
『ISHIYA私観ジャパニーズ・ハードコア30年史』(blueprint)
FORWARD / DEATH SIDEのボーカリスト・ISHIYAによる書籍『ISHIYA私観ジャパニーズ・ハードコア30年史』(blueprint)の番外編として、同書に登場するアーティストとISHIYAが対談する新連載。
第二回は、1987年に関西ハードコア・メタルコアシーンに登場し、90年代後半からは東京進出を果たして現在も活動を続けるバンド・RAPESのボーカリストであるSHINTANIが出演。SHINTANIがハードコアに目覚めたきっかけや、恐るべき噂話の真相、さらにはG.I.S.M.やXのYOSHIKIとの関係性についてまで、大いに語り合った。聞き手は音楽ライターの石井恵梨子。
第一回:G.I.S.M.、GAUZE、LIP CREAM……KATSUTA★ × ISHIYAが振り返る、先輩ハードコアバンドの洗礼
「悪いもの同士、仲良くしよう」

一一ISHIYAさんの本によると、SHINTANIさんとの出会いは「悪いもの同士、仲良くしよう」っていう言葉だったとか。
ISHIYA:そう。いきなり言われた。俺って悪者に見られてたんだ、みたいな。
SHINTANI:いや……今でも思うてるよ(笑)。
一一それっていつぐらいですか。
ISHIYA: DEATH SIDEで大阪に行った時だよね。
SHINTANI:成人していなかったんじゃない? 20代じゃなかったよね?
ISHIYA:かもしれない。OUTOに呼ばれて行った時だから、年齢で言うと高校生だったと思う。で、SHINTANIが俺の一コ上だから。
SHINTANI:ギリ、ハタチになるかならないか。まだRAPESやってなかった。
ISHIYA:そうだね。SHINTANIはバンドというよりも個人として知り合ってる。
一一改めて伺うと、SHINTANIさんがハードコアの世界に入ったのはどういうきっかけでしたか。
SHINTANI:や、完全にファッションやで。ガキの時に『ロンドンに行きたい』ってシリーズ本あったやん。俺は本が好きやから本屋によく行ってて、なんとなく見たらパンクが載っとって「うわっ、すご!」って。あと俺、神戸の田舎やから情報があんまりないねん。
ISHIYA:『宝島』くらい? 『DOLL』は売ってないか。
SHINTANI:地元じゃまず売ってない。だから三宮とかの本屋まで出て。あと俺らって年代的にヤンキーが主流やから、みんなパーマ当てたりメッシュ入れたり。でも俺は金髪がええなってことで、まっ金金にして。そしたらすっごい目立つ。目立ったらちょっと嬉しいやん。それで革ジャンに鋲とかガンガン打って、そこから仲間もできたから。当時はMOBSのケンジがおって、いろいろ教えてもらったり遊んだり。「もっと派手になってええねんな、もっとこんなことしてええねんな」みたいな。
一一MOBSを見たら「何でもいいんだ」と思ってしまうって、前回KATSUTA★さんも言ってましたね。
ISHIYA:うん。しかもSHINTANIが見てたの、俺とかKATSUTA★が見る前のMOBSだから。なんならSHINTANIがほぼMOBSだから(笑)。
一一強烈な先輩バンドでした?
SHINTANI:まぁそうやな。大阪行っていろんなバンド見るようになって、全部強烈やった。それまでアナーキーぐらいしか知らんのに、いきなりハードコア見たら「……これ音楽?」って。モノ知らん16歳くらいやし、ライブハウスの雰囲気もわからへんし。きったなくて狭いとこで爆音流れてんねんから。
一一怖さはなかったですか。
SHINTANI:なかった。なんて素敵なんだろうってワクワクした。
ISHIYA:この人に怖さはないでしょう。ちょっとランクが上だから(笑)。
一一RAPESの結成は1987年。どういうバンドにしようと思ってました?
SHINTANI:スラッシュが流行ってたから、そういうのはやめようと。あとハードコアって低い声でウォーって怒鳴るボーカルが多いから、ああいうのはやめよう、とか。「こうやろう」というより「これはしない」だった。
ISHIYA:消去法か。
SHINTANI:同じことやっても仕方ない。人と違うことが楽しいと思ってパンクやってるわけやから、音楽で同じことやっても面白くないと思って。
一一RAPESは最初からメタルコアを掲げていたのも特徴です。
SHINTANI:メタルコアっていうジャンルそのものがまだなかった時代。もっと具体的な感じで、メロディアスにしよう、ギターソロ入れよう、とか。結局は「こうしよう、ああしよう」「これはやめよう」とか言ってできあがったのがメタルコアやった。全然狙ってやってたわけでもないんやけど。
一一ISHIYAさんから見て、RAPESのサウンドはどうでした?
ISHIYA:サウンドというよりも……アレだよね。ライブのステージとか、迫力とか。そっちのほうに目が行くよね。
SHINTANI:RAPESは結成してからライブするまでに、もうすごいデマやガセが流れてて。なんか最初から話題になってた。