『少年ジャンプ+』で連載され、2022年にはNetflixにてアニメ化された『ロマンティック・キラー』の実写映画化が先日発表された。それぞれ異なるグループに所属する高橋恭平(なにわ男子)、木村柾哉(INI)、中島颯太(FANTASTICS)が主演を務める異例のキャスティングが話題となるなか、作中唯一のヒロインとして、同じく主演に抜擢されたのが上白石萌歌だ。
人気ボーイズグループのメンバー3人が、ひとつの映画で“同級生”になる。12月公開の映画『ロマンティック・キラー』にて、上白石萌歌…
こんなにも“多才”で“多彩”な20代の若手俳優は、他にいないのではないか。アーティストとしては「adieu」名義でこれまで4枚のミニアルバムをリリース。さらに、「POPEYE Web」で連載されている「ひとりがたり」では、何気ない日常の機微を映しとった素朴なエッセイを執筆している。さまざまなカルチャーの土壌で多彩な才能が日に日に芽吹いていくのを実感しつつも、どこか彼女を身近な存在だと思えてしまうのは、どの場所に立っていても彼女が紡ぐ言葉は柔らかに、そして軽やかに伝わってくるからだ。
映画『366日』で主演を務める赤楚衛二とヒロインを演じた上白石萌歌。本作は、2008年に発表されたHYの楽曲「366日」をモチー…
もちろん俳優としてもデビュー以降は目覚ましい活躍を続けている。年始の公開からロングランの大ヒットとなった『366日』での好演も記憶に新しいなか、先日最終回を迎えたドラマ『イグナイト –法の無法者–』(TBS系)では、ピース法律事務所のムードメーカー・伊野尾麻里を最後までチャーミングに演じきる。共演の間宮祥太朗や仲村トオルにも臆せずにアドリブを仕掛けていく姿には、勇ましさを通り越して、もはや頼もしさを感じるほどだった。
俳優活動初期からミュージカル『赤毛のアン』や『魔女の宅急便』で主演を務めあげた上白石が見せる芝居には、誇張された飾り気がない。だからこそ、“原作もの”と呼ばれる作品に出演して、すでに世間のイメージが構築されているキャラクターを演じていても、自然な芝居が成り立つ。そして、キャラクターにハマればハマるほど、彼女の愛嬌が溢れ出るような魅力的な芝居を見せてくれる。
上白石が着々と舞台を踏んだのち、大きな脚光を浴びることになったのが、第13回本屋大賞を受賞した宮下奈都の同名小説を映画化した作品『羊と鋼の森』(2018年)だ。
ピアノを弾く佐倉家の双子姉妹を、姉の上白石萌音とともに演じた同作において、彼女は第42回日本アカデミー賞新人賞を受賞。萌歌が演じた妹の由仁は明るく人懐っこい性格で、落ち着いた静謐なピアノを弾く姉・和音(上白石萌音)と比べても、軽快なリズムで弾むように鍵盤を叩く。実の姉とともに息のあったコンビネーションを見せるピアノの連弾シーンでは、まとう雰囲気や表情の機微にも姉妹の些細な違いを色づかせて、ふたりのパーソナリティをうっすらと色分けする。原作小説では、外見はそっくりだけど、ピアノを弾くときは異なる音色を奏でる双子として描かれる彼女たち。そんな細やかな演じ分けが必要となる役柄を任せられるのは、きっと上白石姉妹以外にはいなかっただろう。