
キュートなルックスと抜群のプロポーションでグラドルとして絶大な人気を誇り、映画「サムライガール21」(及川中監督)で俳優デビューした佐藤江梨子さん。「プレイガール」(梶間俊一監督)、「キューティーハニー」(庵野秀明監督)、「口裂け女」(白石晃士監督)、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(吉田大八監督)など主演映画も多数。2022年に公開されてスマッシュヒットを記録した映画「きさらぎ駅」(永江二朗監督)の続編となる映画「きさらぎ駅:Re」(永江二朗監督)が公開中。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)
■やりたい放題の超絶ワガママヒロイン役で圧巻の存在感

2007年、映画「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」に主演。この作品は、俳優を目指して上京したものの全く芽が出ない自意識過剰の勘違い女・澄香(佐藤江梨子)が帰省したことをきっかけに巻き起こる騒動をブラック・ユーモアたっぷりに描いたもの。
佐藤さんは、自己チューで超ワガママな主人公・和合澄伽役を体当たりで演じ、第29回ヨコハマ映画祭主演女優賞を受賞した。
「この映画はすごかったんですよね、本当に。結構ロングランでしたし、それこそカンヌ国際映画祭に行かせていただいたり、様々な映画祭に呼んでいただきました。
すごくうれしかったのは、吉田大八監督にその後他の現場でたまたまお会いしたことがあったんですけど、『子どもができました』って発表したら、監督からお花が送られてきて、『これからが人生がもっと面白くなる』って書いてあったんですよ。実際毎日大変ですけど、確かに面白いなと思って」
――「腑抜けども〜」の澄伽さんは強烈なキャラでしたね
「自分では何を見てもなんですけど、『もっとこうすればよかったかな』とか、『もっとこれの方が良かったかな』とか、ずっとエンドレスに思っちゃいますね。そのときにできるのは、それが精一杯だったんだというのはわかっているんですけど、それでもやっぱりそう思ってしまうんです」
――迫力があって出てきた瞬間から圧倒されました
「自意識過剰の勘違い女で…全然めげないところが好きでした。やっていて面白かったです」
傍若無人に振る舞う澄伽の最大の被害者が、妹・清深(佐津川愛美)。俳優として全く売れないのは自分が超絶ワガママで演技の才能が全くないからなのに、かつて自分の秘密を清深が漫画に描き暴露してしまったせいだと、壮絶ないびりを受けることに。漫画家になるために東京に行くことになった清深を澄伽が追いかけ回すシーンも印象的だった。
「走ることはもともと好きだったんです。あのとき、佐津川さんはまだ高校生だったんですけど、『私は高校生のとき、学年で3位だったから、マジで走るからね』って言ったら怖かったらしくて、一生懸命走ろうとして佐津川さんが思いっきり転んじゃって。
『佐藤さん、そうやって澄伽さんみたいに怖がらせるのはやめてください』って言われたんですけど、『いや、私は怖がらせたくて言っているわけじゃないですから』って」
――完成した映画をご覧になっていかがでした?
「劇中ではぶつかり合っていますけど、みんなすごく仲が良かったんです。やっぱりそういう殺伐としているような役は家族だからだったんですけど、すごくきれいに撮っていただいて、ありがたいなって思いました」
――きれいでカッコ良いけど嫌な女でしたね
「そうですよね。でも、自分の中では正しいと思っているからすごく不思議な行動をとってしまうみたいなところは、やっていて面白かったですね」
――あれだけ振り切っていると、見ていて気持ちいいですね
「ありがとうございます。私は、どんな役をやっても『振り切っていますね』って言われるんですけど、自分の中では振り切っているというより、イメージがつきやすいのかな…って思います」
――「腑抜けども〜」は佐藤さんの代表作と言える作品になりましたね
「ありがたいです、本当に。そういう風に年齢が上の方も若い方にもたまに言っていただいたりして。今やっている作品が、インスタみたいなことをよくやっている役だったんです。
それで、私がステキだなと思っている女優さんとかはどういうインスタをあげているのかなって思って検索してみたら、私の映画を見ていてくれていて『腑抜けども〜』のことが書いてあったんですね。全然年齢層が違うし、お会いしたことはないけど、うれしかったです」
■カンヌ国際映画祭でシルベスター・スタローンと…

