【シニア恋愛】登山道で出会った男に抱かれて…15年ぶりに“女”に戻った夜
#朗読ドラマ #シニア恋愛 #恋愛ストーリー #シニアの夜
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ここではだめよ。誰かに見られたらどう するの?エ子さんの言葉にも現一さんは 止まりませんでした。すでに彼のたましい 腕は越え子さんの腰をしっかりと抱きしめ 、エツ子さんは抗がうことなく甘いと息 を漏らしました。 かかな汗の匂いがあやいっぱいに満ちてい ましたが、それが帰って2人の間に抑え きれない熱をもたらし、健一さんはその 小さな空間でさらに深く彼女の存在を求め ていきました。田中子は翌日を迎えた ばかりで地方の小さな街外れにある アパートでひっそりと1人暮らしをしてい ました。15年前の離婚後、東京で必死に 子供たちの世話や援助をしながら過ごす うちに心身共に疲れ果て、この静かな町へ 移り住んで5年が経っていました。子供 たちはそれぞれの人生に忙しく連絡も疎 なりがちでしたが、エ子さんはそんな現実 を静かに受け入れ、ただ日々を耐えし飲ん でいました。彼女にとって唯一の心の 寄り所は毎週34回登る近所のもみじ屋 までの登山でした。朝6時になれば 目覚まし時計が鳴るよりも早く自然と目が 覚め簡単な洗顔を済ませると慣れた手付き で登山服に着替えます。長年の無理が 立たり膝はよくありませんでしたが腰の 保護をしっかり締め登山の紐を丁寧に 結び直すのが彼女の欠かせない朝の ルーティンでした。その日の住んだ空気を 胸いぱいに吸い込むたびにまるで心が 現れるような気がしたのです。その日も いつものように早朝から山へ向かいました 。秋の朝の空気はひんやりと住み渡り、 山道にはまだ浅が残っていました。越子 さんは自分だけの穏やかなリズムで 一歩一歩ゆっくりと登っていきます。15 年前に1人になってからというもの、こう して1人で山道を歩く時間が彼女にとって 最も心が落ち着く掛けがえのない瞬間でし た。誰にも邪魔されず、ただ自然と 向き合う贅沢。それが今の彼女の生きがい でもあったのです。まの中腹あたりでした 。勾配が急になる区間でのことです。 息子さんはいつものように慎重に足元を 選んで登っていましたが、うっかり濡れた 石を踏んでしまいました。次の瞬間体の バランスを失い、後ろへ傾いたのです。 あっと声にならない叫びが喉から漏れそう になった切ナ。誰かが彼女の腕をぐっと 掴みました。危ないですよ。石がありまし たね。見知らぬ男性の飾り気のない声でし た。越つ子さんは驚いて顔をあげ、彼を 見つめました。60代半ばくらいに見える 男性で日に焼けた肌に少し険しいが無表情 な顔をしていました。しかし彼の触れる手 は意外なほど温かく確かな安心感を与えて くれました。あ、ありがとうございます。 越子さんは戸惑いながらも深く頭を下げ、 小さく挨拶しました。男性は何も言わず、 ただこくりと頷くと先に歩き去ってしまい ました。 越子さんは胸がドキドキするのを感じ ながら急いで足を動かしました。転びそう になった驚きのためなのか、それともこの 年になって久しぶりに誰かの助けを受けた からなのか、そのどちらなのか自分でも 分かりませんでした。ただ彼の温かい手の 感触だけが妙に心に残っていたのです。家 へ帰る途中もそしてその夜もあの男性の顔 が度々思い出されました。無表情でしたが どこか優しい印象で何よりも彼の手が 温かかったという記憶がずっと心の片隅に とまりました。不思議なことにその夜は なかなか寝つけず久しく忘れていた感情が 胸に巨来したのです。まるで若い頃に戻っ たかのような甘く切ない予感でした。数日 後、越子さんは再び同じ時間に山に登り ました。あの日の出来事が仕切りに 思い出され、胸が妙にときめきましたが、 まさかまた会えるはずはないと思ってい ました。しかし心の片隅にはもしかしたら という淡い期待があったのもまた事実でし た。いつものコースを登っていたいつは 休憩用のベンチに腰を下ろし息を整えてい ました。その時誰かが近づいてくる足音が 聞こえました。