Image:ElevenLabs

テキスト読み上げAI製品を開発するAI企業ElevenLabsは、会話型AIボットや音声翻訳ツールの開発も手がけている。同社が新しく発表したサービスは、生成した楽曲を「幅広く商業利用」できるとうたう、AI音楽生成ツール「ElevenLabs AI Music Generator」および「Eleven Music」だ。

「スタジオグレード」「多言語対応」「自然言語入力」「ナラティブトーン同期」といったキーワードが並ぶ同サービスのウェブページには、いくつかサンプル曲が用意されており、どのような音源が生成されるのか確認できるようになっている。

ただ、TechCrunchはこのサービスがサンプルとして紹介しているある楽曲で、ケンドリック・ラマーのメジャーデビューアルバムからの一節や、ほかにも Dr. DreやN.W.A.で聞き覚えのあるフレーズが出てくるのが不安な気持ちにさせると指摘もしている。もちろん、ここに挙げたアーティストらの楽曲は著作権で保護されている。昨年には、同様の問題でSunoとUdioが、全米レコード協会(RIAA)から訴訟も起こされている(現在はライセンス契約を結ぶ方向で協議中)。

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ElevenLabsの「Music Terms(楽曲使用における条件)」のページでは、「禁止される入力事項」として、アーティストや作詞家の本名や芸名、既存の楽曲およびアルバムのタイトル、音楽出版社やレーベルの名称、そして「特定の曲を参照することを意図していると判断できるような、曲の歌詞の重要な部分または明確な部分」を楽曲生成のプロンプトに入力してはならないと記している。穿った見方をすれば、これはそのようなワードを入力すれば、トレーニングに使用した関連の楽曲の断片が出力される可能性があるのではないかとも思えてしまう。

ElevenLabsは、主にインディーズミュージシャン向けにデジタル音楽著作権管理サービスを提供するMerlin NetworkおよびKobalt Music Groupとの契約を発表し、今後はこれらの素材でAIを強化学習させていくとしている。

両社の管理するアーティストにはNirvanaやBeck Hansenをはじめ、米国で活躍する日系シンガー・ソングライターのMitski、Carly Rae Jepsen、そしてChildish Gambino(俳優ドナルド・グローヴァーの音楽活動における名)らが含まれているという。

なお、これらの管理された楽曲は、アーティスト側が自発的に許可を出していなければ、AI学習のために使用することはできない。とはいえ、Kobaltの代表者はTechCrunchに対し「我々のクライアントは、この契約からいくつかの重要な点で直接的な利益を得ている。成長市場に新たな収入源が生まれ、収益分配が含まれるため利益を享受でき、著作権侵害や不正使用に対する強力な保護策が提供され、他の出版権や録音権保有者と同等の有利な条件が提供される」ようになっていると説明している。

ElevenLabsのサービスは、YouTubeやPodcastなどにBGMを付けたいと考えるユーザーにはありがたいものだろう。コンテンツが大量に生みだされ、大量に消費されていく現代インターネット界隈では、特に求められているものと言えるかもしれない。

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