映画 罪人(つみびと)たち

《悪魔と踊り続けていると、悪魔が家のなかにまでついてくる》という台詞(セリフ)が、映画の序盤に出てくる。なるほど。ブルーズとは心の平安のみならず、悪霊をも呼び寄せてしまう音楽だったか。

 ましてや、映画の舞台は1932年のミシシッピ州クラークスデールだ。ブルーズの愛好家なら、反射的にロバート・ジョンソンの名を思い浮かべるにちがいない。27歳で夭折したこの天才は、この町のクロスロード(十字路)で悪魔に魂を売り渡し、超絶的なギターの腕前を手に入れた、と伝えられている。

 もっとも、「罪人(つみびと)たち」にジョンソンの名は出てこない。出てきたのは、同時代で最も人気があったチャーリー・パットンの名前だ。主人公の双子の兄弟スモークとスタック(マイケル・B・ジョーダン二役)が従弟(いとこ)のサミー(マイルズ・ケイトン)にギターを与える場面。パットンのギターだったと聞いて、サミーは眼を輝かせる。



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