2025年7月25日〜27日、新潟県・苗場スキー場で日本最大級の野外音楽フェス【FUJI ROCK FESTIVAL】が開催された。3日通し券と土曜の1日券は事前に完売し、前夜祭を含めて122,000人の観客が詰めかけた。1日目は、初来日のフレッド・アゲインが観客の心と身体を揺さぶる圧巻のライブ・セットで<GREEN STAGE>を巨大なダンスフロアへと変貌させ、2日目には同じく初の日本でのライブとなったヴルフペックが、独自のユーモアとグルーヴ感あふれる演奏で観客と共鳴。そして通算5回目の出演となるヴァンパイア・ウィークエンドが最終日のヘッドライナーとして、緻密で洗練された演奏でフィナーレを飾った。ここでは、3日間にわたる熱狂のステージを、撮り下ろしの写真とともに振り返る。
(Text: Billboard JAPAN l Photo: Hiroshi Yamaguchi [@hrc164] ※一部公式写真あり)
TOMOO
12:40~ @ RED MARQUEE
ECCA VANDAL
14:00~ @ WHITE STAGE
ブルーに染めたロングヘアにミニリンガーT、チェック柄のスカート、そしてイエローのタイツという、パンクとY2Kの精神を融合させた装いで現れたエッカ・ヴァンダル。南アフリカに生まれ、オーストラリアで育った彼女は、今年の春にリンプ・ビズキットのヨーロッパ・ツアーに帯同し、フレッド・ダーストとも共演。秋にはデフトーンズ主催フェスにも出演が決定している、ジャンルの垣根を軽やかに飛び越える異才だ。ライブは1曲目からアドレナリン全開。ギタリストとドラマーによる圧巻の生演奏をバックに、ハードコア、オルタナ、ヒップホップ、トラップといった異なるジャンルがシームレスに絡み合い、時に鋭く、時にしなやかに、次々と音の表情を変えていく。疾走感と爆発力を備えたロック・チューン「BLEED BUT NEVER DIE」から、スカ・カルチャーへのオマージュ「CRUISING TO SELF SOOTHE」、そして低音に包まれたダークなヒップホップ・ナンバー「THEN THERE’S ONE」と、電子音と生音の緩急を巧みに操りながら、観客を引きつけて離さない。「日本に来ることが、長い間私の夢でした。そしてその最初のショーがフジロックになったことが光栄です!」と、嬉しそうに語ったMCも印象的で、クールな佇まいの裏に素直な感情が垣間見えた。ラストは、エッカのエモーショナルな歌声と、ブレイクビーツが織りなすトライバルなリズムが熱狂を巻き起こし、フィジカルなエネルギーに満ちた、唯一無二のライブ体験が幕を閉じた。
MDOU MOCTAR
15:50~ @ WHITE STAGE
砂漠の伝統と現代ロックが交差する圧巻のステージングで魅せてくれたのは、ニジェール共和国出身の遊牧民族・トゥアレグ族にルーツを持つエムドゥ・モクター率いる4人組バンドだ。“砂漠のジミヘン”とも称される彼は、トゥアレグ音楽特有のスケール感とサイケデリックな即興演奏を見事に融合させ、1曲目の「Kamane Tarhanin」から観客を一気に音の渦へと引き込んでいく。エムドゥの奔放かつ超絶技巧なギタープレイに呼応するメンバーたちも、実力派ぞろい。ライブ直前には4人で本格的なリハーサルを行っていただけあり、緻密で息の合ったアンサンブルが繰り広げられた。中盤では、アルバム『フューネラル・フォー・ジャスティス』から、カントリー的なニュアンスがほのかに漂う「Imajighen」や、ソウルフルなギターフレーズが情感豊かに響く「Imouhar」を披露。荒涼とした風景を想起させる旋律と、燃えるようなリズムが溶け合い、観る者を音の旅へと誘う。ラストには、エムドゥ自身がふたたびステージ前方へと降り、観客の中に歩み入りながら笑顔でギターを奏でるという、サービス精神あふれる一幕も。言葉が通じずとも、その情熱とエネルギーは確かに伝わってきた。稀有な才能と力強さを併せ持つアーティストの記念すべき初来日パフォーマンスとなった。
HYUKOH & SUNSET ROLLERCOASTER|AAA
17:00~ @ GREEN STAGE
PERFUME GENIUS
18:00~ @ RED MARQUEE
OK Go
19:40~ @ WHITE STAGE
