いつもの帰り道、ふと耳にする環境音。車の走行音、電車の通過音、人々の話し声。意識しなければ通り過ぎてしまうこれらの音の中に、実はとんでもない「お宝」が眠っているとしたら?

「カルビー株式会社」が、そんな日常に潜む「音」の可能性に本気で向き合い始めた。ポテトチップスを食べるあの「パリッ」という音が、なんでも、音楽になるというのだが……。

あの「タベオト」が楽曲の主役に
カルビー、前代未聞のレーベル発足

カルビーは去る4月30日、カルビー史上初となる音楽レーベル『じゃがレコード』を設立したと発表。

このレーベルの核となるのは、「“おいしい音で、つくろう音楽。”」という鮮烈なコンセプト。そう、カルビーの商品を食べる際に生まれる「タベオト」――たとえばポテトチップスの「パリッ」、かっぱえびせんの「サクッ」、堅あげポテトの「ザクザクッ」といった音――を知的財産(IP)として捉え、それを活用した楽曲を世に送り出すという、きわめてユニークな取組みだ。

この挑戦を牽引するのは、「Calbee Future Labo」。同ラボはこれまでもカルビーのIPを活用し、グッズや雑貨、ゲームアイテム、NFTといった多様な形でブランドとの接点を広げてきた。その結果、カルビーのライセンス商品は1年間で約80%も増加(※カルビー調べ:製造数量ベース 2023年度と24年度の比較)するなど、確かな手応えを感じているという。

今回の音楽レーベル設立は、その成功体験をさらに発展させ、「食べるシーン以外」でもカルビーブランドの楽しさを届けたいという想いの表れだろう。

©カルビー株式会社

レーベル第1弾アーティストとして白羽の矢が立ったのは、ボカロP Chinozo率いるクリエイターユニット「niKu」。彼らが手掛けた楽曲『DAHA』は、2025年4月29日に公開され、実際にポテトチップスを食べる音がパーカッシブに使われている。

ミュージックビデオでは、その斬新な試みが視覚的にも表現されており、「タベオト」が音楽へと変身する様は、まさに聴覚と視覚のフュージョンだ。曲中には「ポテトチップス うすしお味」「ポテトチップス 超薄切り こだわりしお味」「ポテトチップス ザ厚切り のためのうすしお味」を食べる際に生まれるタベオトが取り入れられ、リズムやメロディに融合。そのこだわりぶりがうかがえる。

ASMRの先にあるかもしれない
クリエイターの“遊び場”

カルビーのこの動きは、単に珍しい音楽を作るという話に留まらない。背景には、近年世界的に盛り上がりを見せるASMRカルチャーや、個人の発信力が強まるクリエイターエコノミーの潮流があると考察できる。

YouTubeなどのプラットフォームでは、咀嚼音をはじめとするASMR動画が人気コンテンツの一角を占めて久しい。しかし、『じゃがレコード』の試みは、受動的に「聴く」ASMR体験から一歩進んで、生活者自身が「タベオト」の提供者、あるいはクリエイターとして「参加する」可能性を秘めている点で画期的だ。

それを後押しするのが、二次創作におけるIP管理プラットフォーム「かるれっと」の存在。企業が保有する「音のIP」をオープンにし、誰もがそれを素材として楽曲制作にチャレンジできる環境を整えようという流れもこうしたプラットフォームの活用でさらに深まることが予想される。まさに、企業とクリエイター、そしてファンが一体となって新しいエンターテインメントを「共創」する時代の到来とも言えよう。

第1弾アーティスト「niKu」のChinozoは、「普段ポテトチップスをよく食べる身として、カルビーさんとコラボできることになって本当にワクワクしました。ポテトチップスの音をパーカッションに使ってみたりできて、楽しく制作ができました」と、その興奮をコメント。

また、同じく「niKu」のがちゃは、「ご縁があってカルビーさんが新しく立ち上げたレーベル『じゃがレコード』第一弾アーティストを務めさせて頂きました。(中略)合言葉は「にくじゃが」です。何卒美味しく召し上がってくださいませ」と、ユーモアを交えて制作の舞台裏を明かしている。

こうしたクリエイター自身の楽しむ姿勢こそが、リスナーの共感を呼び、ムーブメントを広げていく原動力となるのだろう。

日常のサウンドスケープに
新しい価値を発見する視点

Calbee Future Laboが掲げる事業コンセプトは「いろいろおかしい いろいろかわいい」。そして、「みんなでつくるCalbee Meets」を推進し、2030年には世界中の顧客1000万人に楽しんでもらうことを目指しているという。

この壮大なビジョンは、日常に埋もれた「おかしさ」や「かわいさ」に光を当て、それを新しい体験価値へと転換していくというカルビーの強い意志を感じさせる。

今回の『じゃがレコード』の試みは、まさにその象徴。それは、「食べる」というごくありふれた行為、そしてそこから生まれる「音」という、これまであまり注目されてこなかった要素に、新たな価値を見出す視点を提供してくれる。もしかしたら、あなたの身の回りにも、まだ誰も気づいていない「おもしろい音」が隠れているかもしれない。

カルビーが奏で始めたこの「タベオト」のシンフォニーは、まだ序章に過ぎない。けれど、それは確実に、私たちの日常とエンターテインメントの境界線を、より楽しく、刺激的なものへと塗り替えていく可能性を秘めている。さあ、次のおやつの時間は、どんな「おいしい音」が聴こえてくるだろうか?

©カルビー株式会社

Top image: © カルビー株式会社

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