私の本やユーチューブ、テレビ出演などを見聞きしている方なら、おわかりだと思うが、これを機に私のことを初めて知る方もいるかもしれないので、最初にひとつ大事なことをお伝えしておきたい。
 それは、私は元来、本書のタイトルにある「バカ」のような乱暴な言葉を平気で使うような人間ではないということだ。
 自分で言うのも何だが、それなりに思慮深く、かつ激高することもまずない、きわめて穏やかな性格だと思っている。争いごとなどまっぴらごめんなので、面と向かって他人に「バーカ」などと言ったこともない。
 ではなぜ、そんな私が、本のタイトルという大事な“看板”に「バカ」という言葉を使ったのか。
 正直に言うと、編集者の口車に乗せられたというのが真実だ。しかし、本書の内容の責任は私にあるので若干言い訳すれば、いわゆる「壁」問題が取りざたされるようになって以来、財務省を中心とする霞が関、自民党を中心とする永田町、新聞・テレビを中心とするマスコミが、三者三様に繰り出す的外れ、調子っぱずれな主張について、「バカ」という言葉以外で表現のしようがなかったからである。
 詳しくは本文に譲るが、「103万円」にせよ「160万円」にせよ、「壁」となって国民が豊かになるのを妨げているのは、実は金額の大小ではない。その数字の裏にこそ、本当の「壁」が存在するのだ。さらに、そのように「壁」の定義を絶妙にズラし、変えることによって得する最高権力の“闇”が確実に存在するのである。
 では本当の「壁」とは何なのか。それが私が定義した、財務省=霞が関、自民党=永田町、そして新聞・テレビ=マスコミが、国民から真実を隠すために建てた「壁」=バカの「壁」である。これが今の日本を蝕(むしば)む真の問題なのだ。

 私が大蔵省に入省したのは、今から45年前、すなわちほぼ半世紀前の1980年のこと。以来、ずっと間近で、“闇”の奥から壊れたマシーンのように「増税」を繰り返し指令し、“省益”のためなら国民を犠牲にすることも厭(いと)わない財務官僚、彼らの意のまま「インナー」だけで政策を進めてきた政治家、そして、その“ポチ”と化した記者たちの姿を見てきた。
 彼らこそが、バカの「壁」のなかの住人たちだ。お勉強しかできない“秀才バカ”にもかかわらず、自分たちをエリートだと勘違いしている彼らは、「財務省解体デモ」を見るまでもなく、今やその壁が自分たちに倒れかかろうとしていることすら知らない。

 俗に「バカにつける薬はない」といわれる。だが、本書に登場する「壁」のなかのバカな面々によく効く薬が、実はひとつだけある。それは、財務省の「増税バカ理論」の片棒を担いでいるバカ政治家に、選挙のたびに制裁を下すことだ。
 本文で詳しく説明するように、財務官僚の強さは、政治家の力をはるかに凌駕(りょうが)している。それでも制度上は、財務大臣をはじめとする政治家の下に仕える立場だ。
 だからこそ、政治家にしっかりと「バカにつける薬」を塗りたくり、「国民の暮らしを考えず、財務省のほうばかり見ていると大変なことになりますよ」と、親切に教えてあげるのだ。
 そうすれば、バカの「壁」は間違いなく崩壊する。
 壁が壁である限り、それは必ず乗り越えられるし、打ち倒せるのだ。
 私はもとより、国民民主党の玉木雄一郎代表、あるいはガンとの闘いの末に亡くなった経済アナリストの森永卓郎さんなどが、財務省の攻撃に負けず、ときに、それを巧みにかいくぐりながら、人々にとって本当に必要かつ大事な“闇の真実”を発信し続けた。
 そうした、これからの時代に絶対に必要な大事な知見、かつ最新情報を、本書にできる限り詰め込んだつもりだ。
 あとは、それらを読者の皆さんが有効活用してくれれば、これ以上の喜びはない。

 気づいたら、「はじめに」だけで「バカ」を13連発してしまった。これ以上書くと私の品位が疑われかねないので、ここらで打ち止めとしておく。

以上は本編の一部です。詳細・続きは書籍にて

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