大庄屋建築から近代化産業遺産、再生建築までを繋ぐビジュアル探訪
トゥーヴァージンズはビジュアル建築シリーズ「味なたてもの探訪」の最新刊として、『せとうち建築 海の道が紡いだ暮らしと建物』を2025年7月29日(火)に刊行する。本書は岡山・広島・香川・愛媛の建築物を通して、産業の歴史と人びとの暮らしの関係を読み解く一冊であり、瀬戸内の風土に根ざした建築の魅力をビジュアルとインタビューの両面から紹介している。
古くから瀬戸内海は海上交通の要所として栄え、人とモノの往来を通じて独自の文化を育んできた。多様な地形と風景に富むこの地域では、港町の記憶をとどめる建物が今なお息づいており、それらが産業遺産や再生建築として今日的な価値を持ちはじめている。
本書では、「せとうち建築」というテーマのもと、大庄屋建築やモダニズム公共建築、近代化産業遺産、リノベーションによる宿泊施設など、ジャンルを横断して多彩な建物を収録。建築の背景にある土地の歴史や産業、そこに関わる人びとの声を取材し、建築が地域の記憶をどのように繋いでいるかを描き出している。
掲載される建築物の一部には、現在も県庁舎として使われている国の重要文化財「香川県庁舎東館」や、わずか10年間のみ稼働した銅製錬所をアートの力で蘇らせた「犬島製錬所」、そして茶の湯文化を今に伝える大洲の名建築「臥龍山荘」などが含まれる。また、広島の「世界平和記念聖堂」や、倉敷の「アイビースクエア」「旧野﨑家住宅」といった名建築も、地域の産業史と併せて紹介されている。さらに「瀬戸内海歴史民俗資料館」の専門職員によるコラム「歴民スコープ」も収録されており、地域の民俗と建築を結びつけた視点からの分析が加わることで、読み応えのある内容となっている。
本書の建築監修を務めるのは、香川大学創造工学部 准教授・釜床美也子。伝統民家や集落、構法に関する研究を専門とし、地域の風土に根差した建築技術の継承と応用に取り組んでいる。長年にわたり瀬戸内地域での調査を重ねてきた釜床氏の視点が、編集全体に深みを与えている。2025年8月1日から開催される「瀬戸内国際芸術祭2025」に向けて国内外から注目が集まるなか、本書は改めて瀬戸内の建築と暮らしに光をあてる一冊となる。
釜床美也子(かまとこ みやこ) プロフィール
徳島県出身。2009年、筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程修了。博士(デザイン学)。2013年より香川大学に着任。現在は創造工学部 建築・都市環境コース准教授として、地域の風土に根差した「建物のつくり方(=構法)」を主題に、伝統民家や集落を対象とした調査・研究を行う。建築技術の継承や、地域資源の活用に関する実践的研究にも取り組んでいる。
『せとうち建築 海の道が紡いだ暮らしと建物』書籍情報
発売2025年7月29日(火) ※地域により異なる可能性あり定価2,420円(本体2,200円+税)仕様A5判 / 並製 / 192ページURLhttps://www.twovirgins.jp/