Text:森朋之
SixTONESが5月17日、これまでリリースした楽曲のなかから66曲をサブスク解禁した。今回配信された66曲は、シングルの表題曲をすべて網羅。そのほか、シングルの形態別カップリング曲や、これまでにリリースされた5枚のアルバム『1ST』『CITY』『声』『THE VIBES』『GOLD』の収録曲も含まれている。
今年5月1日で結成10周年を迎えた彼らは、昨年から「SixTONES “Raise our VIBES” years 2024-2026」と冠したプロジェクトをスタートさせており、フェス出演(これまでに【ごぶごぶフェスティバル2024】【Talking Rock! FES.2024】【COUNTDOWN JAPAN 24/25】)、自身初の5大ドームツアー【YOUNG OLD】の開催、アコースティックライブ番組『MTV Unplugged: SixTONES』への出演など、アニバーサリーを彩るチャレンジングな活動を続けている。今回のサブスク解禁は、彼らの音楽的な魅力が幅広い層のリスナーに浸透する大きなきっかけになるだろう。
2015年5月に結成、2020年1月にデビュー曲「Imitation Rain」をリリースした彼らは10年の活動を通し、一貫して“音楽”にプライオリティを置いてきた。ロック、ヒップホップ、ファンク、ソウル、R&B、ジャズ、歌謡といった幅広いジャンルを自在に取り入れた音楽性も魅力的だが、彼らの最大の武器はやはり、メンバーそれぞれのセンスと個性を活かしたボーカル/ラップ/ハーモニーだ。
このコラムでは、今回解禁された66曲のなかからグループとして転機になった10曲をセレクト。各楽曲を通し、SixTONESのキャリアと音楽的な豊かさを改めて体感してほしい。
「JAPONICA STYLE」(2017年)
メジャーデビュー前からファンの間で支持されていた楽曲。もともとは舞台『少年たち ~Born TOMORROW~』(2017年)で披露され、コンサートでもパフォーマンスされてきた。琴や笛の音色を使った和テイストの音像とダンサブルなトラックが融合。抒情性を感じさせるメロディと日本語/英語を交えたリリックを含め、和洋折衷のミクスチャー的センスが存分に反映されている。〈俺たちJaponica style〉〈駆け抜けて行く どこまでも〉というフレーズは、その後の彼らの活動スタイルを予見しているようだ。
JAPONICA STYLE / SixTONES
「Imitation Rain」(2020年)
2020年1月にリリースされたメジャーデビュー曲。作詞・作曲・編曲・プロデュースをYOSHIKIが手がけた、華やかにして重厚なロックナンバーだ。まず聴こえてくるのは、憂いを帯びたピアノのフレーズ。さらに激しいギターサウンド、ヘヴィなキック、流麗な弦楽器が加わり、幅広いリスナーを魅了する楽曲に仕上がっている。ジェシー、京本大我のボーカルからはじまり、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎の声質を活かしたハーモニー、田中樹のラップなど、メンバー全員の特徴をダイレクトに体感できる構成も見事。
Imitation Rain [YouTube Ver.] / SixTONES
「うやむや」(2021年)
Billboard JAPAN “Hot Albums”をはじめ各チャートで1位を記録し、2021年の音楽シーンを席巻した1stアルバム『1ST』。本作の通常盤に収められた「うやむや」は、SixTONESの音楽的な自由度を証明する楽曲だ。煌びやかな光を放つピアノの音色、タイトな四つ打ちのビートを軸にしたトラックも鮮烈だが、さらに特筆すべきは起伏に富んだメロディライン。激しく上下を繰り返しながら、言葉を詰めるように構築された旋律には、明らかにボーカロイド的なテイストが反映されている。抑制を効かせ、あえて平熱で表現されたボーカルも素晴らしい。
うやむや [YouTube Ver.] / SixTONES
「Call me」(2021年)
4thシングル『僕が僕じゃないみたいだ』通常盤に収められているこの曲は、英語詞のミディアムチューン。2020年代前半に広まったネオソウル~チル系のR&Bの流れを汲んだサウンドからは、彼らの意識がグローバル・ポップにも向けられていたことが伺える。切なさを内包したフロウを的確に掴み取り、心地よいグルーヴへと結びつけるボーカリゼーションも絶品。〈Let me love you〉という健気な感情を描いたリリックにも注目してほしい。
