グローバルシーンに影響を与えるK-POPアーティストはもちろん、ここ数年、インディロックやシンガーソングライターのカテゴリーでも次世代の活躍が散見される韓国の音楽シーン。たとえば、『FUJI ROCK FESTIVAL’25』に出演するHYUKOHとSunset Rollercoaster、Balming Tigerはアジアのインディーミュージックを更新し、狭義のジャンルリスナー人気を超えた感がある。また、アップカミングなアジアのバンド/アーティストが出演する『Asian Pop Festival 2025』などの音楽フェスは日本のリスナーにも認知が広がりつつあるように、リアルな往来も機運になり、盛り上がりを見せているのだ。

Silica Gel、オルタナティブの実相を更新する先鋭バンド

실리카겔 (Silica Gel) – T + Tik Tak Tok (feat. So!YoON!) [M/V]

 『FUJI ROCK FESTIVAL’25』初出演のSilica Gelはすでに10年以上のキャリアを持ち、当初の実験的なアプローチを作品毎に研ぎ澄ましてきたバンドだ。音楽は先鋭性を削がないまま、韓国の『グラミー賞』とも呼ばれる『韓国大衆音楽賞』で2022年から3年連続で「最優秀モダンロック・ソング」を受賞。キム・ハンジュ(Key/Vo)、キム・チュンチェ(Gt/Vo)、チェ・ウンヒ(Ba)、キム・ゴンジェ(Dr)の4人全員がアイデアをぶつけ合いながら完成させる楽曲は、モダンサイケデリアやドリームポップ、ポストロックやエレクトロロックなどを軸にしつつ、1曲ずつに全く異なるジャンル感が展開。ギタースターであるチュンチュのメタル、プログレ、フュージョンを包摂するプレイがオルタナティブロックのジャンル感を拡張する。

 楽曲は近未来SF的な世界観、インストバンド的な先の読めない展開もあれば、ストレートな「NO PAIN」、サイバーというワードを音にしたような「APEX」なども。さらに最新リリースの「南宮FEFERE (feat. Japanese Breakfast)」では人間のプリミティブな身体性やメランコリーを、人知を超えたメカニカルなサウンドで駆動。新たなチャプターに突入した音楽性にも期待したい。なお、キム・ハンジュは、『FUJI ROCK FESTIVAL’25』に出演するBalming Tigerのメンバーとしても出演。Balmig Tigerのリーダーでクリエイティブディレクターのサンヤンがプロデュースを手掛けたRM(BTS)のアルバム『Right Place, Wrong Person』にソングライターとしても参加した彼は、メジャーとインディー、オルタナティブロックとヒップホップなどのブリッジとなるキーパーソンなのだ。

LEENALCHI、パンソリとニューウェーブディスコの融合

[Live Video] 이날치 LEENALCHI – 새타령 Bird (정년이 OST)

 韓国の口承伝統音楽であるパンソリの詩節を歌うオルタナティブロックバンド LEENALCHI。4人の歌い手と2人のベースとドラムで作り出される音楽は、パンソリが“パン”=広場と“ソリ”=歌の合成語であることからもわかるように、彼らの音楽は朝鮮時代後期から市民が物語を歌で伝える韓国伝統音楽(国楽)として受け継がれてきた部分に、ニューウェーブやミニマルファンク的なリズムが掛け合わされたユニークなもの。ビート自体はシンプルだが、カラフルで熱のある声の表現が、ときに器楽的でもあるのが特徴だ。彼らの名前が一躍広まったのは、「Tiger is Coming」が韓国観光公社の広報動画に起用されたこと。現代舞踊集団 アンビギュアス・カンパニーのダンスも相まって5000万回を超える再生数を記録したのだ。伝統的な演目のひとつ『水宮歌』(수궁가/スグンガ)を題材にしたデビューアルバム『Sugungga』が『第18回韓国大衆音楽賞』で3部門を受賞。日本にも折坂悠太らとの競演や2023年に愛知県で開催された『橋の下盆踊り』などで訪れ、コアなファンが存在する。オリジナルストーリーによる「Hihi Haha」「Look At Me Look At Me」「God Of Mud」など新曲も加わり、目下ヨーロッパツアーで各地を沸かせている。パフォーマンスやMVのポップさも際立ち、初出演となる『FUJI ROCK FESTIVAL’25』のステージも注目を集めることになった。

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