顔をあげてみると数日前の あの男性でした。彼はリュックサックから 水筒を取り出し、自然な様子で挨拶を かわしました。またお会いしましたね。 そうですね。もみ山も案外狭いのかもしれ ませんね。越つ子さんはぎこちない笑顔を 浮かべて答えました。け一さんは優しくも なくかと言って不親切でもないあっさりと した口調で話しました。彼はベンチの横に 立って少し休んでいるようでしたが子さん が立ち上がって歩き出すと自然に彼女の 歩くリズムに合わせてついてきました。 2人の間に流れる心地よい沈黙がまるで 長年の友人のようでした。この道はよく来 られるんですか? エ子さんが先に話しかけました。 久しぶりに誰かと一緒に歩く道だったので 沈黙が少し気まつく感じられたのです。 ええ、ほとんど毎日来ますよ。あまりやる ことがなくて時間をモて余ましているん です。 私も週に34回は来ますね。家にばかり いるとどうにも息が詰まってしまって、 2人はゆっくりと歩きながら短いけれど心 温まる会話をかわしました。 け一さんは口数が少ない方でしたが、エ子 さんの話を静かにそして真剣に聞いてくれ ました。 でさんがっての汗を拭うと彼は何も言わず にリュックサックから冷たいお茶のペット ボトルを取り出して渡しました。 冷たいお茶です。どうぞ。あ、ありがとう ございます。私が持ってきた水はもう すっかりぬるくなってしまって、エツ子 さんは慎重にペットボトルを受け取り一口 飲みました。 [音楽] 冷いお茶が喉を通り、体にじわりと 染み渡るようでした。 彼女は自然と笑顔になりました。 健一さんもその様子を見てかに口元を緩め 、優しいマ差しを向けました。 ありがとうございます。本当に生き返る ようです。 いしまして、山に登る時は水分補給が1番 大事ですからね。 [音楽] その日以来、2人はもみ屋で頻繁に顔を 合わせるようになりました。最初は単なる 偶然だと思っていましたが、次第に互いを 意識し、似たような時間に山を訪れるよう になりました。会話よりも無言で共に歩く 時間が多かったですが、その沈黙さえも 不思議と心地よく2人の間には言葉以上の 繋がりが育っていきました。 越子さんは家へ帰る道中思わず次にまた 健一さんに会えるだろうかと考えるように なっていました。 15年ぶりに初めて誰かを待つ甘ず 酸っぱい気持ちが心の奥底に芽えたのです 。 あの男性も同じ気持ちなのかは分かりませ んでしたが、少なくとも彼女を不快に思っ ているようには見えませんでした。彼の隣 にいると心が解放されるような不思議な 安心感があったのです。数日後、越子さん はいつもより少し早く山に登りました。 もしかしたらまた健一さんに会えるかも しれないという抑えきれない期待感でした 。 そして本当に健一さんは同じ時間に現れ ました。 もう2人は互いを意識しながら山に登って いるのだとはっきりと分かりました。それ は言葉にはできないけれど、確かに存在 する確かな絆でした。 下山後、山の駐車場で再び顔を合わせた 2人。いつもなら簡単な挨拶の後に それぞれの道へ戻るところでしたが、その 日はけ一さんが先に口を開きました。 この近くに美味しいお好み焼きの店があり ますよ。日酒でも1杯いかがですか? 四つ子さんは少し躊躇しました。15年前 の離婚後、男性と2人きりでお酒を飲むの はおそらく初めてのことでした。しかし 今日に限っては1人で家に帰りたくあり ませんでした。そして何よりもこのけ一 さんから感じられる温かく包み込むような 安らにがあったのです。そうですね。ええ 、ぜ非。実は1人で家で夕食を食べるのは 少し寂しくて気が進まなかったんです。 2人はもみ山の入口から歩いて10分ほど の場所にある昔ながらの定食屋向かいまし た。看板も年気が入って古くテーブルも 使い込まれたものばかりでしたが、店内は 清潔に保たれ、どこか懐かしく温かい 雰囲気が漂っていました。色りのような 大きな鉄板の前に並んで座った2人の前に 熱々の湯気の立つお好み焼きと冷たい字酒 の特りが置かれました。乾杯しましょうか 。け一さんが地酒のグラスを持ち上げまし た。