約10年ぶりとなるニュー・アルバム『アンド・ジ・アジェイサント・ポッシブル』を引っさげて、OK Goが11年ぶりにフジロックに帰還。フロントマンのダミアンが放った「オツカレサマデース、ジャパン!」というひと言が場内の熱気に火をつけ、「This Too Shall Pass」で勢いよくライブが幕を開けた。中盤にはダミアン自ら客席へと降り立ち、観客に向かってダイブを敢行。冒頭からテンションは最高潮に達し、会場全体が一体となって沸き立つ。その勢いのままに、彼らの名を世に知らしめた初期の代表曲「Get Over It」へと突入。耳に残るメロディが心地よい「Take Me With You」や「A Good, Good Day at Last」、今回の来日に同行しているというメンバーの妻たちに捧げられた「Better Than This」など新作からも惜しみなく披露され、彼らの最新モードがしっかりと示された。曲間には、日本を意識したと思われる胸元に赤い丸をあしらったTシャツを着たダミアンが、観客との積極的なやりとりを展開。「好きな日本食は?」「Tシャツは会場限定のグッズなの?」「留まることはないの?」といった、ユーモアあふれる観客からの質問にも丁寧に答える姿からは、彼の人懐こさとお茶目な魅力がにじみ出ていた。そしてラストには、初期のヒット曲「I Won’t Let You Down」「Here It Goes Again」を立て続けに放ち、ストイックさとエネルギーを兼ね備えたパフォーマンスで<WHITE STAGE>初日のトリ前を華やかに彩った。
EZRA COLLECTIVE
21:45~ @ FIELD OF HEAVEN
Fred again..
22:45~ @ GREEN STAGE
機材トラブルにより予定から1時間半開始が遅れたが、そんな待ち時間もすべてが報われるような圧倒の日本初ライブだった。赤く染まったステージに、どこか儚くも壮大な「Kyle (i found you)」のイントロが静かに流れ始める。スクリーンには、日本語と英語での自己紹介とこれが日本での初めてのライブであるとのメッセージが映し出される。続けて「glow / ten」のポップなマッシュアップ、妹への想いを込めたという「adore u」が優しさとともに響き渡り、観客の感情を次々と揺さぶる名曲の数々が休む間もなく投下されていく。フレッド自身がドラムで力強いビートを打ち鳴らした「Victory Lap」では、メインステージから飛び出し、PA前のBステージへと疾走。ハイテンションにMPCを操りながら、「Jungle」「Rumble」といったトラックで畳みかけ、粋なサプライズに観客のテンションは一気に最高潮へ。再びメイン・ステージに戻ると、ジョイ・アノニマスのヘンリーが登場し、「peace u need」でソウルフルなボーカルを響かせる。硬軟織り交ぜたようなセットの緩急は、まさにフレッドの手腕のなせる技だ。「leavemealone」以降は、今回のツアーから新たに加わったドラマー、リンダ・フィロメーヌ・ツォンギが加わり、さらに音像が厚みを増していく。彼女のダイナミックなビートが彩りを添えた「Danielle (smile on my face)」、観客のスマホライトが無数の星のように瞬いた「Angie (i’ve been lost)」は、いずれもこの夜を象徴する名場面となった。ラストは再び「peace u need」。リフレインに合わせて会場全体がシングアロングを繰り広げ、一体感が苗場の山々を包み込む。「フレッド!」という歓声がこだまするなか、フレッド、トニー、フィロの3人は、満面の笑みを浮かべながらステージを後にした。内省的なストーリーテリングと規格外のスケールが交錯し、喜び、悲しみ、エネルギー、ノスタルジー――あらゆる感情が波のように押し寄せる、目まぐるしくも美しい90分間の旅だった。
CA7RIEL & PACO AMOROSO
11:00~ @ GREEN STAGE
