ラッド ミュージシャン(LAD MUSICIAN)の、2025-26年秋冬コレクションを紹介。
2025-26年秋冬シーズンの着想源となったのは、グスタフ・マーラー(Gustav Mahler)の連作歌曲「亡き子をしのぶ歌」。デザイナー黒田雄一の敬愛する写真家ビル・ヘンソンが、「亡き子をしのぶ歌」をテーマに40年にわたって作品制作を行っていたと知ったことが出発点となっている。
マーラーの「亡き子をしのぶ歌」とは、ドイツの詩人フリードリヒ・リュッケルトが2人の子どもを相次いで亡くした悲しみを綴った428篇の詩の中から、5篇の詩を選んで作曲した連作歌曲。楽器から無理やり出すような音で奏でられる悲しみの旋律を、予定調和を拒み、自らの思いを激しいサウンドやノイズにのせるロックやパンクに重ね合わせた。
クラシック音楽でありながらも、その美的理想に抗うような音で構成される「亡き子をしのぶ歌」のように、静かでありながらもノイズを感じるようなデザインは、ニットに顕著に見て取れる。
カート・コバーンを彷彿させるレッド×ブラックのボーダーモヘアニットはボーダーの幅をあえて不揃いに。アーガイルのインターシャニットは従来の規則的な模様から部分的に逸脱させることで、わずかに歪んでいるような、不均一な柄に仕上げている。多彩な色の糸を混ぜたマルチカラーニットは、長めの起毛によって色の境目が曖昧になり、より幻想的な佇まいを見せている。
テーラードスタイルは、シャープな佇まいが散見された。テーラードジャケットやチェスターコートは、ラペルを薄く細めに仕立てることですっきりとした印象に。また、短めの丈でボクシーなフォルムに仕立てたショートジャケットや、流れるようなAラインシルエットのステンカラーコートも登場している。セットアップスタイルに合わせるシャツには、ネクタイが付属しているシルクニットシャツや、音楽家の佇まいを彷彿させるフリルボウタイブラウスが揃う。
一方、カジュアルなウェアは分量感を持たせたアイテムが目を引いた。ザンター(ZANTER)とコラボレーションしたダウンジャケットや、ベロアのトラックジャケット、さらりと羽織るフィッシュテールのブルゾンなど、空気を含むような程よいボリュームのアイテムが披露されている。
デニムパンツやチノパンには、新型バレルシルエットを採用。樽のように下に向かって重心を持たせつつ、裾で軽くテーパードさせた立体的な造形のワイドパンツだ。