
「ソニック」シリーズの音楽を、原曲とは異なるかたちで楽しむことができるライブイベント「SONIC MUSIC EXPERIENCE」が、7月12日に東京・高田馬場ESPエンタテインメント東京 12号館ホール(Club 1ne 2wo)で開催された。前半のパートでは「ソニック」シリーズのサウンドディレクターを務める大谷智哉がDJセットで楽曲を披露、後半のパートではシリーズのサウンドディレクターでギタリストの瀬上純がトリオ編成のバンドSonic Adventure Music Experience(S.A.M.E.)を率いて、『ソニックアドベンチャー』シリーズや『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』のゲーム内インストゥルメンタル楽曲をバンドアレンジで演奏。ゲストも登場して会場を沸かせた。
まずはサウンドディレクター・大谷智哉改めTomoya Ohtaniがステージに登場し、「Cyber Space 4-1: Exceed Mach」を繰り出すと、会場にはトランスのビートに合わせてクラップが鳴り響いた。「よろしくお願いします。盛り上がっていきましょう!」と大谷。グッズのタオルを首にかけた観客は、ステージの大谷に向けてブレードを揺らす。曲が切り替わるたびに会場は歓声で沸き、大谷が両手を広げると一気にビートが加速するなど、まるで指揮者のようにサウンドを操り、会場のボルテージもどんどん高まっていった。観客は曲によってはかけ声を上げ、さながらロックアーティストのライブのようだ。

「ソニック」シリーズの楽曲は、ロックやEDMばかりではない。軽快なブラスのサウンドが心地いいジャズ調もあるなどバリエーションの豊富さに驚かされる。そのディスコファンクナンバー「Hi-Spec Robo Go! – Hard Boiled Heavy Boss」は、大谷がDJ機材のツマミを回してハイパーなクラブチューンに変身。新たなアレンジを、その場で次々と生み出していった。

また会場をピンクのライトが照らした「Super Sonic Racing」には会場が大歓声で沸き、女性ボーカルのメロディをみんなで大合唱。曲中で大谷が「ここで問題です。今流れているのは『Super Sonic Racing』ですが、9月に発売するソニックシリーズ最新作は何でしょう?」と、突然のクエスチョンタイム。しかし観客は迷う様子もなく「『ソニックレーシング クロスワールド』!」と新作タイトルを叫んで会場が一つになった。

「Nowhere to Run – Prison Hall」では印象的なメロディのシンセのイントロが流れるとワッと沸いた会場。ロックチューン「Theory Of Attack」では曲中で「次の曲が最後になります。みんなドゥームパワーを手に入れたいか! ドゥームパワーが欲しいか!」と声をかけ、『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』の「Doom Zone」、続けて「Undefeatable」のヴォーカルトラックを加えたマッシュアップ・トラックへと変化し、アッパーのビートに観客は大興奮のままDJ SETのパートを終了した。

次にギタリスト瀬上純のインストバンド・Sonic Adventure Music Experience (S.A.M.E.)が登場し、「Seaside Hill : Act 2」の爽快でキャッチーなメロディをギターサウンドで再現した演奏に観客は沸き立った。スクリーンにはソニックが走る映像が映し出され、曲の終わりではソニックがブレイクダンスをする映像で楽曲を盛り上げた。

最初のMCでは「すごく久しぶりの開催。S.A.M.E.でございます。お待たせしました、ただいま!」と瀬上。ドラムのAkht.は「前回が2019年のロンドン公演以来。ここまで5年半、だいぶ長かったですね。S.A.M.E.は2016年に始まり、来年10周年です」とコメントすると、「なのにライブはまだ7回目(笑)。ここに居合わせてくれたみなさんは貴重です」と瀬上。長年連れ添った相方のように、絶妙な呼吸で繰り出されるユーモアあふれる掛け合いトークに、会場には笑い声があふれる場面もあった。

ベースの種子田健
「Choose Your Buddy!」は「次の曲はS.A.M.E.でやってみたら面白いんじゃないか? 一回合わせてみようと、初めてやった曲です」と紹介。グルーヴィーなビートが会場に響き渡るなか、黙々と、しかし楽しそうに演奏したメンバー。続いて演奏した「Welcome to Station Square」は、ポップなメロディラインが印象的。スティックを回しながら演奏するAkht.が生み出す、跳ねたビートに観客は体を委ねて揺らす。

楽曲演奏と解説を交えたトークを繰り返しながら進行したライブ。「S.A.M.E.というプロジェクトは基本的にゲームのインスト曲をプレイするんだけど、なかにはこのライブでしかやらないアレンジも存在していて、たとえば「This Way Out」は最後に少し付け加えられていたりするんですよ」と瀬上。「次の曲は、バンドでやってみたら『エメラルドコースト』(のBGM)っぽくなるんじゃないかと。何の曲か想像しながら聴いてください」と言って、『ソニックスーパースターズ』から「Bridge Island Zone」[S.A.M.E. Version]を演奏した。シンセのポップな音色をギターに置き換えて演奏し、実に爽やかなフュージョンアレンジで同曲を披露。観客はうれしそうに横に揺れながら楽曲を楽しんだ。
その後、瀬上は赤と黒の『ソニック × シャドウ』カラーのギターに持ち替え、『ソニック × シャドウ ジェネレーションズ』から「Rail Canyon: Act 1」や「Sunset Heights: Act 1」を連続で演奏。ロックバンド特有の泥くささのある熱いハードロック調のサウンドが次々と披露されると、観客は頭を揺らし歓声を上げながら楽曲を楽しんだ。S.A.M.E.ならではのヘヴィ&ダークなアレンジは、ここでしか聴けない実に聴き応えがあるものだった。

