酷評もあるが、駄作ではないことは断言できる。むしろ良作。ただ、期待した方向性と異なると感じたファンが、自分の期待とのギャップで実質よりも低い評価をしているという印象。

本作は、劇場版うたプリ3作品目である。うたプリにはST☆RISH、QUARTET NIGHT、HE★VENSの3つのアイドルグループが存在するが、本作はQUARTET NIGHTのワンマンライブである。

ST☆RISHワンマンライブを描いた前作がかなり好評であったため、前作と同じような構成を本作に期待するファンが多かったものと思われるが、本作はかなり方向性が変わったライブ構成となっているため、拍子抜けしたファンも多かったようである。

前前作、前作は、アイドル個人のキャラクター性を全面に押し出し、MCでのアイドル同士の掛け合いも多く描かれていた。

しかし本作はストーリー仕立てになっており、MCも全く本人らの色がないわけではないが、基本的には役として話している。

イメージとしては、宝塚のショー(レビュー)である。ざっくりしたストーリー性の中で、煌びやかなステージで華やかな衣装を纏いながら、歌とダンスを披露するということだ。

2018年月組公演『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』が好きな人は、おそらく本作もツボにハマると思う(尤も、BADDYも宝塚のショー作品の中ではかなり特殊な毛色ではあるが)。

個人的には同期で仲睦まじいST☆RISHと、エンターテイナーとしてストイックにパフォーマンスをするQUARTET NIGHT、2つのグループの違いが現れていて、QUARTET NIGHTの独自性を発揮した唯一無二の構成と考えている。

しかし、前作のスターリッシュツアーズ をQUARTET NIGHTで焼き直した映画を期待していたファンにとっては、「自分が見たかったライブではない」と落胆してしまう内容だったのだろう。もっとアイドル本人としてのMCやパフォーマンスを見たかったということだろう。

個々のグループだけでなく、うたプリ全体としてより高みに行くために、焼き直しではなく新たな試みに挑んだことは、むしろ歓迎すべきことではないか。ただ、その試みに推しグループを使われたファンはたまったものではないという気持ちも、理解できなくはない。

ちなみに、CGのクオリティは前作から相当良くなっている。衣装の質感がとてもリアルになった。前作の時点で相当CGは綺麗だったが、たった3年未満でここまでクオリティが上がるのかと、CG技術の発展に目を見張った。

1つ本作に対して言を呈するとすると、カメラワークは前作の方が優れていたと思う。ステージのどこにアイドルがいるか分からない場面が多々ある。前前作、前作と異なり、ステージサイドのモニターを利用したカメラワークが多く、そのモニターに映っているアイドルは視認できるが、実際にステージのどこにいるかが分からない。まだ鑑賞回数が4回と少ないためでもあるが、前作よりはハッと印象に残るカットは少ないように思う。

また、前述の通り基本的に役として話すため、自己紹介らしい自己紹介がない。前作と比較して、初見の人は取っ付きづらいかもしれない。前作ほど新規ファンの流入は望めないと思う。

この2点はアイドルアニメとして致命的とも言えなくはないので、私の中の評価は前作のスターリッシュツアーズ の方が高い。しかし、それは決して本作が駄作ということを意味しない。50点未満は駄作、60点は凡作、80点は良作、90点以上は傑作とするなら、私の評価は前前作のキングダムが70点、前作のスターリッシュツアーズ が90点、本作は75〜80点といったところである。

コールがダサいという意見もあるが、前作の聖川真斗ソロ曲のコールも当初は賛否両論であったので、徐々に受け入れられていくのではないか。個人的には、間違いなくコールはダサいが、こういった狙っていないダサさもうたプリの味と考えている。

最後に、袖が千切れるのはマジでオモロい。

WACOCA: People, Life, Style.

Pin