生バンドが織りなす一糸乱れぬグルーヴィーな演奏に呼応するように、漆黒のモードな“ヤドカリ”のような衣装を纏ったカトリエルと、ピンクのポルカドット柄の空調服をまとったパコ・アモロソが、ゆっくりとステージに姿を現す。2人がセンターに並び立った瞬間、無数の火柱が空高く噴き上がり、<GREEN STAGE>は一気に祝祭の幕を開けた。割れんばかりの歓声が渦巻くなか、「DUMBAI」のイントロが鳴り響くと、会場は早くも巨大なダンスフロアへと変貌。ステージ左右のスクリーンにはカラオケさながらに歌詞とその対訳が映し出され、くすくすと笑いながらリリックを読む観客の姿も新鮮。前半は椅子に腰かけながら、スモーキーでメロウな「BABY GANGSTA」や「MI DIOSA」など、中毒性の高いキラーチューンを惜しみなく披露。「MI DESEO/BAD BITCH」でのカトリエルが奏でた奔放ギター、歯切れよく言葉を畳み掛けるパコの高速ラップなど、バンド・メンバーたちも含めた全員のスキルと遊び心が渾然一体に。「La que puede, puede」で2人が立ち上がると、舞台上を縦横無尽に駆け巡り、身振り手振りで観客をあおっていく。それぞれのソロ・コーナーを挟みつつ、ファンキーなベースラインにシンクロした2人のコーラスが苗場の山々に響き渡った「#TETAS」、2人の友情を称える「EL DÍA DEL AMIGO」と続き、白煙が吹き荒れるなか、「EL UNICO」で壮麗なクライマックスを迎えた。途中パコが、英語で「日本に来るのは生涯の夢だった。やっと来れたよ!」「心の底からサンキュー」と嬉しそうに話し、「また戻って来る」と連呼していたが、<GREEN STAGE>最前列から後方まで、観客が一体となって踊り、笑い、揺さぶられた彼らのライブをまた体感できる日が待ち遠しくてならない。
jo0ji
11:30~ @ RED MARQUEE
離婚伝説
12:40~ @ RED MARQUEE
YHWH NAILGUN
14:00~ @ RED MARQUEE
STUTS (Band Set)
15:00~ @ GREEN STAGE
FAYE WEBSTER
15:50~ @ WHITE STAGE
フジロックならではの大雨の洗礼を受けながら向かった、昼下がりの<WHITE STAGE>。最新アルバム『アンダードレスト・アット・ザ・シンフォニー』ツアーのテーマにちなんで、背景にはコインランドリーを模したビジュアルが。その最新作から「But Not Kiss」で静かに幕を開けると、フェイ・ウェブスターの歌声とバンドの繊細なアンサンブルが、霧のように会場に広がっていく。「Side of My Neck」ではバイオリンの儚い音色が切ない物語を紡ぎ出し、「Jonny」ではフェイがハンドマイクを手に、まるで内緒話をするかのように観客に語りかける。その歌声は、抑制された情熱と静けさを併せ持ち、バンドの技巧と溶け合いながら、淡々と確かな温度で心に染み入ってくる。多くを語らず、目を閉じて歌うことの多いフェイだが、「Overslept」ではサプライズで登場したmei eharaと寄り添うように歌唱。meiの肩にそっと顔を預けるフェイの姿には、自然と笑みがこぼれた。さらに、「一番の仲良し」と紹介したベースのヌヌことNoor Khanとは、「Feeling Good Today」で仲睦まじいデュエットを披露。そして浮遊感と郷愁をたたえた「Kingston」では、ペダルスティールの柔らかな音色が空気をやさしく包み込み、静けさの中に祝祭感がにじむクライマックスを迎えた。
JAMES BLAKE
17:00~ @ GREEN STAGE
雨が降りしきる中、ジェイムス・ブレイクが<GREEN STAGE>に姿を現した。ドラマーとギター&シンセサイザーのサポートを迎えた3人編成で、「Fall Back」からライブがスタート。歯切れのいいタイトなビートで、会場は瞬く間に熱気に包まれた。立て続けに演奏された「Overgrown」では、美しい旋律とともに彼の柔らかなボーカルが響き渡る。「雨の中来てくれてありがとう。」と集まった観客へ感謝が伝えられると、重厚なシンセが轟く「Life Round Here」、澄んだピアノと地を這うようなベースが織りなす初期の名曲「Limit to Your Love」などが披露され、ダイナミックで繊細なサウンドに会場全体が深く酔いしれた。観客のシンガロングが響いた「Say What You Will」から最新曲「Like The End」へと続き、それらの演奏が終わると、まるで彼が呼び寄せたかのように雨が止み、晴れ間が差し込んできた。その後、「Tell Me」「Voyeur」でアグレッシブな展開が繰り広げられると、ラストを飾ったのは珠玉の名曲「Retrograde」。優しさと力強さが交互に押し寄せる、至高のエレクトロニック・ミュージックに圧倒されたステージだった。