さんもグラスを手に取りますよ。外の 一杯を静かに飲み干した後、2人の会話は 控えめながらも感情のキはどんどん深まっ ていきました。 自酒が心地よく体に染み渡るにつれて越子 さんの心も少しずつ解き放たれていきまし た。 初めて会った日の出来事やお互いの過去に ついてポツりポツりと話し始めます。 お1人暮らしですか? K一さんが慎重に訪ねました。 彼の声には相手を気遣う優しさが滲んでい ました。 ええ、もう随分になりますね。 息子と娘は東京にいて、私はただここで 1人で食べて寝て起きて、 エツ子さんの声には隠しきれない寂しさが にみ出ていました。 子供たちが東京でそれぞれの生活を送る間 、彼女はこの小さな町でただ1人 静かに時を過ごしていました。 ふと故郷を離れて都会で奮闘する子供たち の姿が目に浮かびます。 私も同じですよ。 1人暮らしは20年になりますね。 最初はひどく寂しかったけれど、今はもう 慣れました。 でも誰かとこうして迎え合って座っている のは本当に久しぶりですね。 健一さんの言葉にも長い年月を経て培われ た孤独が滲んでいました。 そのマざしは越え子さんの心を深く見かし ているようでした。2人は言葉もなく グラスを傾けました。互いから目をそらさ ず見つめ合う視線がだんだんと深まって いきました。そこには言葉にできない理解 と静かな共感が満ちていました。 山で初めてお会いした時、私転びそうに なったでしょう。あの時すっと手を 差し伸べてくださったのが本当に久しぶり に誰かの助けを受けることだったんです。 まるで暗闇の中で差し伸べられた光のよう でした。 越子さんはあの時の感動を改めて口にし ました。大したことありませんよ。困って いる人がいたら手を貸すのは当然のこと です。け一さんは照れたように少し微笑み ました。いいえ。最近の人々はたえ目の前 で困っている人がいても見て見ぬふりを する人が多いのに親切にしてくださって心 から感謝しています。子さんの言葉には 偽りのない感謝の気持ちが込められてい ました。自酒が1本開く頃には2人を 隔立てていぎこちなさはまるで霧のように 随分となくなっていました。エツ子さんは 久しぶりに心起きなく話せる相手に出会っ たようでした。彼の穏やかで白慮深い人柄 に自然と心が惹かれていくのを感じます。 け一さんもまた同じように感じているよう でした。彼のざしが今までにはないほどの 温かさを帯びていました。次回もみじ山で あったらまたこうしていっぱいやりますか ?け一さんが尋ねました。 ええ、いいですね。1人で飲むよりずっと 美味しく感じられますから。エツ子さんは 笑顔で答えました。その2人の間に確かな 絆が生まれつつあるのを感じていました。 それは寂しさを埋めるだけでなく、新しい 希望の光のように思えました。その夜子 さんは家へ帰る道中心がすっかり軽くなっ ていることに気づきました。15年ぶりに 初めて誰かと共に過ごした夕べでした。 そして何よりもその時間が全く不快では なく、むしろ心地よかったという事実に 彼女自身が1番驚きを覚えたのです。 まるで乾き切っていた心に一滴の潤いが 与えられたような感覚でした。 翌朝子さんはいつもと違う心地よい感覚で 目を覚ましました。 昨夜の地酒が少し残っていたのか頭が少し 重い気もしましたがそれもまた心地よい 余因のようでした。 時計を見るといつもより1時間も遅い時間 でした。頭痛のせいで今日は無理せず 休もうと思いました。午後になって体が 少し楽になるとやはりもみじ山へ行こうと いう気持ちが募りました。遅れてでも行き たい。そんな衝動に駆られたのです。 慣れた登山服に着替え家を出た越子さんは いつもより遅い時間に山の入口に到着し ました。この時間帯は通常下山する人が 多かったですが、登る人は稀れでした。 しかし彼女の心は確かな期待に満ちてい ました。 もみ山の中複あたりで越子さんは見慣れた 後ろ姿を見つけました。け一さんでした。 彼もいつもより遅い時間に山に登っていた のです。まさかこんな時間に会えるとは夢 にも思っていませんでした。こんにちは。 越つ子さんが先に声をかけました。 