perfect days
2023年 日独合作
ヴィム・ヴェンダース監督

淡々とした日常、ストーリーがないようであるような超薄味
それでも、観終わった満足感はずっしりとありました

日本人が日本人であることとは?
それがテーマのように思えました

判で押したような日々の繰り返し、誰も見ていなくとも仕事の責任を満足できるまで果たす平山
登場する若い世代の男女も日本人だけども、これから日本人になろうとしています
平山だって日本人だけども、いつの頃からか、日本人になったのでしょう
日本に生まれたから、はじめから日本人になれる訳じゃない
両親が日本人だからそれだけで日本人になれるわけじゃない
日本人という存在になろうとして、初めて日本人なれるのだということを本作は言いたいのだと思いました

公衆トイレのクリーンさ
大都市なのに静かさがある
公衆トイレのクリーンさを守るために真面目に仕事をする人がいる
本作には、クラクションも盛んに聞こえず大声で話す人々もいません
日本人には当たり前過ぎて気付きもしません

本作はただ普通無意識にそれを撮ったようにみえます
でもインバウンド観光客が語る日本の印象に、クリーンさ、静かさを語ることがとても多いようです
監督の目にも奇異に見えています
だからそれを撮っています
それはどうしてそうなのか?
それが本作なのだと思います

平山は衣食住すべてにミニマムな生活です
なのに彼は満ち足りています
なぜ独り暮らしなのか?
訳ありのようです
なぜ高い教育のある人間と思われるのに、今の生活に甘んじているのかは語れません

もっとより良い生活への意欲を失っている?
人生に諦めている?
外国人にはそう見える人が多いでしょう
でも日本人にはそうではないと普通に思えます
自分を律して自分の責任を果たすそれだけの毎日で必要十分

でもそれなら何故平山は泣くのでしょうか?
今の生活が屈辱だから?
そうではないことは彼の生活から分かります
平山の語られない訳ありの理由が彼の涙の理由なのだろうと思えました

低賃金なのだから、それに見合う適当な仕事で十分
しかし日本人はそうは考えません

だからと言って日本人が全員平山のような人間ではないのも当然です
それでも平山のような人間が数多く集まっているから、東京はこのように成り立っているのだと、そのことを説明しようとしているように思えました

今度は今度
今は今

(過去は過去)
(欲を求めればきりがない)

平山の過去は語られません
居酒屋のママの元夫のお話はそのヒントだったのかも知れません
影と影が重なって濃くならない訳が無い
少なくとも平山は自分を影と思っているようです

それでも与えられた責任は確実に果たす

アヤは平山から少し学んだようです
家出して来たニコは平山から日本人になるとはどういうことかを懸命に学ぼうとしています

タダシは知的障害のある少年に優しくできる良い面を持っていますが、日本人にはまだまだ、なっていないようです
もう少し時間がかかるようです

ラストの朝日に向けてバンを走らせる平山の笑顔
今日も自分の役割を果たすぞという満ち足りた笑顔です
社会に関係して貢献する喜びです
自分は、決して影じゃない
より良い社会は自分を律する生活から始まる
それが結論のラストシーンであったと思いました

WACOCA: People, Life, Style.

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