「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」は、カンヌ国際映画祭の批評家週間にも出品された。
「初めてカンヌに行ったんですけど、映画の上映前にカンヌで賞を取ったコマーシャルも流したりするんですよ。それがたまたま車に思いっきり轢かれて…みたいな話だったんですけど、『腑抜けども〜』も冒頭で車に(両親が)轢かれるシーンから始まるじゃないですか。
それが一緒だったから、『同じだ。こんな偶然あるの?』って、そこで大爆笑していました(笑)。それこそ、カンヌジョークが入っているなあって驚きました。それがすごく印象に残っています。
そのときは皆さんのリアクションが見たいなと思って席に座って見ていたんですけど、それでこんなことがあるんだと思った記憶があります」
――カンヌには何日ぐらい行っていたのですか
「3、4日ぐらいしかなかったんですよね。(日本での)公開が近かったのと、番宣もしなくちゃいけなかったので、制作チームと3泊4日ぐらいしかなかったと思います。でも、楽しい経験でした。
エレベーターに乗ったらシルベスター・スタローンさんがいてすごく紳士的だったし、ハリウッドの方もヨーロッパの俳優さんもすごいフランクで優しくてきれいだったり…。他の国の俳優さんとお話をする機会はあまりなかったんですけど、少しお話させていただいたりして。すさまじく拙い英語ですけど楽しかったですね」
同年、「鶴瓶のスジナシ」(TBS系)に出演。この番組は、笑福亭鶴瓶さんとゲストが、台本ナシのぶっつけ本番で即興ドラマを演じるバラエティー。佐藤さんはセーラー服で登場して話題に。亡くなった母親のことを父親(鶴瓶)と話しているうちに予想外のことになっていく…という展開。
――セーラー服で…というのはご自身のアイデアだったそうですね
「そうです。やっぱり若いときしかできないじゃないですか。ギリギリみたいな感じで(笑)。
『腑抜けども〜』の撮影のときが、24、5歳ぐらいで、そのときも制服姿の撮影みたいなのがあったんですよ。高校時代というシーンがありましたから。
『24、5で制服か』って(笑)。制服を着られる期間って短いじゃないですか。私は制服みたいなのはいつぐらいまで着られるのかなと思って。
制服をスジナシで着させていただき、もうこれで制服姿も終わりかなと思って、記念だから制服を着ておくかって着てみたんです(笑)」
――最初はストーリーを組み立てて…と考えていたとか
「そうそう。スジナシだから、筋はなくて行き当たりバッタリなんですけど、『書くことが好きだから組み立てて行きます』と言ったら却下されました。
『あれはスジナシだから台本は用意しません』って言われて、結構からかわれていました(笑)。その当時はスジナシという意味を理解してなかったんですよね」
――でも、スジナシはいろいろ考えて行っても、鶴瓶さんがどう返してくるかはわからないわけですよね?驚きの展開でした
「そうなんです。最後は背中に羽根を付けていて、実は、私は死んでいたということなんですけど、テレビでは羽根が見えなかったんですよね。シャツに小さい羽根を付けていたのが、白に白だったからわからなかったみたいで。
結構考えて行ったんですけど、やっぱり怖いですよね。今だったら何も考えないで、その場で臨機応変にしゃべって…ということができると思うので、再トライしたいなという感じはあります。
何か即興みたいなことですよね。私は、今も演技レッスンみたいなものはよく受けるんですよ。今の時代って、結構『肯定しなさい、肯定しなさい』という感じで、誰に対してもわりと否定的なことを言うんじゃなくて、肯定しますよね。
その練習もそうなんですけど、見たものを肯定しながらそのまま言う即興みたいにやっていたときに、すごく褒められたんですね。たまたまなんですけど、それを今ちょっと思い出しました。だから、また新たにやってみたいですね」
■中学1年生のときに神戸で阪神・淡路大震災

2008年、映画「秋深き」(池田敏春監督)に出演。この作品は、地味で平凡な中学教師の八田(八嶋智人)が、一目ぼれした胸の大きな美人ホステスの一代(佐藤江梨子)と結婚。幸せな日々を送るが、一代が思いがけない病に…という内容。
「乳がんになってしまう役でした。『秋深き』も大好きな作品です。池田監督がすごく優しくて。私は、監督のファンなんですよね。何かいろんな監督に本当に優しくしていただいたなという記憶がすごくあります」
――佐藤さんが演じたヒロインは優しくて献身的でステキな女性ですよね
「ありがとうございます。自分の引き出しに全然ないような女性だったので、やっていてとても楽しかったです」
――八嶋さん演じる旦那さんは、彼女の過去が気になって仕方がないというのもわかりますね