喜びと驚きが混じった声でした。あ、 こんにちは。今日は遅かったですね。 け一さんも彼女の姿を見てハッとしたよう な表情を見せました。 か夜は少し寝るのが遅くなってしまって、 実はけ一さんのせいなんですけどね。 越子さんは茶めっけたっぷりに少しだけ いたずらっぽく微笑みました。 2人は互いを見てふわりと温かい笑顔を かわしました。 昨夜や共に過ごした時間のためかぎこちな さよりもまるで長年の友人のような真金感 が自然と湧き上がってきました。 彼の瞳の奥には自分と同じような隠しきれ ない期待と喜びが宿っているように見え ました。私も同じですよ。久しぶりに誰か と時間を過ごしたのでどうにも寝つけなく てけ一さんもまた正直な気持ちを打ち明け ました。その言葉に越子さんの胸は温かく なりました。2人の心がゆっくりとしかし 確実に寄り添い始めているのを感じたの です。 簡単な挨拶と再開の喜びを分かち合った後 、2人は共に山を登り始めました。いつも より遅い時間だったのでもみ山には ほとんど人がいませんでした。 静寂の中聞こえるのは2人の足音と時に 聞こえる互いの穏やかな生き遣いだけ。 まるで世界に2人だけになったかのような 不思議な一体感がそこにはありました。 場近くまで登った後、下山道に入った時 突然空が暗くなり始めました。それまで 穏やかだった空に黒い山雲が見るみるうち に押し寄せ、やがて大粒の雨が降り始め ました。来名が遠くで轟き、風が枝派を 激しく揺らします。 雨ですね。あら、天気予報では晴れだと 言っていたのに。越つ子さんは戸惑い ながら空を見上げました。 甘粒はますます大きくなり、まるで意思を 持ったかのように振り注いできます。 あそこにあ屋がありますよ。そこで甘宿り しましょう。健一さんが山の中複にある木 のあま屋を指差しました。彼の声には 落ち着いた頼もしさがありました。2人は 急いであまいと向かいました。あ屋に着く 頃には雨は叩きつけるようにかなり強く 降っていました。全身が冷えるような雨音 に2人の心臓も高ります。 は屋根がありますね。あ屋はそれほど 大きくはありませんでしたが、2人が身を 寄せて甘宿りするには十分でした。2人は 並んで座り、嵐が過ぎ去るのを待ちました 。雨音と共に風が吹きやれ、木の葉が カサカサと不気味な音を立てました。いつ でしょうか?こんなに激しい雨は久しぶり です。エ子さんは少し不安げに訪ねました 。すぐに止むと思いますよ。もう少しだけ ここで様子を見ましょう。け一さんはそう 言いながら彼女の肩にそっと手を置きまし た。その温かい手から伝わる確かな体温が 越え子さんの心を落ち着かせました。 しかし雨はなかなか病む気配がありません でした。むしろます強く振りました。は屋 の中は薄暗らい夕やみに包まれ、まるで 外界から確実された秘密の空間のようでし た。 そして自然と2人の距離も近づいていき ました。寒いですか?け一さんが越子さん の肩を見て尋ねました。雨風のため登山服 の片口が少し濡れていました。ええ、少し でもけ一さんがいてくださるから大丈夫 です。それよりも本当にいつ病むの でしょう?こんなに暗くなったら下山する 道が危ないのに。越つ子さんの声には不安 とそして頼もしさを感じるけ一への信頼が 混じっていました。その時け一さんが何の 躊躇もなく越子さんの手をそっと掴みまし た。 大丈夫ですよ。私が一緒にいますから、 どんな道でも私が必ずあなたをお守りし ます。彼の言葉は闇の中で揺れる越子さん の心にまるで温かい光を灯すようでした。 温かい手が伝わるとエ子さんの心臓が急激 にドキドキし始めました。15年ぶりに 感じる男性の手の温かさ。そして彼の言葉 がこんなにも心を揺さぶるとは。 その瞬間、あ屋の外から嵐のような風が 吹き込み、木の歯が激しく揺れ、天は さらに大きく2人の信音を書き消すかの ように響き渡りました。ゆつ子さんが 小さく言いました。こんなことしちゃいけ ないって分かっているのにどうしてこんな に胸が震えるのかしら。 彼女の言葉には理性とは裏腹の荒がいの ない時めきが込められていました。 