『ファンタスティック4 ファースト・ステップ』は、世界的に知られるスーパーヒーローチームを題材にしながら、その壮大な潜在力をまったく活かしきれていない凡庸な入り口に過ぎない。既存のヒーロー映画のテンプレートを単になぞるだけで、登場人物の個性や関係性は表面的に描かれ、彼らの葛藤や成長が深く掘り下げられることはない。

物語は丁寧に始まるどころか、急ぎ足で展開され、視聴者がキャラクターに感情移入する余裕を与えない。チーム結成の過程も浅く、ただ「特殊能力を得た若者たちが戦う」というお決まりの枠組みをなぞっているだけで、チームとしての絆や内面の葛藤は希薄だ。結果として、観客はなぜ彼らがヒーローとして立ち上がるのか、その動機に納得感を持てず、物語に没入しづらい。

また、ヴィランの描き方も単純化されすぎており、ただの“悪役”という記号にとどまる。対立軸としての説得力や複雑さが欠落しているため、物語の緊張感は薄く、バトルシーンに至っては華やかさはあるものの、手垢のついた演出が繰り返されるだけで新鮮味は皆無だ。

映像表現に関しては、大規模なCGを駆使しているが、これもまた画面の派手さに終始し、ストーリーの補強にはほとんど寄与していない。特にアクションシーンは手数は多いが、どこか散漫で、「何が起きているのか分かりにくい」という致命的な弱点がある。

総じて、『ファンタスティック4 ファースト・ステップ』は、スーパーヒーロー映画としての成功に必須な“キャラクターの魅力”と“物語の深み”を欠いた、表層的で記号的な作品だ。大きな期待を背負ってのリブートであるにも関わらず、その第一歩は軽薄で、今後の展開に期待を持たせる要素も乏しい。ヒーローものファンならば、「またか」と感じること必至の凡作であり、劇場で時間を割く価値は薄い。

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