渡辺一貴監督作『岸辺露伴は動かない 懺悔室』(以下、『懺悔室』)が5月23日に公開された。

 本作は、NHKドラマ『岸辺露伴は動かない』(NHK、以下『岸辺露伴』)の劇場映画第2作目だ。 主人公は人を本に変えて記憶を読んだり、行動を操ることができる「ヘブンズ・ドア―」という能力持った漫画家・岸辺露伴(高橋一生)。物語は露伴が行く先々で遭遇する奇妙な出来事を描いた怪異譚となっている。

 今回の舞台はイタリアのヴェネチア。大学で行われる文化交流会に参加するためヴェネチアにいち早く訪れた露伴は、町並みを取材する中で教会の懺悔室に入るのだが、そこで神父と間違われ、水尾(大東駿介)という男から奇妙な話を聞かされる。

 25年前、水尾はソトバ(戸次重幸)という浮浪者を事故死させてしまい、ソトバは死の間際に幸福の絶頂の時に絶望を味わわせるという呪いの言葉を水尾に浴びせる。

 その後、水尾には次々と幸運が訪れ、ビジネスで成功し家族を持つようになったが、幸せの絶頂が訪れないように暮らしていた。だが、娘が広場でポップコーンを投げて食べている姿を見た時に「幸せの絶頂」を感じてしまう。その瞬間、ソトバの呪いが発動し、娘が憑依されてしまう。ソトバは水尾にポップコーンを3回、広場のランプより高く投げて口でキャッチしろ、もしも失敗したら絶望を受け入れろと脅迫する。

 『岸辺露伴』は、荒木飛呂彦の人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)から派生したスピンオフ漫画を原作としており、今回映画化された『懺悔室』は、初めて描かれた短編となっている。

 原作では、水尾とソトバのポップコーン対決が最大の見せ場として描かれる。3回目のポップコーンキャッチに失敗した水尾は絶命するが、実は水尾だと思われた男は秘書の田宮(井浦新)が整形した姿で、本物の水尾は田宮に整形して生きていたことが判明する。しかし水尾は呪いからは逃れられず、今度は田宮に呪われる。そこで原作漫画は終わり、岸辺露伴は話を聞くだけで何もせず、最後まで動かなかった。

 だからこそ『岸辺露伴は動かない』というタイトルなのだが、今回の映画ではポップコーン対決の「その後」が描かれ、漫画では動かなかった露伴が、自分の意思で“動く”姿が描かれる。

Write A Comment

Pin