け一さんはゆっくりと首を回し、闇の中で も輝くような彼女の瞳を見つめました。 そしてまるで吸い寄せられるように慎重に 彼女の顔に近づいていきました。 私も同じですよ。この感情は本当に不思議 ですね。 け一さんの声は天音に紛れて、しかし確か に越え子さんの耳に届きました。 2人の顔はゆっくりと、しかし確かな引力 に導かれるように近づきました。 互いの瞳に移る自分を見つめ合っていた 2人はついに唇が触れ合いました。 最初は短くためらいがちな口付けでしたが 、次第に深くそして長くなっていきました 。 越子さんの胸はまるで多な10代の少女の ように激しく高りました。 こんなにも息を飲むような瞬間はあまりに も久しぶりでした。 忘れていたはずの情熱が今再び 燃え上がろうとしているかのようでした。 が終わった後子さんがか細い声でさきました。 誰かが来るかもしれないのにダめよ。 しかし彼女の声には拒否感よりもむしろ彼の甘い期待とさらに深く求めたいという願望が強くめられていました。そして彼女の手がまるで自然な導きのように彼の首に回りました。 け一さんの手がエツ子さんの腰を慎重に 抱きしめました。 そしてとても力強く、しかし優しくエツ子 さんを引き寄せました。登山服の上からで も彼の温かい体温がじんわりと伝わってき ます。エツ子さんは久しぶりに感じる男性 の胸のぬくもりを見慣れないながらも心の 底から恋しくそして切なく感じました。 本当に こんなことしちゃいけないのに。 エツ子さんが再び俯きながらつやきました が、すでに彼女の体は彼の腕の中に すっぽりと抱かれていました。 渦屋の外で降りしきる雨と吹き荒れる風の 音がまるで2人だけの秘密の世界を 作り出すかのように彼らをさらに密接にし ました。 け一さんの手が慎重に、しかし迷いなく 越子さんの登山服のボタンに触れました。 越子さんは一瞬全身に電流が走ったように 緊張しましたが、彼の行動を拒むことは できませんでした。 15年ぶりに感じるこの感情は見慣れない ものもあまりにも切実で抑えきれないほど に彼女の心を捉えて話しませんでした。 ここでこんなことしてもいいのでしょうか ?エ子さんは震える声でそっと尋ねました 。 その声には戸惑いと同時に荒がいのない 誘惑が混じり合っていました。日さんは 答える代わりに彼女をさらに深く憎しむ ように抱きしめました。 外会の状況から来る多少の不便さや 見つかるかもしれないというスリル感がっ て2人の間により一層強烈な感情を 生み出しました。スリルと長い孤独の果て に訪れた甘い時めきが入り混じりながら 越子さんは抗がうことなく彼にその身を 委ねました。まるでこの瞬間を何十年も 待ち望んでいたかのように。 アムゼアの奥まった場所に2人の影が1つ に重なりました。 叩きつけるような雨風の音に紛れて過ろじ て聞こえる2人の小さな息遣い。それは 長年に渡る深い孤独が一瞬にして溶けて いく奇跡のような時間でした。 [音楽] その世もみじ山の中にある小さなアムゼ屋 で越子さんとけ一さんは初めて互いの心に 秘めていた外の世界への寂しさと深く 満たされなかった切ない思いを惜しみなく 分かち合いました。 15年ぶりに越子さんが心の底から1人の 女性としての喜びを思い出すそんな忘れ られない夜となりました。その日以来2日 経ちましたが、越子さんはもみ山でけ一 さんに会うことができませんでした。毎日 同じ時間に山に登りましたが、彼の姿は どこにも見えませんでした。最初は単に 時間が合わないだけだと思っていましたが 、1日また1日と過ぎるうちに不安な 気持ちが胸を締めつけ始めました。もしか してあの日のあ屋での出来事のせいで彼が 重荷に感じてしまい私を避けているのでは ないだろうか。それとも私が彼に求めた ものがあまりにも請求すぎたのだろうか。 エツ子さんはあの日の甘く危険な記憶を 思い出すたびに顔が好調し胸の奥が熱く なりました。15年ぶりに感じたあの感情 は夢のようでしたが、同時に彼を失って しまうかもしれないという後悔の念も抱き ました。まるで夢から覚めた後の喪失感の ように寂しさが募ります。 [音楽]