そしてこの壮大な企画の首謀者である大森に話を聞くべく、控室を訪れた。しかし大森の姿はそこにはない。スタッフに尋ねると、奥の簡易マッサージルームにいるという。静かにそこを覗くと、整体師に体をほぐしてもらっている大森が、半分目を閉じながら、うとうとしている状態だった。それでも取材に真摯に答えてくれた。
「すごいことしたなって思います」と大森はゆっくりと口を開いた。「自分の中でやりたいと思ったことを、何の力にも捻じ伏せられることなく、ピュアに作れました。本当に関わってくださった方たちに感謝です」
続けて、今日という一日を振り返って語った。「賞をいただくことも本当に光栄でこの上なく嬉しいけど、同時に重いものを背負う感覚もある。でも今日は違いました。音楽を始めたあの時の感覚を思い出して、本当に大げさじゃなくて、マジで音楽を始めて良かったなと思いました」
様々な重圧の中でも仲間と笑い合い、最後まで責任を全うし続けた大森。そんな彼が最後に辿り着いたのは、音楽への純粋な愛だった。すべての困難を乗り越えた先にある達成感が、彼の疲れきった表情の奥で穏やかに光っていた。
そんな大森に、「この調子だとフェーズ2はまだまだ終わらなさそうですね」と問いかけると、「ふふ。そうかもね。どうなっちゃうんだろうって感じですね」と、少しはぐらかすように微笑んだ。
『CEREMONY』を企画・プロデュースをし、ステージでは2万人の心を一つに束ねた偉大なフロントマン。しかし、いま目の前にいる大森は、とても小さく無防備で、愛おしい存在に見えた。多くの責任を背負い、大きな夢を追い続ける表現者の、安らかな表情がそこにあった。
12時間の密着取材で見えてきたもの——それは、日本の音楽業界を変えようとする3人の物語だった。アーティスト同士の壁を取り払い、互いを讃え合う文化を生み出す。それは単なる理想ではなく、Mrs. GREEN APPLEという唯一無二のバンドが実現しようとした新しい音楽の形だった。そしてその中心には、この壮大な挑戦を発案し、実現まで導いた一人の男がいた。