「Strawberry Breakfast」(2021年)
シングル『僕が僕じゃないみたいだ』初回盤Aの収録曲。作曲とアレンジは海外のクリエイターが担当した。いなたいギターリフから始まり、カラフルな管楽器の響き、ファンクネスをたたえたリズムなどをバランスよく配したダンサブルなポップチューンへと結実している。サビではディスコティックな雰囲気になり、解放感のあるメロディが広がる。さらに2番では軽やかなラップパートが挿入されるなど、SixTONESの多彩なパフォーマンス・センスが楽しめる楽曲と言えるだろう。
Strawberry Breakfast / SixTONES
「マスカラ」(2021年)
常田大希(King Gnu / MILLENNIUM PARADE)が提供した5thシングルの表題曲。アコースティックギターによるリフ、深みと力強さを同時に感じさせるキックとベース、どこか官能的な匂いを感じさせるメロディライン。ラテンやヒップホップなど幅広い要素を有機的に結びつけた、大人の雰囲気をたたえたポップチューンと言えるだろう。それまでの楽曲とは一線を画す「マスカラ」をシングルにしたことで、SixTONESは自らのイメージを大きく拡大。憂いや悲しさを滲ませる6人のボーカルは、それまでとは異なる層のリスナーへの訴求につながった。
マスカラ [YouTube Ver.] / SixTONES
「WHIP THAT」(2022年)
メンバー自身のセンスや指向がさらにダイレクトに刻まれた2ndアルバム『CITY』の収録曲。トラックの基軸になっているのはトランスとEDMを繋ぐようなダンスビート。無条件で身体を動かしたくなるサウンドのなかで、エキゾチックな香りのメロディやラップが次々と繰り出され、圧倒的な高揚感、享楽的なパーティモードへと誘い込まれる。2022年初めからスタートしたライブツアー【Feel da CITY】でもメンバーとファンを結びつける役割を果たし、以降は彼らのライブ定番曲としても存在感をみせている。
「WHIP THAT」from LIVE DVD/BD「Feel da CITY」(2022.1.6 YOKOHAMA ARENA) / SixTONES
「Good Luck!」(2022年)
ジェシー主演のドラマ『最初はパー』主題歌に起用されたシングル表題曲は、「SixTONESのシングル史上最も笑顔で元気な作品」というジェシーのコメントが示す通り、チアフル&パワフルなポップチューンだ。カラフルな管楽器ともに〈Hey guys!/This song is for all dreamers〉と宣言。どこまでも明るく開放的なメロディや“明日もがんばろうぜ”とリスナーの背中を押してくれる歌詞など、理屈抜きで気分を上げてくれる。こういうポジティブなエナジーも、もちろんSixTONESの大きな魅力だ。
Good Luck! [YouTube ver.] / SixTONES
「こっから」(2023年)
性急なブレイクビーツのなかで繰り広げられるのは、6人のマイクリレー。森本慎太郎と髙橋海人(King & Prince)のダブル主演によるドラマ『だが、情熱はある』主題歌としても話題を集めた「こっから」は、しなやかにして濃密なグルーヴと6人のラップ/ハーモニー、そして、〈ローリンローリン 転がってけYo/こっから始まんだ〉というフレーズがひとつになった楽曲。ボーカルのスキルと熱いメッセージ性を刻んだこの曲は、SixTONESの新たな表現を切り開いた。
こっから [YouTube ver.] / SixTONES
「音色」(2025年)
〈あぁ このまま/僕ら一緒に 歩いて行こう〉。12thシングルの表題曲「音色」(京本大我の主演ドラマ『お迎え渋谷くん』主題歌)は、そんな温かいフレーズで始まる。生楽器を中心としたオーガニックなグルーヴ、ソウル・ミュージックの手触りを持つ旋律、“君”に向けた穏やかで力強い思いが共鳴するこの曲は、ファンとメンバーの関係性にもつながっている――そう感じるリスナーもいるはずだ。落ちサビのパートにおける、6人のアカペラもこの曲の深みにつながっている。
音色 [YouTube ver.] / SixTONES
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