鈴木のりたけ先生のアトリエで、朝小リポーターが取材をしました=6月14日

絵本作家 鈴木のりたけさん

 大人気の児童書『大ピンチずかん』(小学館)。4月に発売された『大ピンチずかん3』は、日本出版販売が発表する2025年上半期ベストセラー総合1位に輝きました。作者の鈴木のりたけ先生に朝小リポーターが取材をし、作品の魅力やのりたけ先生がどんな人かを深ぼりしました。(関田友衣)

こども記者が創作のひみつにせまる

「なぜ『大ピンチずかん』をかこうと思ったのですか?」と質問したのは、えまさん(3年)。のりたけ先生は、きっかけとなった息子さんの話を教えてくれました。「うちの次男が小学1~2年生だった時、よくちょっとした失敗や言いまちがいをしていました。それがおもしろくて、メモしていたんです」

最初に出版した『大ピンチずかん』の表紙にもなっている「ぎゅうにゅうが こぼれた」という大ピンチも、実際に息子さんがやったことだそうです。

「大人だったら、ふきんでふけばいいと思うでしょう。しかし次男は、その様子を見て固まってしまったんです。子どもにとっては、こんな小さなことも大ピンチなんだ、と。それで『気にしなくていいんだよ』『こうすれば乗りこえられるよ』と伝えたくて、本をつくろうと思いました」

『大ピンチずかん』とは?

 「ガムを のんだ」「たんじょうびケーキが たおれそう」「えだまめが とんだ」など、日常に起こるさまざまな大ピンチをユーモアたっぷりにえがいた本。シリーズ累計発行部数は250万部を突破。

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かいさん(2年)は、「ピンチがチャンスになったことはありますか?」と問いかけます。よく「ピンチの時こそチャンスだからがんばれ」と言いますが、のりたけ先生は「マイナスをプラスにするなんて、そんなにかんたんにはできない!」と感じるそう。

しかし、ピンチの嵐をじっとたえると、次に同じような嵐が来た時、全然気にならなくなったという経験は、人生で何度もあったといいます。「それに、同じことで困っている人を助けることもできるようになります」

みきさん(4年)は、「心が動かされたエピソードを聞いてみたいです」とリクエスト。のりたけ先生は、スタジオジブリの宮崎駿監督が、「ああ~めんどうくさい、めんどうくさい!」と言いながら絵をかいている映像を見て、勇気をもらったそうです。

「絵をかくのは、時間がかかるし、本当にめんどうくさくて、体力的にもきつい。でもあの宮崎監督も同じように思っていると知り、僕もがんばろうと思いました」

のりたけ先生の話から、創作の大変さを知ったリポーターたちでした。

鈴木のりたけ(すずき・のりたけ)

鈴木のりたけさん

 1975年、静岡県生まれ。JR東海の社員、グラフィックデザイナーを経て絵本作家となる

のりたけ先生の素顔を見た!

朝小リポーターがインタビュー

 絵本作家の鈴木のりたけ先生に、朝小リポーターがいろいろな質問をしました。

えまさん(3年)
どうして作家になろうと?
自分のことをみんなに知ってほしくて

Q(質問) どうして作家になろうと思ったのですか?

A(のりたけ先生の答え) 以前、広告の絵をつくるデザイナーをしていたのですが、名前が出ない仕事だったので、さみしいなと思っていたんです。一方で作家は、自分の名前はもちろん、自分がどういう人間なのかが表に出ます。自分のことをみんなにもっと知ってほしいと思い、作家になりました。

Q ふだん、どんな1日を過ごしていますか?

A 朝7~8時に起きて、すぐコーヒーをいれて、新聞を読みながら飲みます。その後、家のそうじやラジオ体操をして、朝ごはんを食べます。

起きてから3時間後くらいに、アトリエに来て絵をかき始めます。夕方5時くらいに家に帰って、夕ごはんを食べてお風呂に入り、ボードゲームをしたりします。夜の10時半から11時くらいに寝ます。8~9時間寝ます。睡眠は大事。寝ることが大好きです。ストレス解消法はテニス!

のりたけ先生が使っている作業づくえを見せてもらったり、画材を紹介してもらったりもしました。リポーターたちは大感動!

