1985年の設立から現在まで、Apogeeは数々の革新をもたらしてきた。スタンドアローン型AD/DAコンバーター、マスター・クロック、モバイル対応のオーディオ・インターフェース、そしてボブ・クリアマウンテンとのプラグイン開発など、その歩みは音楽制作の現場を更新しつづける“音の革新史”でもある。このページでは、技術と製品の進化を年表でたどりつつ、Ryu Kawashimaの視点を通して、Apogeeがなぜプロに選ばれつづけてきたのかを解き明かしていく。
Engineer’s Voice:Ryu Kawashima
【Profile】ロンドンのWhitfield Street Studiosでキャリアをスタート。2014年からはRed Bull Studios Tokyoを拠点に、国内外のミュージシャンと共に音楽を“造る”作業に従事している。
Photo:Takashi Yashima
Apogeeは“音の未来”を先取りするブランドです
今回Apogeeの40年の歴史を振り返って、あらためて自分は本当にこのブランドが好きだったんだなと実感しています(笑)。
Apogee製品の魅力は、40年という歳月が裏付ける圧倒的な音質の良さ。音楽を作る上で良い音で作業することは、やはり何よりも大切です。AD/DAが高品質だと判断が早くなり、制作の流れもスムーズ。逆に音が悪いと、ミックスしたのに思った仕上がりと違うといった二度手間が発生することも……。だからこそ、この部分にしっかりと投資することをお勧めします。
もう一つのApogeeの魅力は、各時代に応じて柔軟に進化を続けているところ。音が良いのはもちろんで、その上でどのようなユーザーが使うかをしっかりと見据えた製品作りがされていると感じます。その絶妙なバランス感覚こそがApogeeらしさだと思いますし、むしろ“Apogeeが時代をリードしている”と言っても過言ではありません。デザインなどを見ても、まるで未来を先取りしているような印象すらあります。だからこそ、これからの製品展開にも大いに期待していますし、心から楽しみにしています。Apogee、40周年おめでとうございます!
944 Filter(1986)
アクティブ・アンチエイリアシング・フィルター(ローパス・フィルター)。デジタル録音特有の“冷たい音質”を緩和するために開発されました。
AD-500 & DA-1000(1991)
AD-500はADコンバーター、DA-1000はDAコンバーター。これらの組み合わせは、1990年代のCDやプロ音源制作の現場で標準的なAD/DA変換機器として世界中のスタジオに導入され、Apogeeの名を一躍トップ・ブランドへと押し上げた歴史的モデルです。
UV22(1993)
CDエンコーダー。高ビット深度のデジタル・オーディオ信号を、CD規格である16ビットに変換する際、独自のディザリング技術で音質劣化を最小限に抑えることができます。
AD-8000(1997)
24ビット/8ch対応のハイエンドAD/DAコンバーター。当時在籍していたロンドンのスタジオでも頻繁に見かけた記憶があります。特にスペシャル・エディションのAD-8000は大人気。売れっ子エンジニアは“皆持っていた”と言っても過言ではないくらい。
Big Ben(2002)
マスター・クロック・ジェネレーター。2000年代初頭にクロック・ブームとも言える時期がありました。各社からクロック・ジェネレーターが次々と登場し、現場のエンジニアたちが音の違いを真剣に比較していた時期。その中でもBig Benは評判が非常に良く話題になりました。
Mini-Me(2003)
2chマイクプリ内蔵のADコンバーター兼USBオーディオ・インターフェース。高音質・高機能・携帯性を兼ね備えています。
Rosetta 200 & Rosetta 800(2004)
Rosetta 200は2ch、Rosetta 800は8chの高品位AD/DAコンバーター。透明感と深みのあるサウンドで世界的に高く評価されました。
Ensemble Firewire(2006)
Appleとの連携で誕生した、Mac専用8chオーディオ・インターフェース。当時は自宅作業用として購入し、今もなお所有するほど気に入っています。まさに現代につながるホーム・レコーディングのイノベーションを起こしたモデルだと思いますね。
Duet(2007)
2イン/2アウトのオーディオ・インターフェース。宅録ユーザー向けに大ヒット。Apogeeを一般層に広げるきっかけになったモデルで、洗練されたデザインにも衝撃を受けました。
Symphony I/O(2010)
拡張可能なモジュラー式AD/DAコンバーター兼オーディオ・インターフェース。最大32chのアナログ/デジタル入出力を、用途に合わせて自由に組み合わせ可能です。後のSymphony I/O MkⅡ登場前のフラッグシップ・モデルとして、多くのスタジオで使用されています。
MiC(2011)
APPLE iPhoneやiPadなどにダイレクト接続して使用できるUSBコンデンサー・マイク。高音質と可搬性を兼ね備えたモバイル&宅録時代のパイオニア的な製品です。
Symphony I/O Mk II(2015)
現在のフラッグシップ機。最大32chの柔軟な拡張性を持つAD/DAコンバーター/オーディオ・インターフェースです。自分も現在愛用中で、その音質は非常に良い。トランジェントが速く、レンジ感も広く、そして音楽的に鳴ってくれる印象です。使ってみると、多くのプロから選ばれる理由が分かります。
HypeMiC(2019)
アナログ・コンプレッサー内蔵のUSBコンデンサー・マイク。宅録から配信まで幅広く活躍する万能型。特に、録音時点でコンプがかかった音を手軽に得たい方に最適です。
Clearmountain’s Domain(2020)
伝説的ミックス・エンジニア、ボブ・クリアマウンテンのサウンドをDAW上で再現するために開発されたマルチエフェクト・プラグイン。世界的ヒット曲のサウンドをプリセットとして収録しています。
Symphony Desktop(2020)
デスクトップ型オーディオ・インターフェース。フラッグシップ機Symphony I/O MkⅡと同等クラスのAD/DAコンバーターやマイク・プリアンプ・エミュレーション機能、タッチ・スクリーン操作をコンパクトな筐体に凝縮しています。
Duet 3 & Duet Dock(2021)
2イン/4アウトのUSB-C接続対応オーディオ・インターフェースでDuetシリーズの最新世代。内蔵DSPによる低レイテンシー処理やコンパクトで洗練されたデザインが特徴です。
Duet Dockは、Duet 3専用のドッキング・ステーション。背面にはオーディオ入出力端子が整然と配置されているため、ケーブルの抜き差しや配線管理が容易に行えます。
BOOM(2022)
2イン/2アウトのUSB-C対応オーディオ・インターフェース。エントリー・モデルながら上位機種譲りの高音質・高機能・堅牢性を兼ね備えています。
Symphony Studioシリーズ(2024)
フラッグシップ機Symphony I/O MkⅡ直系の音質を継承しつつ、イマーシブ・オーディオ制作やホーム・スタジオ環境にも最適化されたオーディオ・インターフェース・シリーズ。自分も使ってみたところ、期待を裏切らない高解像度な音質。透明感も優れています。これからのApogee製品も、ますます楽しみですね!
Apogee 製品情報
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