いまや世界中で愛されるスタジオジブリ作品を、海外のパートナーたちがどのように届けていったのか──その軌跡を辿りながら、映画の名場面を立体造形物で紹介していく展覧会「ジブリの立体造型物展」が5月27日より開幕した。

 会場となる東京・天王洲の寺田倉庫 B&C HALL/E HALLでは、その広大なエリア内にそれぞれの作品の魅力を実体化した展示物を配置。この記事では、その内容をフォトレポートにてお伝えしていく。

会場入口では「崖の上のポニョ」のクライマックスシーンを再現した巨大なモニュメントが来場者を出迎える

テーマは「海を渡った熱風」。その軌跡を数々の名場面とともに辿る

 本展覧会のテーマは「海を渡った熱風」。今でこそ日本が世界に誇るアニメーション文化、そのなかでも人々の心に強く残る作品を送り出してきたスタジオジブリだが、海外展開という面では多くの苦難があったという。

 そんな逆境のなか、ジブリ作品を愛し、長い時間をかけてでもその魅力を自国に届けようとしてくれた海外のパートナーの存在が、今日の人気を支えていることが明かされた。

 このたび開催となった「ジブリの立体造型物展」では、そんな海外のパートナーたちの働きかけや、各国の特色にあわせたプロモーション展開の歴史などを記した壁面パネルを見ることができる一方、各作品のハイライトである名場面を、迫力満点の造形物で振り返ることができる。

 入口すぐには「耳をすませば」のバロンの立像が、少し歩を進めれば「となりのトトロ」でメイが迷い込んだ森のなかへ誘われる。住処である大きなクスノキ、そのなかで気持ち良さそうに寝ているトトロは毛並みの質感も豊かで存在感がある。

会場入口のパネル

「耳をすませば」のバロンの立像

あまりのリアルさに思わずモフりたくなるトトロだが、手を触れるのは禁止

 薄暗い森の雰囲気が再現された順路を進んでいくと、奥には「もののけ姫」のモロの君と、それに対峙するアシタカの像が待ち受けている。“もののけ姫”であるサンの在り方について、互いの想いをぶつけ合う名場面が再現されている。

険しい表情を見せるモロ、その顔に浮かぶ数多のシワも造形で表現されている

 続いては「ハウルの動く城」から、宙を舞うハウルとソフィーの立像が登場。驚きを隠せない様子のソフィーに対し、その手を取りながら余裕のある笑みを微かに浮かべるハウル。立像でも劇中シーンで描かれた浮遊感が見事に再現されている。同エリアでは、ソフィーが帽子作りにいそしんだ部屋のジオラマもあった。

劇中で表現された浮遊感と躍動感が鮮やかに表現されている

部屋のジオラマ

 同じく「ハウルの動く城」に登場する王宮へと続く階段を登ると、「君たちはどう生きるか」「平成狸合戦ぽんぽこ」「耳をすませば」「コクリコ坂から」「魔女の宅急便」のフォトスポットが展開されている。作品の世界観を再現したセットはもちろん、なかにはキャラクターのすぐ横に腰かけて記念撮影ができる場所もあり、まるで自らが作品の世界に入り込んだかのような体験を味わうことができる。

 階段を下りさらに奥へと進むと、会場のなかでもより一層暗いエリアのなかに「千と千尋の神隠し」の世界観が広がる。湯婆婆が切り盛りする湯屋・油屋の巨大さに対して、ぽつんとした千尋とその影の対比を感じれる展示があったり、料理を大量に飲み込みんで肥大化したカオナシの姿を影で表現するなど、演出に凝った展示なども用意されていた。

これまでとは一転、異様に暗いエリアは千尋と同じく異世界に足を踏み入れてしまった感覚を味わえる

 「天空の城ラピュタ」からは、パズーとシータがドーラ一味から逃げる場面や、崩壊するティディス要塞からパズーがシータを助け出すクライマックスシーンを再現した展示が登場。どちらもパースがかった展示物となっており、角度次第で異なる味わいが出る写真を撮影することができる。

写真を撮る角度ごとに違った印象が楽しめる展示は、トリックアートにも似た感覚だ

 次のエリアでは「ハウルの動く城」からガシャンガシャンとアクションする城や、荒地の魔女から呪いを受け、90歳の姿になってしまったソフィーが自らの容姿に驚くシーンをパラパラ漫画のように見ることができるパネルなど、作品タイトルにちなんでか“動き”にフォーカスした展示が用意されていた。城の動力として利用されている火の悪魔・カルシファーが鎮座する暖炉の部屋を再現したセットも。

ガシャンガシャンと本当に動くハウルの城

ソフィーのパラパラ漫画

カルシファーのいる暖炉

 最後は、本展示会でも大きな目玉となる飛行艇・サボイアS-21が待ち受ける「紅の豚」エリア。特撮作品において、「伊原式」と呼ばれるビルの倒壊シーンを編み出した特撮界のエキスパート・伊原弘氏が中心となり、木製のアート作品として制作したサボイアS-21が収められたピッコロ社の倉庫をイメージした空間が広がっている。

 ほかにも、サボイアの再設計を担当したヒロイン・フィオの仕事場を再現したセットや、「紅の豚」のハイライトを振り返るジオラマも。ピッコロ社のまかないとして登場した、あのトマトパスタとともに写真を撮ることができるテーブルもあり、来場者からの人気を集めそうだ。

 数々の展示を楽しんだ後は、賑やかな街のバザーを思わせる物販コーナーも見逃せない。「ジブリの立体造型物展」キービジュアルを使用した限定グッズや、ここでしか買うことのできない「紅の豚」Tシャツをはじめ、ジブリグッズが多数販売されている。ぜひ、来場の記念となるお土産を吟味してほしい。

隣接のお土産コーナーも充実している

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