S.A.M.E.はSNSを通じてファンからリクエストを募集することもあるそう。「ちなみに『シャドウ』の曲でリクエストが多かったのは、『ラジカルハイウェイ』と『スカイレイル』の曲です。でも今日は『ラジカルハイウェイ』はやりません!」と瀬上が言うと、観客は「え〜!」と残念そう。しかし「『スカイレイル』はやります!」と先にネタバレし「言っちゃった!」と、少し照れくさそうに笑った瀬上に、観客は温かい拍手と笑いを贈った。その『スカイレイル』ステージの楽曲「Mr. Unsmiley」を演奏すると、観客は大歓声を上げ、メタル調のサウンドに大興奮。

シャドウが渋谷スクランブル交差点に降り立つステージ冒頭のワンシーンを映しながら演奏したのは、「Tokyo [Westopolis Remix]」。ドキドキするような高揚感、ヒリヒリするようなソリッドさ。シャドウたちが繰り広げる激しいバトルが目の前に広がるような演奏だ。まるでサイレンのようにシンセ音が鳴り響いて始まった「Run Through the Speed Highway」、メランコリックなメロディが印象的な「Keys the Ruin」では、各パートが熱いソロ演奏を戦わせ、丁々発止でセッションのようにプレイを繰り広げる。
ライブ終盤にはゲストが登場して、ファンを楽しませた。まずはサックスの中村有里が呼び込まれ、跳ねたビートの「Be Cool, Be Wild and Be Groovy」を、体をスウィングさせながら、ソウルフルに演奏した。その中村と瀬上が、ステージの中央で向かい合って演奏したシーンも印象に残った。その曲については、「90年代後半に作った曲で、ステージ上で実際にサックスプレイヤーと演奏したらきっとかっこいいだろうなと思っていたので、当時の夢が叶いました」と瀬上。
続いて、ガールズメタルバンドHAGANEのギタリスト・Sakuraが登場。瀬上とのツインギターで「On the Edge」を披露し、SakuraはトレードマークのフライングVでソロパートを演奏。再び中村を呼び込み、ドラム、ベース、ツインギターにサックスという豪華な編成で演奏したのは、「That’s the Way I Like It」だ。瀬上、Sakura、中村が次々とソロ演奏をバトンタッチする様子に観客は、大興奮で拍手を贈りイベントの幕を閉じた。

最後は出演者全員が揃って挨拶し、「また、そう遠くないうちに必ずやりますので、次のライブもお楽しみに!」と瀬上。
好奇心の赴くままに、バラエティ感あふれる「ソニック」楽曲をバンドアレンジ。「ソニック」楽曲の魅力を、何倍にもしてお届けするS.A.M.E.のライブ。集まった観客は、「あの曲がこうなるの!」「この演奏はあの曲だったのか!」と、ドキドキワクワクしながら予測不可能なライブを楽しんだ。前半戦も後半戦も“ソニック愛”にあふれた、実に心地いい時間と空間を共有したイベントとなった。
■セットリスト
「SONIC MUSIC EXPERIENCE」
2025年7月12日(土)東京・高田馬場ESPエンタテインメント東京 12号館ホール(Club 1ne 2wo)
<DJ Tomoya Ohtani>
01. DJ Opening
02. Cyber Space 4-1: Exceed Mach
03. Fading World – Imperial Tower [Remix]
04. Metropolitan Highway [Remix]
05. Hi-Spec Robo Go! – Hard Boiled Heavy Boss
06. Honeycomb Highway [Rebuild] feat. Back 2 Back
07. Cyber Space 4-F: Hype Street Remix
08. Cyber Space 4-I: Time Flyer Remix
09. Super Sonic Racing – Cash Cash Vs. Jun Senoue RMX
10. Grenn Hill Zone (Banvox Version)
11. Cyber Space 1-2: Flowing
12. Nowhere to Run – Prison Hall
13. Theory Of Attack
14. Vengeance Is Mine – SXSG Extra Remix
15.Doom Zone × Undefeatable [Mash Up]
Video Editor: KIKUZO
<Sonic Adventure Music Experience>
01. Seaside Hill : Act 2 (Sonic Generations – Seaside Hill)
02. This Way Out (Sonic Adventure 2 – Prison Lane)
03. Choose Your Buddy! (Sonic Adventure – Character Select)
04. Welcome to Station Square (Sonic Adventure – Station Square)
05. Bridge Island Zone [S.A.M.E. Version] (Sonic Superstars)
06. Won’t Stop, Just Go! (Sonic Adventure 2 – Green Forest)
07. Rail Canyon: Act 1 (Shadow Generations – Rail Canyon)
08. Sunset Heights: Act 1 (Shadow Generations – Sunset Heights)
09. Mr. Unsmiley (Sonic Adventure 2 – Sky Rail)
10. Space Colony ARK: Act 1 (Shadow Generations – Space Colony ARK)
11. Tokyo [Westopolis Remix] (Shadow Generations – Tokyo)
12. Run Through the Speed Highway (Sonic Adventure – Speed Highway)
13. Keys the Ruin (Sonic Adventure 2 – Pyramid Cave)
14. Be Cool, Be Wild and Be Groovy (Sonic Adventure – Ice Cap)
15. On the Edge (Sonic Adventure 2 – Eternal Engine)
16. That’s the Way I Like It (Sonic Adventure 2 – Metal Harbor)
ライトフライヤースタジオのスマホRPG『アナザーエデン』のサウンドチームから派生したバンド、「EDEN’s CLINE(エデンズ…