GINGER ROOT
18:00~ @ RED MARQUEE
山下 達郎
19:00~ @ GREEN STAGE
Photo: 能美潤一郎
<GREEN STAGE>は過去最大クラスの動員だったのではないだろうか?2日目の会場を襲った大雨が上がった頃、青シャツと黒ニット帽といういつもの姿で山下達郎がステージに現れた。超大歓声で迎えられる中、新曲「MOVE ON」をショート・バージョンでセッションし「SPARKLE」へ。国籍も世代も違う音楽ファンが一斉に歓声をあげた。近年の国内外シティ・ポップ・ブームの中、50周年を迎えた彼にとって初のフジロックだ。注目度は今年の出演者でも群を抜いていた。「あまく危険な香り」「ドーナツ・ソング」「僕らの夏の夢」など名曲が並ぶ中、『こんなセッションできるか?』とこの後に控えるヴルフペックへの挑戦状のような「SILENT SCREAMER~BOMBER」メドレー・セッションは熟練の大御所たちとは思えないパワフルで、ある意味大人気ない(笑)パフォーマンスだった。
ライブのハイライトとなったのはサプライズ・ゲストとして竹内まりやも登場した「プラスティック・ラヴ」だろう。撮影禁止とアナウンスされていたが、SNSには貴重すぎるシーンにカメラを向けざるを得なかった人々の記録が多数アップロードされ、ネットでも話題をさらっていた。このあとも「RIDE ON TIME」、「恋のブギ・ウギ・トレイン」、「アトムの子」が披露され、締めくくりは「さよなら夏の日」でフィナーレ。
近年多数の国内フェスに参加してきた山下達郎が、50周年を迎え海外アーティストも多数出演するフジロックへ出演したことは、“シティ・ポップ”というジャンルのアイコンになってしまった彼と、その楽曲をたちを祝福する一夜の記憶だけではなく、国内外のフェスにおける日本人アーティストの存在感を押し上げ、新旧ファンやクリエイターたちに新たな影響を与えることとなっただろう。
BARRY CAN’T SWIM
19:50~ @ WHITE STAGE
UK発のDJ/プロデューサー、バリー・キャント・スウィムが初来日でフジロックの舞台に登場。真っ赤なライトのもと、スリリングなサウンドが響き渡り、「The Person You’d Like To Be」で幕を開けた。開演を告げる1曲目から、早くも観客のボルテージは全開。続いて、アシッドベースがうねる「About To Begin」、ディスコやファンクの精神が息づく「Kimbara」が投下されると、会場は熱狂のダンスフロアと化した。彼自身もフロアの熱気に呼応するように、「Like It’s Part Of The Dance」「Kimpton」などのダンサブルな楽曲を次々と繰り出す。多彩な音色と巧みなボーカルサンプリングが絡み合い、エモーショナルな旋律へと昇華。彼が紡ぎ出すそんなサウンドが、まさに心地よさとエネルギーを生み出していた。ライブ後半も、「Still Riding」や「How It Feels」のグルーヴで揺れ続けるオーディエンス。「Different」では、身体の芯まで響く重低音が会場の熱気をさらに高めた。そして最後は、エキゾチックなハウストラック「Sunsleeper」でフィニッシュ。木々に囲まれた<WHITE STAGE>は何とも言えない多幸感に満ち溢れていた。
VULFPECK
21:10~ @ GREEN STAGE
待望の初来日、2日目のヘッドライナーとして登場したのはヴルフペック。ドラムが鳴り始めると大歓声が巻き起こり、ポップで人懐っこい代表曲「Animal Spirits」でスタートを切った。すると立て続けに、ファンキーなインスト曲「Cory Wong」「Daddy,He Got a Tesla」へ。歯切れのいいギターカッティングにパワフルなサックス、そしてリズミカルなドラム&ベース。すでに会場は一体感を見せ、観客そしてメンバー誰もが満面の笑みを浮かべていた。リード・ボーカルとしてアントワウン・スタンリーを迎え、ソウルフルに演奏された「1612」「3 on E」「Wait For The Moment」。途中に寸劇を交えながら、最高のエンターテインメントを見せてくれた。