ジャニー喜多川の「性加害事件」の“真相”をよく知る2人の本が出た。
一冊は旧ジャニーズ事務所社長だった藤島ジュリー景子氏(以下ジュリー氏)が上梓した『ラストインタビュー 藤島ジュリー景子との47時間』。版元は何と新潮社である。
もう一冊は国民的アイドルグループといわれた「嵐」の二宮和也の『独断と偏見』(集英社新書)。
まずはジュリー氏の本からいこう。
新潮社の名物編集者で重役の中瀬ゆかり氏がこのジュリー本の出版に絡んでいるようだが、正直、新潮社がこのような本を出したのには驚いた。
週刊文春ほどではないが、週刊新潮も旧ジャニーズ事務所とは距離をおいていたはずだった。2001年8月に休刊したが写真週刊誌の先駆であるFOCUSが、旧ジャニーズ事務所のタレントたちのスキャンダルを何度も報じていたから、そう思われても当然だった。
ジャニー喜多川の性加害問題が発覚した時も、新潮らしい切り口で何度も取り上げ、批判していたのに、なぜ?
疑問は本を読んでわかった。ジュリー氏と中瀬氏は親しかったのだろうが、当初、どうしてもこの本を新潮社から出そうという気はなかったようだ。
世間の反感を買った謝罪動画
インタビュアーは小説『イノセント・デイズ』などで知られる作家・早見和真氏(48)だが、彼はこの話を一度、文春の竹田聖編集長に持っていっているのだ。もちろん竹田編集長も大乗り気で、週刊文春で連続インタビューしようといってくれたようだ。
詳しい経緯は省くが、その話がだめになり、新潮社から出すことになったようだ。もし、これが文藝春秋社から出ていれば、随分違った本になっていただろうと思うと残念である。
大体、ジュリー氏が本当のことをいうわけはない。いえば、彼女の身の破滅になる。
2023年5月14日、ジュリー旧ジャニーズ事務所代表取締役は「ジャニー喜多川の性加害事件」について「謝罪動画」を公開し、同時に公表した文章にこう書いていた。
「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」
何も知らなかったのだから、どんなに批判されても答えようがない、という開き直りともとれる物いいが、更なる批判を招いたことは記憶に新しい。
だがこの本は、その言葉を裏付けるためのアリバイ本といっていいだろう。ほとんどのページが、「知らなかった」で貫かれているのだ。