みきさん(4年)
夢がコロコロ変わるのですが…
真心をこめて一つひとつやろう

Q 気に入っている大ピンチはありますか? 本にかいていないものでもいいです。

A この間、サイン会に来てくれた子がこんな大ピンチを教えてくれました。「シャンプーを出したと思ったらリンスだったので、リンスを手に持ったまま、もう片方の手で頭を洗った」と。その様子を想像したらツボにはまって、涙が出るくらい笑いました。『大ピンチずかん4』が出たら、絶対かきたい。

Q のりたけ先生は、新幹線の運転士やデザイナーを経験して作家になったと聞きました。私は将来の夢がコロコロ変わるのですが、のりたけ先生はどのようにそれぞれの夢をかなえていったのですか?

A それぞれの夢を「成し遂げた」わけではないんです。仕事に就いて、「なんかちがうな」と思ったら、ふらふら~っと別の仕事に就いて、いま絵本作家になっています。

なりたいものがコロコロ変わるというのは、とてもいいと思います。まだ若いし、いろんな可能性があるから、「私は絶対にこれになる」と自分をしばるようなことはせず、やりたいことをやってみたらどうでしょう。でも一つひとつに真心をこめてやるのが大事です。「ちがうな」と思ったら、「さよなら!」とはなれてもいい。後になってさよならしたものが、また生きてきたりするものです。

のりたけ先生の話を聞き、メモを取ります

かいさん(2年)
子どものころの話を聞かせて!
こにくたらしい子どもでした(笑い)

Q 子どものころ、読んでもらった本を教えてください。

A 本を読んでもらった記憶はあまりないです。でも、僕は図鑑を見るのが好きだったので、母親につきあってもらっていました。図鑑をパッと開いて「どーれがいい?」と言ってパッと指をさす遊びをいっしょにしていました。

Q 子どものころ、しかられたことはありますか?

A ありますよ! 僕はしかられると、「こんな家出てく!」と飛び出していくような子どもだったんです。でも、親が追いつけるくらいの速度で、「本当に出ていっちゃうよ?」と後ろを気にして(笑い)。

何回もそういうことをやっていたら、親が追いかけてこなくなってしまいました。それで、裏の道から家の敷地内に入り、じっと隠れていたんです。いよいよあわてた母親が、外に僕を探しにいく姿を見て、家に入ってお茶を飲み、「よしっ」と。こにくたらしい子どもでしたね(笑い)。

のりたけ先生といっしょに『大ピンチずかん』を見ました

取材を終えて

鈴木のりたけさん(左から2人目)のアトリエで取材した朝小リポーター=6月14日

教えてもらった道具で絵をかきたい

えまさん(3年) アトリエはとても広く、ソファがあり、そこで質問をしました。「子どものころ好きだった本は何ですか?」と聞きました。すると、のりたけ先生は図鑑が好きで、かこさとしさんの科学絵本シリーズが好きだと答えました。次に、絵をかくときの道具をたずねると、アクリル絵の具、カラーインク、パステル、ドローイングペンなどを使っていると答えました。

 初めは少し緊張したけれど、話してみたらとても楽しかったです。教えてもらった道具を使って絵をかいてみたいです。

私の大ピンチ 笑ってほしい

みきさん(4年) 一つひとつの質問をじっくり考えて、答えてくれました。私の好きなレジンのことも教えてくれて、こんな人だったらおもしろい本がかけるなと思いました。

将来の夢も、一つのことに専念しなくても、コロコロ変わっていい。将来の夢(職業)があるのはいいことで、夢中になることを誠実にやっていくと、いつかそれが私の個性や強みになるんだよと言ってもらいました。安心したし、うれしかったです。

いつかまた、のりたけ先生に会って、私の大ピンチを聞いてもらいたい。そしていっしょに大ピンチを笑ってほしいです。

夢を追いかけてカッコいい

かいさん(2年) のりたけ先生は子どものころ、地球の災害のしくみや、人間の体の構造の図鑑をよく読んでいたそうです。だから『大ピンチずかん』は「人」と「ピンチ」に注目してつくられたのかもしれないな、と思いました。

また、これからは絵本づくりだけでなく、子どもに関係するお仕事にもチャレンジしていきたいそうです。今に満足しないで、いつまでも夢を追いかけていてカッコいいです。

(朝日小学生新聞2025年7月8日、7月11日付)

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