ソニーグループにとって、アニメーションの重要性が急速に高まっている。
アニメ映画「鬼滅の刃」の最新作は、公開から10日間で国内興行収入が129億円に達し、日本映画として最速で100億円を突破した。長年の準備を経て完成したこの作品は、アニメ制作会社ユーフォーテーブルとソニーの音楽・アニメ制作リソースが巧みに連携した成果と言える。
ソニー・ピクチャーズアニメーションが手がけたネットフリックスのオリジナルアニメ「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」のサウンドトラックも好調だ。作品にインスピレーションを与えた実在のK-POPグループをしのぐ人気を見せている。
同作品に出てくる架空のガールズバンド「Huntr/x」による楽曲「Golden」がビルボード・グローバル200で首位を獲得し、賞レース前に大きな話題を呼んでいる。このサウンドトラックを扱うユニバーサルミュージックグループ(UMG)にとっても快挙だ。
しかし、最大の勝ち組は音楽事業を強化してきたソニーだ。同社の主力であるゲームやイメージセンサー事業が伸び悩む中で、音楽が堅実な収益源となっている。
音楽と鮮烈なアニメーション、引き込まれるストーリーを組み合わせ、さらにソニーの強力な配信ネットワークを加えることで、同社は現実世界と仮想空間でも新たなスターを次々と生み出している。
そこには、22歳の日本人アーティストAdoや人気デュオYOASOBI、Huntr/xのライバルとしてアニメに登場するバンド「Saja Boys」も含まれる。
鬼滅の刃の第1作「無限列車編」の主題歌で注目を集めたのは、シンガーソングライターのLiSAだ。ファンにとってその音楽は、吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)による原作漫画の中でも重要かつ心を打つ瞬間を象徴している。
最新作には、LiSAの「残酷な夜に輝け」とAimerの「太陽が昇らない世界」が使用され、この2曲は映画公開週にオリコン週間ランキングでそれぞれ2位と3位を獲得した。

「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」の初日(7月18日、TOHOシネマズ日比谷)
Source: Kyodo News/Getty Images
ストリーミングプラットフォームの後押しもあり、アニメは新たな人気の波に乗っている。そして、K-POPの先輩格でありながら、やや地味な存在にとどまっていたJ-POPの海外展開も勢いづいている。
潮流の中心
「アニソン」と呼ばれるアニメで使われる楽曲は、もはや単なる主題歌やテーマ曲にとどまらず、漫画の根底にあるメッセージを音楽として表現し、世界ツアーや音楽フェスを活気づけ、10代がドライブ中に何度も歌うような現象を生み出している。
ユニバーサルミュージック所属のMrs. GREEN APPLEは、そうした熱狂の後押しを受けた。このバンドが歌う「ライラック」は、青春の葛藤と希望を描く野球アニメ「忘却バッテリー」の主題歌として、ビルボード・ジャパンで1位を獲得した。
とはいえ、この潮流の中心にいるのはソニーだ。同社の邦楽部門は、YOASOBI(芸能界の裏側を描いた「推しの子」の主題歌を担当)や、Creepy Nuts(「マッシュル-MASHLE-」のユーモラスな世界観とマッチした「Bling-Bang-Bang-Born」で、幼稚園児までがラップを口ずさんだ)といった新星と次々に契約した。
そして、Adoはソニーが目指す方向性を示唆する。素顔を明かさず活動するAdoは、アニメ映画「ONE PIECE FILM RED」でキャラクター「ウタ」の歌唱パートを担当し、主題歌「新時代」でブレークした。
ソウル近郊でのコンサートにAdoのコスプレで訪れたファン、ジェーン・パクさんは「ONE PIECEの主題歌で彼女を知った」と言う。声が海賊を魅了するセイレーンのようだとし、「完全にハマった」そうだ。
Adoは現在、ユニバーサルミュージックとソニー傘下のアニメ配信サービス、クランチロールのサポートを受け、日本人ソロアーティストとしてはここ数年では最大規模となる世界ツアー「Hibana」に挑んでいる。
33都市を回るこのツアーは、観客50万人超の動員を見込んでおり、顔を隠したまま活動する歌手としては驚異的な数字だ。所属事務所クラウドナインの千木良卓也社長は、Adoのキャリアは今やアニメの枠を超えつつあると語る。
今は日本の音楽を海外の人たちが発見し、楽しむ時代だと言う同社長は、日本のクリエーターらはこのまま自分たちの個性を大切にしながら進んでほしいとエールを送った。
原題:Sony Bets Anime Will Help Its Music Go Platinum: Tech In Depth (抜粋)