンルの小説を読むことについて高揚感があり、強い意欲をもって企画に取り組んでおりました。しかし企画が長期化するにつれて新鮮さは失われ、徐々に執筆についてのモチベーションは低下していきました。

さらに、執筆開始当初は100冊のうち読みやすいものや短編ばかりを恣意的に選択していたため、経過日数に対しての読了冊数の増加は順調でした。しかしその結果として、後半にさしかかるにつれドストエフスキーなど時間的・心理的に大きな負担がかかる作品が多く残る結果になってしまいました。

また、本来の読書であれば魅力を感じられない作品については途中で読むことをやめることができますが、100冊すべて読み切るという企画の性質上、ライターが面白いと感じることができなかった小説であっても最後まで読まなくてはならず、これも意欲をそぐ一因となりました。たとえ新潮社が選んだ100冊であってもライターの嗜好にそぐわない小説はあり、だれかにとっての名作がすべての人にとっての名作ではないことを身をもって経験いたしました。

 

③ 特集記事の高品質化のプレッシャー

いままでライターが執筆した記事のなかでは『字の下手な人が30日練習したらどれぐらい改善するのか検証します』『図鑑に載っている植物300種、一年かけて探したらどれだけ見つけられるか』のように長期間取り組むもの、一見して達成が困難なチャレンジに取り組んだ企画は比較的PVが高く、SNS上での反応も好意的なものが多く見られました。SNSからの流入を狙うため記事タイトルにインパクトのある数字を入れるというのはウェブライティング業界では一般的なテクニックであり、一定の効果が見込まれます。
それに似通った性質の企画を探していくうちに、今回の特集のアイデアにたどり着きました。

反面、記事のコンテンツがタイトルにそぐわない場合はいわゆる『釣り記事』という印象を読者に与えることも考えられ、これはライター、ひいては掲載メディアの信用を悪化させかねず、悪質な場合は炎上につながるリスクも考えられます。特集に耳目を集めるタイトルをつけるためにはその内容と乖離があってはならないため、一定の品質を保ったコンテンツにしなければならない、という意識が執筆におけるライターのプレッシャーにつながっていた可能性は否定できません。

 

 

上記分析からとりまとめた、本不適切行為に対する再発防止策は以下の通りです。

① 記事執筆において、達成が困難な目標を立てない

② 記事執筆において、定められた納期に対しコミットできる題材を選ぶ

③ 記事執筆において、持続可能性を強く意識する

 

これらを総合し、次回記事案を以下のように定めます。

 

『めっちゃおなか空いてたら

🍣お寿司🍣って

いっぱい食べられるんじゃない!?』

 

再び信頼していただけるライターに生まれ変わるために、記事執筆のあり方を抜本的に見直し、再発防止に努めてまいります。

 

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