さらに特別ゲストとしてマヤ・デライラが登場し、「Tokyo Night」を披露。続いて、美しいコーラスが織りなすポップソング「Big Dipper」「Matter of Time」が奏でられ、会場の幸福感はさらに増していく。終盤、「New Beastly」では、ウッディ・ゴス(key.)がリズムに合わせてカウベルを鳴らすユーモラスなパフォーマンスが会場を沸かせ、甘酸っぱいファンクナンバー「Back Pocket」が本編ラストを飾った。アンコールでは観客の大合唱を受けて、ジョー・ダート(Ba.)のベースが光る至極の人気曲「Dean Town」を演奏。そしてまさかのダブルアンコールで「Funky Duck」を最後に披露した。超絶テクニックが生み出す最高のグルーヴのもと、全員が主役のステージを繰り広げたヴルフペック。彼らがステージを去った後も、現場には温かな幸福の余韻が漂っていた。
RED HOT CHILLI PIPERS
11:00~ @ GREEN STAGE
MONO NO AWARE
12:30~ @ WHITE STAGE
SILICA GEL
14:20~ @ WHITE STAGE
韓国の音楽シーンで勢いのあるバンドの一つ、Silica Gelを見ようと多くの人が集まった<WHITE STAGE>。フジロック初出演となる彼らのライブは、ヒット曲「NO PAIN」からスタートし、サビではシンガロングが巻き起こり、早速会場を大いに盛り上げる。続く「9」「sister」と、心地よいシンセサウンドにオーディエンスも体を揺らしていた。MCでは、チェ・ウンヒ(Ba)が日本語で、「子供の時からバンドが好きで、この景色が私の夢でした。そして今、目の前にいる皆さんは私の夢そのものです。皆さんは私の夢です」とフジロックに出演したことへの思いを語る場面もあり、バンドの夢が叶う瞬間に込み上げるものがあった。ラストは「T + Tik Tak Tok」でこれでもかというほどの唸るバンドの音圧を響かせ、約1時間のステージが終了。日本での公演も予定していると話していたが、彼らの熱量満点の演奏が早くも待ち遠しくなるステージだった。
Creepy Nuts
15:00~ @ GREEN STAGE
LITTLE SIMZ
17:00~ @ GREEN STAGE
Photo: Daiki Miura
広大なステージを1MC+1DJで大いに盛り上げたCreepy Nutsの後に登場したリトル・シムズは、<GREEN STAGE>でフジロックデビューを飾った。こちらはギター、ベース、ドラムのバンドスタイル。スモークをくぐり抜けて登場した英ラッパーを多くの観客が迎え、バンドとマイクフローが一音一音噛みあう「Thief」「Flood」で一気にオーディエンスを虜にした。観客と呼吸を揃えるようにコール&レスポンスを積極的に取り込み、自由ながら一体感がMCのリードによって生まれた。頭角を表した2021年以降、アワードや大型フェスの出演の常連となり、仕事仲間との金銭トラブルに見舞われながらも、新作『ロータス』も完成させた。心が叫びたがっていることはマイクを通して発言する――「他人の意見なんて気にならない、それが私のスーパーパワー」と高らかに歌う「Lion (feat. Obongjayar)」に象徴されるように、心臓に毛が生えたような彼女のタフな精神は、今なお少数派である女性ラッパーたち、オーディエンス、そして彼女自身にも大きな希望を与えた。
RADWIMPS
19:00~ @ GREEN STAGE
4年ぶりのフジロック出演となるRADWIMPSが、だんだんと暗くなってきた<GREEN STAGE>に登場。連続テレビ小説『あんぱん』主題歌「賜物」で華やかに幕を開けると、「もう楽しいな、もう楽しいな」と嬉しそうな様子の野田洋次郎。「NEVER EVER ENDER」「ます。」「DARMA GRAND PRIX」と怒涛の勢いでステージが展開されていく。「まだ夏は始まったばかりだけど、この夏を思い出すような一曲を」というMCの後に披露された「セプテンバーさん」では、<OH セプテンバー>とシンガロングが巻き起こり、会場全体が一体感に包まれる。そして、暗闇の中でピアノを弾く洋次郎を一筋のスポットライトが照らし披露された「三葉のテーマ(Short ver.)」、観客のスマートフォンのライトが会場全体を星空のように照らした「スパークル」の美しさと言ったら。血沸き肉躍るファンクネスさと繊細さを兼ね備えた唯一無二の演奏の数々に、RADWIMPSの真髄を見たような気がした。最後は、「フジロックのために用意した曲」という、2021年のコロナ禍の夏に“少しでも気持ちが晴れやかになるような夏のアンセムを届けられたら”と制作された「SUMMER DAZE」でライブは締めくくられた。今年メジャーデビュー20周年を迎えたRADWIMPSの、20年間の名曲が放たれた忘れられない夜となった。
