東京・南麻布にあるフィンランド大使館で、新たに本の交換サービス「ブックスワップ(Book Swap)」がスタートしました。

その名も「Kirjametsä(キルヤメッツァ)=本の森」。

大使館の受付エリアに設置された木の本棚を通して、本をきっかけとしたやさしい交流が生まれています。

ブックスワップってなに?

「ブックスワップ(Book Swap)」とは、読み終えた本を持ち寄り、他の人が置いた本と自由に交換できる取り組みです。

本が人から人へ手渡され、また新しい読者のもとへ旅立っていく。そんなあたたかな循環が生まれる文化です。

たとえばフィンランドでは、ヘルシンキの公園や住宅街、図書館、さらには空港にも本棚が設置されていて、誰でも自由に本を交換できる仕組みが整っています。
LifTe北欧の暮らし フィンランドのヘルシンキで見かけた自分の読み終わった本を棚に入れて、他の人が持っていく本のサスティナブルな取り組みブックスワップの棚(little free library)
こちらの写真は、ヘルシンキ市内の住宅街で見かけたミニサイズの本棚。

夜でも通りが明るく整備されており、日常の中で自然に本と触れあえる空間として親しまれています。
LifTe北欧の暮らし フィンランドのヘルシンキにあるヴァンター空港で見かけた自分の読み終わった本を棚に入れて、他の人が持っていく本のサスティナブルな取り組みブックスワップの棚
こちらは、フィンランドの玄関口・ヴァンター空港に設けられたブックスワップの棚。

搭乗までの待ち時間に本を手に取り、ゆっくりと過ごす人の姿も。国際空港の中にこうしたスペースがあるのは、フィンランドらしい配慮とも言えそうです。

この“日常の中に本がある暮らし”は、まさに北欧らしいやさしい時間の使い方。

大人も子どもも、旅人も地元の人も、本を通してゆるやかにつながれる文化が根づいています。

フィンランド大使館の「Kirjametsä(本の森)」の様子

LifTe北欧の暮らし 広尾のフィンランド大使館の受付スペースでスタートしたブックスワップ「Kirjametsä(本の森)」の棚
大使館のブックスワップ棚には、フィンランドに関連した本がずらりと並んでいました。

小説やエッセイ、ガイドブックはもちろん、ムーミンの原書や絵本などもあり、見ているだけでフィンランドの世界に引き込まれそう。
LifTe北欧の暮らし 広尾のフィンランド大使館の受付スペースでスタートしたブックスワップ「Kirjametsä(本の森)」の棚にはムーミンの本を始め、フィンランドに関する書籍がずらり

本の言語も、フィンランド語、スウェーデン語、英語、日本語と多様。

訪れた方は、棚に並ぶ中から気に入った本があれば1冊持ち帰ることができ、また読み終えた本を棚に加えることもできます。

本棚の上には、利用ルールや返却の案内も丁寧に掲示されていました。

旅行、デザイン、食、教育、福祉など、フィンランドの魅力をさまざまな角度から知ることができる本がそろい、まさに「本を通じて出会うフィンランド」といった空間です。

編集部が選んだ1冊

LifTe北欧の暮らし 広尾のフィンランド大使館の受付スペースでスタートしたブックスワップ「Kirjametsä(本の森)」の棚で編集部がセレクトした「フィンランド 光の旅 北欧建築探訪」
棚に並ぶ本には「Kirjametsä(本の森)」のシールがそれぞれ貼られています

数ある本の中から、編集部が選んだのが『フィンランド 光の旅 ― 北欧建築探訪』。

フィンランド各地に点在する教会や建物を、美しい写真と静謐な言葉で紹介した一冊です。

表紙に映っているのは「ミュールマキ教会(Myyrmäen kirkko)」。

その高さのある天井と自然光を巧みに取り入れた構造から「光の教会」とも呼ばれ、国内外の建築ファンを魅了してきました。

LifTe北欧の暮らし フィンランドにある光の教会とも称されるミュールマキ教会の内部 パイプオルガン
この教会は長らく改修工事が続いており、しばらく内部に入ることができませんでしたが、ようやく工事が完了。

編集部もこれまで何度か訪れながらも内部には入れずにいましたが、今年ようやくリニューアルされたばかりの教会内部を見学することができました。

高く吊るされた照明、天井から差し込むやわらかな自然光、そして中央に設置された虹色に輝くパイプオルガン。

静けさの中に美が宿る、“祈りの空間”がそこに広がっていました。

そんな訪問の記憶が新しいからこそ、このブックスワップの棚に並んでいた『フィンランド 光の旅 ― 北欧教会を訪ねて』に自然と手が伸びたのかもしれません。

ページをめくるたびに、旅先で感じたあの静けさや光のぬくもりがよみがえってきます。

そして、ブックスワップは本を持って行くだけでなく、読み終えた本を棚に置いていくことも可能です。

編集部からも『LifTe 北欧の暮らし』のバックナンバーを数冊、棚に加えさせてもらいました。

誰でも利用できる?注意点はこちら

LifTe北欧の暮らし 広尾のフィンランド大使館の受付スペースでスタートしたブックスワップ「Kirjametsä(本の森)」の棚
とても魅力的な取り組みですが、ブックスワップの利用はフィンランド大使館に用事のある方限定となります。

たとえばビザや領事関係の手続き、会議などで訪問される方のみが、本棚にアクセスできる仕組みです。

ふらっと立ち寄って利用することはできないため、ご注意ください。

大使館の一角にそっと設けられた木の本棚には、フィンランドの文化ややさしさへの想いが詰まっています。

本を通して人とつながり、国を越えて心を結ぶ。そんな“ちいさな森”が、東京に誕生しました。

関連

Write A Comment

Pin