仕事に役立つ本を見つけるにはどうすればいいのか。コンサルタントの山口周さんは「キャリアを充実させるには、経営戦略論の本を読んでおくべきだ。筆者はかつて日本一給料が高いといわれた電通で働いていたが、経営学を勉強したことで辞めることを決意した」という――。
※本稿は、山口周『読書を仕事につなげる技術 知識が成果に変わる「読み方&選び方」の極意』(角川文庫)の一部を再編集したものです。
20代は視座を上げる読書が必要
人生のどの時期にどのようなインプットをするかを考えることは、とても大事です。
まず20代であれば、自分が専門とする領域の本は少しずつ深めながら、マンダラのコアにある書籍について目を通しておけばいいと思います。
マンダラの中心部にある本は全カテゴリーの代表的な入門書ですが、これらの本を読むことで「企業というものがどういう論理で動いているのか」ということがおおむね理解できるようになります。視座が上がるのです。
これは特に大企業で顕著だと思いますが、20代の人が自分の仕事を通じて眺められる範囲というのはそんなに広くありません。ある狭い領域を任されて、その中でしっかりと仕事をやり切る、ということを先輩や上司から言い渡されているはずです。
もちろん、与えられた狭い範囲についての専門性を深めることは重要です。しかし、それだけをやっていたのでは30代につながる視座がなかなか得られません。これは優秀な人、成果をあげる人に共通している要素ですが、常に10歳上の人の視座に立ってモノゴトを考えてみることが大切です。その癖をつけるためにも、マンダラのコアにリストアップされている書籍はぜひとも20代で、できれば数回は読んでおいてほしいものです。
経営戦略論が、なぜ人生の役に立つのか
マンダラのコアにリストアップされている本を20代に読んでおいたほうがいいのは、これらの本が「自分の人生の戦略」を考えるにあたってとても有益だからです。
マンダラのコアにリストされているのは経営戦略、マーケティング、ファイナンスの基本書籍ですが、これらの本を通じて得られる知識は「自分の人生の戦略」を思い描くのにとても有用です。例えばマンダラのコアにリストされている経営戦略論について考えてみましょう。経営戦略論にはさまざまなコンセプトがありますが、突き詰めて考えればどのコンセプトも主張しているのは同じで、「どの戦場が美味しいのか」「どの戦場なら勝てるのか」という2つのポイントを押さえれば勝てるというのが教えです。
美味しい戦場とは収益性が高く、成長力のある市場のことです。ビジネスをやるのであれば、誰でもそういう市場で戦いたいでしょう。しかし、そういった市場に皆が出てきてしまえば、競争は熾烈になります。そうすると次に問題になるのが、「そこで勝てるのか?」です。「美味しくて勝てる」。そういう市場を見つけてそこで戦う。経営戦略論には分厚い教科書がたくさんありますが、それらの書籍が論じているのは、極論すればこの2つのポイントしかありません。そして、この論点はそのまま、「人生の戦略」を考えるにあたっても有効です。