羊文学
20:10~ @ WHITE STAGE
燃えるような赤が今の羊文学の色なのだろう。すっきりと束ねた髪型にブリーチした眉が、がっつりとアイラインを濃く引いた塩塚モエカ(Vo.)の目を一段と際立たせていた。河西ゆりか(Ba.)も髪をレッド系に染め、時に静かに、時に雄大にベースを弾く姿は遠くから見てもわかるほど“カッコいい”。MC少なめの小一時間のショーは、そんな二人のプレイに終始感心しながら過ごす時間に。内なる言葉を、顔をゆがめながら発する塩塚の目を見ていると、「ねえ、ちゃんと私の話、聞いているよね?」と確認されているような錯覚に陥った。「光るとき」「FOOL」「祈り」で孤独や自分に向き合うことになり、少し胸が痛んだ。「more than words」には突き刺さる言葉がたくさんあり、パフォーマンス以上の言葉の力を感じた瞬間でもあった。肩にセミが止まるハプニングに見舞われながらも歌うことを止めなかった塩塚に拍手!
VAMPIRE WEEKEND
21:10~ @ GREEN STAGE
3日目のヘッドライナー、ヴァンパイア・ウィークエンドが<GREEN STAGE>に登場。まずは、エズラ・クーニグ(Vo./Gt.)、クリス・バイオ(Ba.)、クリストファー・トムソン(Dr.)の3人で、「Mansard Roof」「Holiday」からライブをスタートした。エズラが「ただいま、フジロック!」と挨拶し、「Ice Cream Piano」へ。すると後ろの幕が下り楽器隊が登場。サポートメンバーも合わせた8人で苗場の山々に豊かなサウンドスケープを響かせていった。「Classical」では間奏でダンスも披露され、楽曲の美しさに浸り、「Sympathy」ではサポートメンバーのイザベルが滑らかなヴァイオリンのソロを披露、「A-Punk」や「Oxford Comma」といった代表曲も放ち、エネルギー溢れるナンバーがテンポよく続いていく。「一緒に歌ってほしい」と話し披露されたラストソングは、最新アルバム『オンリー・ゴッド・ワズ・アバヴ・アス』から「Hope」。ラストの間奏ではサポートメンバーが一人ずつステージを去り、最後はクリス・バイオが残ってベースを弾き続けるという演出で、貫禄のあるラストを飾った。
HAIM
22:10~ @ WHITE STAGE
ハイム3姉妹が11年ぶりに日本のステージに登場すると、<WHITE STAGE>は歓声とともに人の波が激しくうねった。6月に出たばかりの5年ぶりのアルバム『アイ・クイット』を中心としたステージで、3人の(特に元恋人に対する)恨みつらみや自己肯定が前向きな音楽へ昇華されていた。「考えすぎるのも必要もなく謝るのも、仕事も恐れも批判も全部気にするのをやめた(quit)!」――吹っ切れた3人が歌詞やサウンドにリアルライフをぶちかましながら進んでいく様子は、大音量も相まって見ていてとてもスカッとした。この日は、次女ダニエルが日本でドラムを初めて演奏する姿を目撃するスペシャルな日に。自由を謳歌しながらも、終盤に復縁を望む「Want You Back」が入り「人間やっぱりすぐには変われないよな~」なんて思ったが、「Down to be wrong」で締めるという秀逸性も◎。たとえ相手から自分が間違っていると思われても、そうとは思わず、自分の信念を貫くことを歌った自己尊重のアンセムに、オーディエンスも大賛成かのように大合唱。3人が届けた久々のパフォーマンスは、ただの再来日ではなく、逆境を越えた彼女たちの強さの証だった。
【FUJI ROCK FESTIVAL ’25】
2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
INFO: http://www.fujirockfestival.com/