「佐藤浩市さんが元カレで、今の旦那さんが八嶋さんというのも面白かったです。でも、佐藤浩市さんのセリフに『俺は口説いて、口説いて、口説いたけど結局ダメだった』というようなセリフがあったので真偽は定かじゃないですけど。自分は好きだったけど報われなかったのに、八嶋さんは結婚しているんだから自信を持てと言っていましたね。池田組は本当にみんなが仲良くて幸せな時間でした」
――本当に可愛らしいステキな女性でしたね。家庭に恵まれなかったから夫との家庭生活を大事にしたいという思いが伝わってきました
「ありがとうございます。流れている音楽とか、全部に意味があって…ということを監督に教えていただいて。佐藤浩市さんは、やっぱり後ろ姿だけですごくカッコいいんですよ。当たり前なんですけど」
――いいキャスティングでしたね。3人のバランスも
「ありがたいです。でも、一代は病気になっちゃって…。ようやく幸せになったと思ったのに…切ないですよね」
2010年、「その街のこども 劇場版」(井上剛監督)が公開。この作品は、阪神・淡路大震災から15年目にあたる2010年1月17日に放送されたスペシャルドラマ(NHK)を新たな映像を加えて再編集したもの。実際に震災を体験している森山未來さんと佐藤さんが主演。
子どもの頃に阪神・淡路大震災を体験し、現在は東京で暮らしている勇治(森山)と美夏(佐藤)が、「追悼のつどい」が行われる前日に偶然神戸で知り合う。そして、震災から15年目の朝を迎えるまでともに過ごすことに…。
「もともとはテレビドラマだったんですけど、劇場版になって、『その街のこども』のファンの方が劇場にたくさん足を運んでくださってありがたいなって思いました。
阪神・淡路大震災のときは中学1年生だったんですけど、こういうことが起きるんだと思って。それがテレビドラマになって、最終的に映画になったという意味は大きいと思うんですよね。
(脚本の)渡辺あやさんは、その後朝ドラとかいろいろな作品を作るんですけど、『震災のことをちゃんと描いてから、戦争のことも描いてもいいんじゃないかと思えるようになった』とおっしゃっていて、すごいなって思いました。
でも、確かに私も震災を経験してから、戦争に対してとか、震災に対して見方が変わったというのはすごくありますね」
――震災を題材とした作品のオファーを受けたときはどう思われました?
「自分が演じた役と重なる部分があるということもあるんですけど、『自分は本当にこういう経験をしたから、これを演じていいのかな?』みたいな葛藤もありました。
同じく震災を経験した森山(未來)さんみたいに、『自分は震災とこういう向き合い方をしているという思いが、自分にも本当にあったんだろうか?』って、ハッとしたことはありました」
――震災から30年経ちますけど、ご自身の中ではどういう風にとらえていらっしゃいますか
「昔は『100年に1回の地震だ』と言われたけど、近年でも能登とか、311もそうだし、たくさん起こっていて。今年もまた地震があるみたいなことが言われているじゃないですか。
だから、いつ起こってもおかしくはないということは思っています。
やっぱり日常生活を大事にしながら、防災とか、そういうことはちゃんと考えたいなと思いますね。自分自身も震災で中学のときに亡くなっていたかもしれないなと思うことがよくあって。これはもうおまけの人生だからと思って。だから、あまり悩みすぎず、考えすぎず、今あることに一生懸命打ち込んでいけたらなとは思います」
――阪神淡路大震災から30年ということで、今年1月にリバイバル上映されましたね
「はい。井上(剛)監督と森山未來さんと私で舞台挨拶みたいなことがあったんですけど、吉田大八監督も同じ日に違う作品の舞台挨拶があって、わざわざ控室に来てくださったんですね。びっくりしすぎちゃったんですけど、それがすごくうれしくて。
やっぱりずっと若い頃のペースでは仕事も入れられないし、『自分のことなんて…』ってすごく思っていたんですけど、吉田監督がたまたまなんだけど、山田あかね監督と来てくれてすごいうれしくて。
『自分は下手だな』って、何を見ても毎回毎回反省会みたいな風になっちゃうんですけど、監督がみんな優しいなと思って感動しました」
私生活では2015年に結婚し、第一子となる長男が誕生。出産から3カ月後に昼ドラマ「嵐の涙〜私たちに明日はある〜」(東海テレビ)に主演。次回はその撮影裏話、映画「リングサイド・ストーリー」(武正晴監督)、映画「きさらぎ駅」、公開中の映画「きさらぎ駅:Re」の撮影エピソードなども紹介。(津島令子)
ヘアメイク:大森裕行
スタイリスト:奥田ひろ子