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映画のエンドロールに制作陣以外の名前が多くクレジットされているのを見て、驚いたことはないだろうか。実際に作品の規模によっては、1本の映画が公開されるまでにさまざまな業界の人間が関わることも少なくない。「普段何気なく観ている作品たちがどのような仕組みの中で作られているのか気になる」という人にこそ手に取ってほしいのが、今回紹介する書籍「映画ビジネス」だ。

●「製作委員会方式」に見るメリット・デメリット

本書の著者である和田隆は、映画業界紙の記者を17年間務めてきた経歴を持つ映画ジャーナリスト。業界のあらゆる面を知り尽くした彼によると、日本における映画作りの方式は大きく分けて4種類あるという。

なかでも作品の規模にかかわらず多くのケースで採用されているのが、製作に複数の会社が参加する「製作委員会方式」だ。この方法では、テレビ局、配給会社、広告代理店、出版社といった多種多様な会社が出資をおこなうのが特徴。

ヒットして利益が出た場合、出資比率に応じて収益を得るとともに、各社が放映権や配給権、関連書籍の出版権などの権利を取得して窓口となり、それぞれのビジネスを展開します。

(※注)

「製作委員会方式」のメリットは、膨大な製作費を1社だけで負担せずにすむ点である。リスクヘッジしつつ、利益の回収を目指すことができる。ただし複数の会社が関わることで、製作の方向性について意見が割れ、スムーズに映画を作れないことも。

一方で製作委員会を介さない「単独製作」や制作者が自己資金を用いる「自主製作」、不特定多数に少額ずつの出資を募る「クラウドファンディング支援制作」では、作品の内容に関する縛りが少ないという利点がある。広報などにかけられる資金は「製作委員会方式」ほど多くないためヒット作は出にくいが、成功例がまったくないわけではない。例えば上田慎一郎監督による映画『カメラを止めるな!』は、「単独製作」の方式で作られた話題作の代表例だ。

●映画祭はインディ系映画の売買会場

劇場で公開される映画は、もちろん邦画ばかりではない。海外で制作されたいわゆる“洋画”もまた、さまざまな配給ルートを通じて日本国内で上映されている。

そもそも映画の“配給会社”とは、映画の上映権をはじめとする権利の買い付けに加え、映画館への営業、作品の宣伝といった部分を担う存在。多くの会社があるが、扱う作品の規模や系統によって洋画メジャー会社と独立系会社にそれぞれ分けられるのが特徴だ。

洋画メジャー会社、東宝東和、東和ピクチャーズは、主に全世界マーケット向けの作品を日本向けにローカライズして配給宣伝。それ以外のヨーロッパや東南アジア、韓国、中国、インドなどの世界中の映画をインディ系の会社が主に配給宣伝しています。

(※注)

著者の和田曰く、洋画メジャー会社と独立系会社では配給作品の調達ルートも異なる。特にインディ系の映画を買い付ける際には、世界中の映画祭および映画マーケットに足を運ぶことが多いという。

映画マーケットには、世界中から作品が出品されますので、映画バイヤーと呼ばれる担当者は、出品リストから監督や脚本家、出演俳優などで目星をつけて、鑑賞します。作品によっては企画書だけ、シナリオ段階のものもあり、それを読んで、ヒットする可能性のある作品、日本で公開する意義のある作品を見極めます。

(※注)

●作品のヒットを左右する“宣伝”の仕事

映画のヒットを左右する要素として挙げられるのが、“宣伝”である。なかでも予告編の制作は、一般の人々にとってもイメージしやすい宣伝方法のひとつだろう。

その作品が一番打ち出したいものは何なのか。物語を中心に伝えるのか、俳優をメインにするのか、監督の作家性を押し出すのか。メインターゲットの観客層を考慮しながら、本編のどのシーン、カット、セリフを使うのか。さらにタイトルやキャッチコピー、デザインに至るまで、チラシとポスターのデザインと合うように編集したりします。

(※注)

海外作品ですでに本国向けの予告編がある場合でも、日本向けに制作し直すことが多いという。

映画にとって宣伝は非常に重要な仕事です。作品が持つ興行力以上のヒットに導くこともあれば、宣伝を間違うとヒットの可能性、作品自体をつぶしてしまうことさえあるのです。

(※注)

華やかに見える映画業界の裏側。ビジネスとしての側面を意識してみると、映画の新たな楽しみ方が生まれるかもしれない。

※注)和田隆『映画ビジネス』より引用

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