営業のノルマがきつい、一生懸命売り込んでもまったく売れない、と嘆く営業マンは多い。PRのプロであるQUESTO代表の黒田剛さんは「“売りたい”と一方的に押しつけても結果は出ない。相手の心を動かすためには、ストーリーで語ることが何より大事だと知ってほしい」という――。(第2回/全2回)
※本稿は、黒田剛『非効率思考』(講談社)の一部を再編集したものです。
一生懸命に伝えても伝わらない大問題
「どうも相手の心に響いてないな」
PRしていてそう感じるときがある。
それは、「本の内容の素晴らしさを伝えよう」としてしまっているときだ。
著者と編集者の思いが込められた本の内容が素晴らしいのは当然のこと。ついついそこを伝えたくなってしまう。けれど、データや事実は単なる情報にすぎず、相手の心に響きにくいものなのだ。
「事実」より「ストーリー」で提案する
そこで、その事実が生まれた背景を「ストーリー」に変えて提案することが必要になってくる。
たとえば、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションが、なぜ心に響くのか。それは、まさにストーリーで伝えているからだ。iPhoneを発表するとき、こんな言葉からスタートする。
2年半、この日を待ち望んでいました。
時折、すべてを変えてしまうような革新的製品が現れるものです。
Appleは非常に幸運でした。そのような製品をいくつも世に送り出すことができたのです。
1984年 マッキントッシュを発表。
それはAppleを変えただけでなく、コンピューター業界全体を変えました。
2001年 初代iPodを発表。
それは音楽の聴き方だけでなく、音楽業界全体を変えました。
本日、このような革命的な新製品を3つ発表します。
このあと、じつはこの3つの新製品というのは、「iPod」「Phone」「Internet」の3つを1つにした「iPhone」であることを伝えて、すべての観衆を魅了していく。
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